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フォルトゥナタ(26)

 「えっと…あの、お待たせしました…」
 詫びる声に振り向いたクオンティヌスは、目を剥いたまま棒立ちになった。冷静にして大胆なる騎士には、珍しい姿ではある。
 キョーコは優美なドレープを描くストラの上に繊細な染めのバッラを重ね、しなやかな若々しさばかりは隠しようもなく一輪の花のよう。
 香油を塗りこんだ髪を派手すぎず若々しい形に結い、もちろん何よりも印象的なのはいきいきと輝く大きな瞳だが、ピンクがかった紅の載る唇は吐息の代わりに芳香を吐くのではないかと思わせる。
 「あの、変、ですか?」
 黙って突っ立っている雇い主に、彼女はしおしおと尋ねた。クオンティヌスは慌ててかぶりを振る。
 「えっ!?あ、いや!そうじゃなくて」
 「そうよう、変なわけないじゃない。このあたしの傑作が!」
 奥から垂れ布を分けて出てきた女が憤然と言った。この店の主、その女性の身を飾る手腕と年齢不詳の容姿の両方から、魔女と呼ばれるエリア・ウーズだ。間近で見ると本人はちんまりと小さい。
 「ムーサ…っ」
 芸術の女神群の名をキョーコがキラキラと呟く。本来は文学や音楽などを司る神だが、彼女にはその範囲のわざに思えたものだろうか。
 「キョーコちゃんってば肌も綺麗だし、化粧栄えする顔立ちだし。ほんと、ここまで化けるなんてあたしもビックリしちゃった」
 ころころ笑うが、化けるなどと言われた本人はうんうんと頷くばかりで異論もないらしい。
 「私、ちゃんとしたお化粧なんて初めてでっ…夢みたいです、今日は人生最高の日です!!」
 はうはう言い切って。、そこで、勢いが止まった。
 「でも…クオンティヌス様はお気に召さなかったでしょうか」
 「いや、だから。そうじゃなくて、その…すごく綺麗で驚」
 「あっ、お時間大丈夫でしょうか!?」
 言い淀むうちに肝心な言葉を遮られ、うっちゃられたセリフはぼたりと地面に落ちて伸びる。それを哀しく見やる若様に、キョーコはそわそわと出口を指した。
 「ユリエナ様が付き添って下さるって待ち合わせしてるんですよね?もう行かないと、お待たせしちゃいませんか?」
 「ああ、うん…」
 促されてクオンティヌスが、どことなく元気なく頷く。
 「じゃあ、行こうか」
 気を取り直したように言って、すいと手を差し出す彼を、娘はきょとんと見上げた。
 「お手をどうぞ、お嬢さん」
 青年騎士が優しく言う。キョーコはほのかに頬を染め、やはり最高級の香油をすり込まれた手をおずおずと差し伸べた。




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 ストラは女性用の…今で言うマキシ丈のワンピース?ちょっと違うか…うーん。男性のトゥニカに対応する基本着です。バッラはその上に巻きつけるように着る、男性で言うトガ。女性がトガを着れば娼婦と見なされてしまいます。

 あ、エリアさんはテンさんです。ジェリーをギリシア語かラテン語に当てるのは無理があった…(古代ローマの人名はギリシア語が圧倒的)
 
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