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ROMANCIA 29

 「ひゃああああ!!?」
 「へ?」
 奇声とともに物凄い勢いで小屋の一番奥の壁に張りつくキョーコに、闖入者である青年医師は自分こそ面食らった顔と声を向ける。
 「ヒ、ヒカルさん」
 「あ、うん…なんか、ごめん?びっくりさせてもたみたいやね」
 「いえ、お蔭で我に返…いえその、ええと、お急ぎの御用でも?」
 女魔道士はしどろもどろのまま胸に手を当てている。竜の化身は先程自分の髪に触れかかっていたその手を無表情に見つめているが、彼女は頑なに視線を返そうとしなかった。
 いわく言い難い空気がもやもやと漂う中、ヒカルが忙しく頷きながら一歩だけ小屋の中に入って来る。
 「そやそや、あんな、大変やねん」
 「はい?」
 医師はきょとんと首を傾げるキョーコと小さく息をつくレンを気まずげに見比べ、仕方なさそうに言葉を継いだ。
 「いまさっき、街から領主はんの使いが来たんやけど」
 「領主様の?まさか、また立ち退きを要求して来たり…」
 彼女らを含めた人々がここへ移ることになった経緯を思えば、領主の性質はあまり慈悲深いとは言えないだろう。軽く眉を顰め、キョーコはともかく続きを待ってヒカルに視線を固定する。
 すると医師はかぶりを振ったが、話は彼女にとって同じほどありがたくないものだった。
 「そやなてな、京子ちゃんに会いたいゆうて来てんねよ」
 「え…私ですか!?」
 メゾソプラノが跳ね上がる。全身から?マークを飛ばす娘に、医師は言いにくそうに言った。
 「うん…どうも、あの川のことが」
 と窓の外を見る。午後の陽射しを受けて白金の光を躍らせる、豊かな、澄んだ川面。
 「一夜川とかって街で噂になっとるらしいてな。それを作ったっちゅう大魔道士を、ぜひ館に招待して話を聞きたいゆうことらしいで」
 「うっ…」
 キョーコが恨めしくレンに視線を流した。言わないことじゃない。
 「外にな、あない馬車も寄越して来はった」
 ヒカルが外を指すので、彼女はのろのろと窓に近付いて覗き込む。途端に固まった。
 大きな金ぴかの馬車。白い扉には紋章が打たれ、小窓にはレースのカーテン。たった一人を迎えに来たと言うのになんと6頭立てで、馬はいずれも斑紋ひとつない白馬が打ち揃っている。手綱を執る御者も白地に金ボタンのお仕着せに金のバックルつきの靴、羽飾りつきの帽子に真っ白な手袋と来たものだ。
 「なー、悪趣…」
 「素敵…っ」
 キョーコの呟きには、オトメの憧れと夢ときらめきが詰まっていた。ヒカルが慌てて口を閉じ、レンは軽く目を見開いている。
 「あ…でも、ご招待をお受けするわけにも行きませんよね…」
 女魔道士の視線が未練がましく馬車にまとわりつくが、立場を思えば他に言いようがない。
 「先日の一件を思えば推して知るべし、というところだけど…領主の評判は?」
 代わって尋ねたのは、それまで黙って聞いていたレンだった。
 「あー…まあ、知るべし、っちゅう範囲ですわ…」
 青年医師は返答の言葉を濁すが、顔に貼り付いた苦笑いがすべてを語っている。薬師はかるく頷き、キョーコに向き直った。
 「とりあえず使者に会わないとね。京子は招待を受けますが、2名の供を許して下さいって方向で頼むよ」
 「え、レンさん?頼むよ、って言われても」
 「いい機会だ。ここの今後のために領主の援助を得られれば上出来、そこまで行かなくてもとにかく排斥の意志は捨ててもらおう」
 またか、とキョーコがげんなりする。どうしてこの竜は、こう前向きと言うか実務的で行動的なのだ。しかも、彼のやることはいちいち大きくなるのが恐ろしい。
 「捨ててもらおうって、そんなうまく行くんですか…?」
 レンの意志が通らないことにでなく、通り過ぎることを危惧しながら女魔道士は精一杯の反論を試みた。
 竜の化身がにこりと笑う。
 「そこはそれ、話の持って行き方次第だろう?乙女心と違って、因業非情心なら予想もしやすいしね」
 「おおお、乙女心って」
 しかもずいぶんと厳しいことを言う。まるで自分の苛立ちをぶつけるような…もしかして領主が一番悪いのは、“間”というものではないのだろうかとキョーコには不安だった。




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 レンの性格が変わって来てしまった…
 ううっ。私が長いこと考え込めないせいですね。面目ない。


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