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たいせつでたいせつで(158)

 「えっと、これはねえ、まず」
 菜箸を握った手で文字を辿るキョーコに返事もせず、少年はぶらぶら足を揺すっている。
 「ショーちゃん?」
 覗き込めば、半目で頭を揺すり指先でテーブルを叩いていた。口元もかすかに動いている。
 「もう…さっきの続き?」
 少女は仕方なさそうに言い、コトコト蓋を躍らせる鍋に向き直った。
 「さっきって?」
 サヤエンドウの筋を取っていた蓮に尋ねられ、彼女は鍋の蓋をずらしながら迷うそぶりをする。ちらと幼なじみを見てから答えた。
 「ショーちゃんはね、曲を作るのが好きなの。将来、ミュージシャンになりたいんですって」
 言った途端、少年がじろりと顔を上げる。
 「ちげーよ。なりたいんじゃねー、なるっつの」
 「へえ」
 一拍遅れて、別方向から面白がる口調が飛んで来た。テーブルの半分を独占して写真を拡げているマカナンが社の通訳を受けて放ったのだ。ちなみに写真は、初日に撮って現像に出していたのを社が先程受け取って来た。
 「お前さんも面白そうだな、ボーズ。まあ精々頑張って夢をつかまえろや」
 映画監督はへらりと笑うから、励ましなのか小馬鹿にしているのかわからない。言葉は通じていない様子ながらショータローが嫌な顔をしたのは、後者だと受け取ってのことだろう。
 「ったくバカキョーコ、お前は余計なこと言ってんじゃねえよ!」
 お鉢が少女に回って来た。軽く拳を振り上げられ、反射的に避けようとしたキョーコの手にある鍋から熱い煮汁が飛ぶ。
 「熱っ」
 「キョーコちゃん!!」
 蓮が椅子を蹴立てて駆け寄り、細い腕を流水に突っ込んだ。ほぼ同時に、眼鏡の青年がエンドウの筋を入れていたビニール袋を引っつかんで冷蔵庫のフリーザーを開ける。がらがらと氷の音。
 「蓮君、ほら」
 「ありがとうございます」
 蓮は氷(とエンドウの筋)入りのビニール袋を手拭きに包んでキョーコの赤くなっている腕に当てた。
 この間、お坊ちゃまは何もできずに固まるばかり。蓮が険しい目を向ける。
 「何をするんだ、君は!料理中に乱暴するなんて」
 「乱暴って、別に俺は…」
 へどもど言いかけて、少年はぐっと唇を噛んだ。長身の青年を睨み返す。
 「うっせーな、そいつがドンくせーんだろ」
 「何だと…!」
 「れ、蓮さん。だいじょうぶだから、あの、そんなに怒らないで…」
 「キョーコちゃん」
 慌てて飛びつく少女に蓮が視線を移すと、ショータローはふんと腕を組んだ。
 「ばっかみてー。聞ーてる方が恥ずかしくなるような声出しやがって。大体、なんでアンタが怒るんだよ。アンタが痛いわけじゃねえだろ」
 「君は…!」
 「蓮さんっ」
 剣呑な空気を身に集め始める青年の腕を、キョーコは必死にぐいぐい引っ張る。
 「ねえやめて、ほんとに大丈夫だから。そんなに痛くないし」
 「こーらこら」
 緊迫した場の空気に、のんびりした声が割り込んだ。勿論映画監督、耳をほじりながらショータローを見る。
 「何言ってっか見当だけどよう、お前、違うんじゃねえの。悪いと思ったらゴメンナサイ、だろ」
 少年がゴメンナサイの部分に反応し、ぽさりと腕組みを解き落とした。
 「…悪かったよ」
 「えっ!?」
 ぼそと呟かれた言葉に、キョーコは仰天も露わに見返る。今自分が聞いたものを疑うそぶりに、ショータローが口をへの字にして黙り込む。
 「あ、えと、ううん、あの。うん…」
 おろおろ頷いたキョーコがマカナンに尊敬の眼差しを向けた。しかし、彼の小さな小さな独り言を聞き取ってしまった蓮はそうは行かない。
 「こりゃますます面白くなって来やがった」




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 監督おいしすぎ。


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