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each other(後編)

 「つ…るがさ…ん…!?」
 今聞いた台詞が信じられなくて、ばかみたいに口を開けたままになる。目が勝手にやたら瞬きするから、敦賀さんがよく見えない。
 暗い寝室の中はしんと冷えていて、やけに静かで、空気が一京倍くらいも重くなった気がした。
 そこに、よたよたと浮かんでくる言葉。
 「なに…言って…」
 聞き違いじゃないなら、敦賀さんは、誤解してるんだ。だけど逆ならともかく、私が貴方を好きじゃないなんて、どこからそんな結論が湧いて出るの!?貴方は、誰にも望まれるような人なのに。
 「君じゃないと意味がないんだ」
 考えを読んだみたいに先輩俳優は言って、大きな手で私の頬を撫でる。そっと、そうっと…だけど、ねっとりと。
 「君だけが欲しくて、いつも迷ってる。どうしたら君を本当に手に入れたことになるんだろう、って。でも、今でもわからない…君は俺に、何も要求してくれないから」
 ひそやかに、ゆっくりと敦賀さんは話した。
 「もう、いっそ枷を嵌めてしまいたい。
 「俺に溺れて、ほかに何も考えられなくなって…」
 耳元に零される囁きは吐息と変わりなく静かで、熱くて、みだらで。手がそろそろと私の胸元を這って、申し訳ないくらいささやかな膨らみを包む。ほら、だって。私はこんなだもの。貴方を惹きつけておける魅力なんて持ってないんだもの。だから。
 我慢してたのに。
 我侭言わないように、邪魔をしないように、敦賀さんの重荷にならないように。でももしかしたら、それが間違いだったの?
 唇を噛むと、鼻の奥に血の匂いがした。悔しい。
 悔しい…私、何を見てたの。
 額を押さえてのけぞらされて、喉を痛いくらい吸われる。思わず身を縮めると、そこをぺろりと舐めた敦賀さんが瞳だけで見上げて来る。泥みたいに湿った炎が瞳の底に蟠ってて、やっぱりこわい。だけど。
 ちゃんと伝えなきゃ。
 まだ半信半疑の気持ちが抜けきらなくて、そろそろ広い背中を抱えた。敦賀さんが動作を止める。
 濡れた艶を浮かべる瞳に戸惑いの色が現れるのを見ながら、大きく息を吸う。
 「…く、ありません」
 いやだ、なんで今NG出すの!?声がかすれちゃった。
 え、と瞬きされて、急に恥ずかしくなる。でも言わなきゃ。も、もし勘違いだったら、私はもうぺしゃんこになっちゃうだろうけど…でも。
 「別れたく、ありません…っ」
 ヤケ半分に言い切った途端、空気が白さと重さを増した。つ、つぶれそう…
 早く何か言ってください。我が信仰の主に祈って、恐る恐る瞳を見る。敦賀さんの唇が動いた。
 「…俺と?」
 って。コケそうになったわよ。
 「ほかに誰がいるんですかっ」
 この時、この流れで。うう、やっぱり勘違いだったのかしら…恥ずかしくて泣きたい。
 思ってるうちに、敦賀さんがひどく真剣な表情で身を起こした。一旦口を開いたけどすぐに閉じて、手を伸ばして来る。身を引いてしまいそうだったけど我慢してじっとしてると、丁寧に引き起こされた。
 「ごめん」
 何に対してか謝って、敦賀さんは乱れた私の服を整える。無性に、いまだ、って気がした。そっとのつもりだったのにぶんぶんかぶりを振って、私は前に身を乗り出す。
 「あのっ…私、敦賀さんが、好きですっ」
 叩きつけるみたいな勢いに驚いたのか、トップ俳優様は珍しく固まってしまった。でも、私だっていっぱいいっぱいなんだもの、構ってられないわっ。
 「ほんとに、すき、なんです…だから、別れたくなんか、ありません…!」
 一語ごとに自分を励ましながら必死に言う。でも敦賀さんからのリアクションがなくて、落ちた沈黙が耳に痛い。うう、何か言ってください。
 一生懸命見つめてると、やがて敦賀さんの表情が動いた。だけど、なんだか落ち込んでくみたい…
 「あ、の」
 理由を聞きたかったけど、それが別れ話についてなのか、いま敦賀さんがへこんでることについてなのか自分でもはっきりしない。そこで詰まってしまった私の耳に、過去の俺って、なんて呟きが聞こえて来る。どういう意味なんだろう。
 「ごめん…君を試した」
 もう少し声を励まして言われて、顔を上げると瞳がぶつかった。
 「別れたくないのは、俺の方。俺が言わなきゃいけないことを、君に言わせようとした…」
 ぽつぽつ語られる言葉を、信じられない思いで聞く。それって。
 「敦賀さんも、不安だったんですか…?」
 恐る恐る尋ねたら、いたたまれないみたいな微笑が返って来た。肯定、よねきっと。
 「ああ…」
 なんだかぽろりと憑き物が落ちた気分。わたしだけじゃない。敦賀さんも。お互いに言葉が足りなくて、自信がなくて。
 でもそれは、想い合ってるから。
 ちょっと頷いてみる。まだしっくり来ないけど、これから慣れていけばいいのよ。私が敦賀さんの、敦賀さんが私のものだってことに。…いまひとつ自信はないけど、まあ、ちょっとずつ…
 じゃあ手始めに。
 空気と一緒に気合を吸い込んで。私は敦賀さんの顔を覗き込んだ。
 「あの…私、わがまま言ってもいいですか…?」
 「キョーコ」
 きれいな瞳に軽い驚きと、喜びが浮かぶ。そっか、喜んでくれるんだ。胸にぽかりと生まれた温かさに後押しされて、思い切って言ってみた。
 「えと…その…
 「こ、今夜、泊めてください…っ」
 敦賀さんが目を見開いて、それから幸せそうに幸せそうに微笑む。
 少しもわがままになってないよ、と耳元で吐息が言った。




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