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たいせつでたいせつで(160)

 からころと、軽い下駄の音。蓮が振り返ると、いつもより楚々とした動作で出て来たキョーコが彼らに背を向けて玄関の鍵をかける。
 浴衣は生成りの地に濃クリーム色の中太ストライプが入り、そこにひらひら遊ぶような蝶と緩く流れる花の図柄。夜目に涼しげで、華奢な少女をすっきりと引き立てている。帯は表が淡萌黄で裏が淡紅梅、襲の色目で言えば杜若というところだが、これは蓮にはわからない。小さな蝶を結び、たれ先を大きめに下げている。
 「おー、かわいいじゃねえか嬢ちゃん」
 見とれていたら、マカナンに先を越されてしまった。手離しで褒め上げる映画監督にキョーコはえへへと照れ笑い、蓮の陰に隠れようとする。
 「隠れちゃ駄目だよキョーコちゃん、よく見せて」
 蓮がすかさずその手を取って自分の前に引き出した。蒸し暑い真夏の夜を風が吹き抜け、簡単に結った少女の髪の先を揺らす。
 「うん、すごく可愛い。その髪型もよく似合ってるよ」
 「う…えっと、み、皆さんも素敵です…」
 大いに照れながら、少女は手にした巾着をもじもじ揉み絞る。そこへ、
 「その帯の結び方も可愛いね。キョーコちゃんはほんとに何でもできるなあ」
 今度は社まで参加して来るから、ええそんなと真っ赤になってしまった。
 「あの、これは花文庫結びって言って。そんなに難しくはないんです」
 「それ、キョーコちゃんには、だろう?俺にはとてもできる気がしないよ」
 蓮が笑って、手を差し出した。
 「行こうか」
 殊更にキョーコ引き寄せたのは、少し離れた垣根のきわに一人の少年がぶっすり立っているせいだった。



 「お~!」
 そしてもちろん、マカナンははしゃぐ。
 とりどりの提灯をはうはう見上げては書かれている文字を読めと社にせがんだり、狛犬を撫でている人々に意味もわからず混じって真似をしてみたり(実は安産祈願だった)、立ち並ぶ屋台を指してはあれはなんだこれはどうだと目を輝かせて聞きまくり、店番に英語で勢いよく話しかけて閉口させたり。
 「監督、お願いですから少しテンションを下げていただけませんか…」
 社が音を上げるまでに大した時はかからなかった。
 蓮は彼を気の毒に思う気持ちはあるのだが、かと言って積極的に関わる気はない。心の中で合掌しながら、焼き鳥の屋台に突っ走って行く映画監督を追うバイト青年を見送った。
 ふと気付けば、自分たちの周囲には妙な空間ができている。半径1.5mほどの円に囲まれて、彼は少し首を傾げた。周囲にはさわさとくすぐったいざわめきが流れている。
 そして、何やら俯いているキョーコ。
 「キョーコちゃん、どうしたの?気分でも悪い?」
 屈んで尋ねると、斜め後ろから別の声が答えた。
 「そりゃそうだろ、馬鹿くせー」



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 映画監督、おいしすぎないか。


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