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ROMANCIA 27

 どん、と地が震えた。
 「え?」
 身を捩る風が大気を貫き、火花を捲いて土を抉る。
 「え?」
 咆え猛る雷声が飛沫を散らし躍らせる。
 「えええ…」
 銀の月光と青い稲妻を弾き、どっと溢れる奔流。
 「ひーーーーーー!!!!」
 押し寄せる水の壁から逃げ出すキョーコは、ふいと体が軽くなるのを感じて背後を振り仰いだ。彼女を抱えたレンが、宙に浮かんだままキャンプ裏手の丘の上へと移動する。
 「れっレンさん、出歩いてる場合じゃありません!テント戻りましょう、今すぐ!きっとじきにみんな起き出して来ますから、一緒になって『突然河ができちゃってる、不っ思議~!!』とか言わなきゃ!!」
 「それ通るのかな」
 竜の化身は笑っている。女魔道士はたった今放った魔法の余韻に震える手を押さえて言い切った。
 「成せば成ります!!」
 「いいけど…」
 「って、きゃああああ!!だだだだめだめ、やだ街が!!!」
 キョーコの声と身が跳ね上がった。地を突っ走って流れる水は、街へ押し寄せようとしている。
 「落ち着いて」
 後ろから右手を取られた。すい、と弧を描くように動かされると、同じように水が流れる方向を変える。
 「あ…」
 「海へ?」
 レンに聞かれて、彼女はこくこく頷いた。



 「びっ…くりしたわ、まー…」
 「す、すいません、あの。私もまさか、あんな大袈裟なことになるとは…」
 胸を押さえるヒカルの前で、キョーコはひたすら小さくなる。
 もちろん地上は大騒ぎになっていた。地面が揺れるのですわ地震かと飛び起きて来た人々は、ついさっきまで影もなかった河が勢いよく流れて行く…
 と言うか、できて行くのを見た。更に、ほとんど鉄砲水に見える銀色の塊が街へと向かっているのに気付いて騒ぐ間もなく、水はぐいんと進路を曲げて海へと走るではないか。
 呆気に取られる人々の中、ふと丘を仰いだ少女が、その頂上に指揮するように手を振る女魔道士の姿を発見した。
 お蔭で、今やキョーコは畏怖さえ寄せられる身となった。それも伝説の大魔道士級の。
 救いと言えば、青年医師の態度がさほど変わらないことか。
 いじいじと指を揉む娘に、彼はにこりと笑って見せた。
 「なんも謝ることあらへん。びっくりはしたけど、俺らお蔭で大助かりやさかいな?」
 「そう言って戴けると…」
 「ほんまやて。自分凄いわー」
 「え、いえ…あれはその、触媒が触媒だったので、エレメンツが喜んじゃって暴走したという」
 キョーコはこっそりレンに恨みがましい目を流す。彼は結果をある程度予想していたに違いない、少しも驚いていなかったのだから。
 あれのどこが、人間らしい結果なんですか。と襟首つかんでがくがく揺すぶってやりたい。
 キョーコは穏やかな流れに変わりつつある川面を見やり、口をへの字に曲げた。
 ああ、水の精なんて単語に簡単に浮かれて術への疑問を等閑にした数刻前の自分が憎い。大体、びっくりしすぎて精霊の姿に目を留めるひまもなかった…いやそうでなく。こんな大きなことになってしまって、ただで済むのだろうか。
 ヒカルののほほんとした顔を見ていると気が抜けそうになるが、先行きへの拭い難い不安が彼女にのしかかる。
 そんなもの、いっそあの河と一緒に海へ流れて行ってしまえばいいのに。
 彼女の祈りが聞こえたわけでもないだろうが、竜の化身が肩をすくめた。




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 鉄砲水を知らせる掛け声、っていうのがあったような…なんて言うんだったかな。


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