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たいせつでたいせつで(164)

 どうするのだろうと見ていると、蓮はすたすたと歩いて行く。キョーコしか見ていないのが背中からでもわかり、社は生温く微笑んだ。
 向こうの方が明るいせいか、映画監督と少女はまだこちらに気付いていないようだ。案外楽しそうに二人で話し込んでいるのが、蓮の足を速めさせているのに違いない。
 実際、足取りは優雅なのになんという速度だろう。呆れていると、不意にがちゃんと重く大きな音がした。何か、重量のあるガラスが割れたような音だ。
 社は釣られて音のした方向を確かめる。すると、戻って来る二人と自分の中間くらいにある飲み屋台の店先で起こっている騒ぎが目に入った。酔客同士がケンカを始めたようで、口汚く罵り合う声が聞こえて来る。傾いだテーブルの足元では、割れた一升瓶がどくどくと酒を地面に吸わせている。
 「あーあ…」
 どこにでもあるような騒動だが、米国からの客たちの前で礼儀正しいニホンジンの印象をぶちこわしにするような真似をやらかさないで欲しい。思わず嘆息し、社は三人に合流しようと自分も足を踏み出した。
 そこへ、甲高い悲鳴。
 「…やっ!!」
 キョーコの声だと思う暇もなく視線を向ける。
 果たしてそれは彼の連れでもある少女に違いなかったが、何ということだろう、彼女は両耳を塞いでその場に蹲ってしまっている。駆け寄る蓮の背中の線が硬い。
 一体、と呟き、眼鏡の青年は自分も慌てて駆け出した。ほどなく三人のもとへ辿り着くと、キョーコはぶるぶる震えながら何事か呟いている。
 「ごめんなさい、ごめんなさい…」
 「!?」
 何が起こったのか。尋常ならざる事態に社は立ち竦むように足を止めた。同時に、蓮がさっと立ち上がる。少女を抱えて。  
 「やだ、やだ…ごめんなさい、いや…
 「たすけて、クオン…っ」
 キョーコの小さな手が、関節が白くなるほど蓮の肩をつかみしめている。子供の力とは言え痛かろうに、青年は気にする様子もなく少女のうすい肩をぽんぽん叩いた。
 「大丈夫だよキョーコちゃん、俺はここにいるから。誰にも君をいじめさせたりしない」
 しかしキョーコはかぶりを振る。
 「クオン、クオン…」
 「俺がクオンだよ」
 「クオンっ…」
 無意識の底では彼が呼ぶ相手と同一人物だとわかっているのだろう。なおもしがみつきながら、彼女は頑なにかりそめの名を持つ青年を拒む。
 蓮が息をついた。
 と思うと彼は、キョーコを抱えたままさっさと歩き出す。
 「ちょ、ちょっと蓮くん!?」
 ひとさらいが発生してしまった。少女を落ち着かせる場所が欲しいのだと見当はつくが、放っておいていいものか。慌てるガイド役の肩を、むちぷるの手がぽんと叩く。
 「まあ、任せとこうぜ」
 顧たマカナンの瞳の底には、なにか苦いものが見えた。



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 解決せにゃならんことってーのは誰にもありますけども、キョ子はちょっと多すぎですね…ゴメン。


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