スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

フォルトゥナタ(30)

 「いきなりミリアリア(千人隊)直接指揮ですか!?俺、いや私は、歩兵は初めてですよ」
 「だからってできないじゃ済まねえだろ?ヤレ」
 「っ…御意の、ままに」
 クオンティヌス若様も、さすがに皇帝陛下相手では勝手が違うらしい。負け気味のやりとりが聞こえて来て、キョーコは何やら安心してしまった。その一方で、ああした親密さを妬む人間が出ることもあり得るのだと思う。知らず、複雑な溜め息がこぼれた。
 「明日のアクタ・ディウルナのトップは決まりだな」
 市場に貼り出される手書き新聞の名前を出すローリアヌスは、いかにもご機嫌よろしく話している。戸口に立ったキョーコが声をかけると、その通り上機嫌な顔が振り返った。
 「あの…ありがとうございました。とても参考になりました」
 「おー、お帰り。ちょうどよかったな、こっちもそろそろ終わるとこだ」
 「はい、ではお待ちいたします」
 ローマの主に頭を下げ、雇い主の方へも目礼すると、美形騎士がやわらかな微笑を返してくる。
 「悪いね、すぐだから。父さんたちは先に帰ったから、二人で一緒に帰ろう」
 「は、あ…」
 何気ない口調がなぜか今までより意思的に感じられて、彼女はドギマギと胸を押さえた。



 「あのう…クオンティヌス様」
 王宮を辞し、クオンティヌスのドムスに帰り着くと、キョーコはおずおずと丈高い雇い主の顔を見上げた。ここなら彼の不利益を願う人間の耳はない。
 「その…」
 しかしこの漠然とした不安をどう言ったものか。貴方には敵がいるんですかと訊くこともためらわれる。迷う瞳に、労るような微笑が降って来た。
 「どうしたの?何だか元気がないね。疲れたかな…」
 「いえ、そんな」
 慌ててかぶりを振り、笑顔を作る。
 「元気ですよ?王宮に入って皇帝陛下にお会いして、念願の王宮の厨房も見られたんですもの。その上、恩のあるおじ様に市民権まで戴いてしまって、高揚しないはずがありません」
 「うん…でも、高揚の裏に疲労が隠れてることもあるからね」
 クオンティヌスの大きな手が、結い上げた髪をそっと撫でる。娘はぱっと赤くなり、跳び退がろうとした。その肩を、すかさずつかまれる。
 「逃げないで」
 「…え」
 懇願の調子で言われて、キョーコは細い顎を上げた。クオンティヌスはすこし目を眇めて彼女をじっと見つめている。
 「まだ見ていたいんだ…君を」
 「!?あっあの」
 「これからもずっと、ね」
 「クオンティヌス様!?」
 落ち着きなく揺れる娘の瞳を捉え、男はゆっくりと笑む。
 「だけど、ごめんね」
 金の髪に縁取られた白皙が、ゆるゆるとキョーコの視界に降りて来る。
 「そのために待つ時間がなくなってしまった」
 溜め息に似た言葉が、唇をくすぐった。





web拍手 by FC2
 
 


 いけいけ若様~(笑)。


関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
作品一覧
サイト「花うてHP!」トップよりブログ内の作品のリストに飛べます。閲覧者の皆様のアクションに対して加算させて戴く「花うてポイント」の説明・管理もこちらよりどうぞ!

作品リスト(サイトトップ)

アクセス

・メールフォーム

・BBS

リンク

◆リンクページ


◆当ブログへのリンクについて

当ブログはスキビコンテンツをお持ちのサイト様に限りリンクフリーといたします。


ブログ名:花のうてな

管理人名:みなみ なみ

URL:http://hananoutena.blog14.

fc2.com/


 ↓各ジャンルごたまぜの本サイト。

↓スキビの同人誌作品をブログ記事として収載・販売しています。(2014年7月までで更新停止)

 ↓BUD BOY二次です。


  • 管理画面
  • RSSリンクの表示
    QRコード
    QR
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。