スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

ROMANCIA 23

 青年医師はヒカルと名乗った。争いごとは苦手らしい。
 「防備ちゅーても、こっちは病人ばっかりやさかい…」
 と言うのだが、では施療テントの移動かとなると、これも簡単には済みそうにない。どうしたものかと鳩首のところへ、おずおずといく人かの街人が近付いて来る。家の中から様子を窺っていたものだろうか。
 「あの…」
 中の一人、農夫らしい中年男が半端な位置に止まったまま声をかけて来た。振り向いた何ですかと近寄ろうとすると同じだけの距離を後ずさりする。
 そう言えば注意深く風上を選んでいる様子、つまりは病の伝染を恐れているのだろう。
 眉宇に苦渋を滲ませながら、医師は足を止めて男の言葉を待った。
 「あの、な、あんたら…ご領主の命令じゃ、立ち退かにゃいかん、だろ?」
 訥々と切り出す言葉を、ヒカルも、その後ろに佇むキョーコとレンも黙って聞く。
 「あれだったらあれだ、ほら、荷車とか貸す、いや、やるから…必要なら、言ってくれりゃ」
 やたら言いにくそうにしているのは、善意の陰にそれで出て行ってくれるなら、と思う気持ちがあり、それを自分で疚しく思うせいだろう。しかし彼を責めるわけには行かない。誰だって疫病は怖いのだ、自分ばかりでなく家族まで危険に曝される以上。
 「ありがとうございます。お願いします」
 ヒカルにそれ以外の言葉が言えたはずがない。頭を下げる彼に、中年男はほっとした顔をした。
 「じゃ、じゃあ、早速持って来るからよ」
 彼がさっと身を返すと、やりとりを見守っていた他の人々が、じゃあうちも荷車を、じゃあ私は食料を俺は毛布をと散って行く。
 ややぽかんとしているヒカルの横に、いつの間にか近付いて来ていたキョーコが立つ。
 「皆さん、気にはしてらしたんですね」
 「う、うん…」
 呟くのへ、医師はへどもど頷いた。それだけではないとしても、善意がないわけでもないと思う。
 「とりあえず、移動は決まりですね?」
 「うん…そう、やね」
 街人の気持ちもわかる。こうなっては他に仕方がないだろう。表情を引き締めるヒカルに、キョーコがにこりと笑った。
 「乗りかかった舟ですし、私たちにもお手伝いさせて下さいね」
 「え、あ。おおきに…」
 不思議な二人連れだと見返して、彼はレンのしぶい顔に気がついた。どうもあちらの彼は、乗り気ではないような。
 



web拍手 by FC2
 
 


 いやいや、そのおっきいヒトの不機嫌は別のところにあるから(笑)。


関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
作品一覧
サイト「花うてHP!」トップよりブログ内の作品のリストに飛べます。閲覧者の皆様のアクションに対して加算させて戴く「花うてポイント」の説明・管理もこちらよりどうぞ!

作品リスト(サイトトップ)

アクセス

・メールフォーム

・BBS

リンク

◆リンクページ


◆当ブログへのリンクについて

当ブログはスキビコンテンツをお持ちのサイト様に限りリンクフリーといたします。


ブログ名:花のうてな

管理人名:みなみ なみ

URL:http://hananoutena.blog14.

fc2.com/


 ↓各ジャンルごたまぜの本サイト。

↓スキビの同人誌作品をブログ記事として収載・販売しています。(2014年7月までで更新停止)

 ↓BUD BOY二次です。


  • 管理画面
  • RSSリンクの表示
    QRコード
    QR
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。