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フォルトゥナタ(32)

 「…えっと…」
 ほんの小さな声が、闇をこそりとくすぐる。高い位置に細く切った窓からも光は入って来ないから、まだ夜が明けてもいないのだろう。
 クオンティヌスはうすく目を開いたが何も言わず身動きせず、もそもそ蠢くキョーコの様子を窺った。暗がりに浮く白いシルエットは、しきりに共寝のぬくもりも冷めない寝台の中を探っている。
 手つきが遠慮がちなのは彼を起こさないようにとの配慮に思われるが、もしかして体が辛くて思うように動けないのだろうか。思えばこの一年余りに抱え込んだ切なさを払いたくて、初めての娘に無理を強いてしまったかもしれない。
 やがてキョーコが動作を停め、ふと溜め息を吐いた。
 「どうしよう…どこ行っちゃったのかしら。でも、もう行かないと…」
 娘は変にぎごちない動作で寝台を降りようとする。べそ半分の呟きの意味を知りたくて、クオンティヌスは思わず手を伸ばしかけた。もぞりと動いた拍子に右肩の下に違和感を覚え、何かあると引っ張り出してみる。
 「探し物は、これ、かな」
 嬉しいようなくすぐったいような少し意地の悪いような奇妙な気分でキョーコにそれを掲げて見せると、狭い寝室の戸口に向かいかけていた娘が文字通り飛び上がった。
 「そ、それっ!返してくださいっっ!!」
 剣を持つ手にあるのは彼女が昨夜身につけていたマミッラーレ(ブラジャー)、しかしクオンティヌスは慌てて強奪しようとするのからすいと引く。むっくり半身を起こした。
 「どこへ行く気だったの?」
 「えっ?あの、自分の部屋に戻ろうと…」
 戻って来たキョーコを更に手招きし、手の届くところまで来た瞬間に引き寄せる。
 「ひゃ!?」
 「俺を一人で目覚めさせる気だったなんてひどいな、キョーコ」
 抱え込んだ娘の頬に唇をつけ、彼は思い切り甘く囁いた。
 「奥様の寝室を、隣に設えないとね」
 「おっ…」
 騎士は自分のものとした娘の腹を撫でる。かっと熱が伝わって来たから、おそらく真っ赤に茹で上がっていることだろう。
 「絨毯を入れて、君用のアルカ・ウェスティリア(長持)と化粧台を揃えて。細工職人に綺麗な鏡を発注しよう。宝飾品は何が好き?」
 「けけけ結構です滅相もありません遠慮いたしますっ!!」
 キョーコはクオンティヌスに忘れ去られているらしき下着を漸く奪回しながら叫ぶ。
 「どうして」
 男の声に不満が混じった。
 「君は俺にすごくたくさんのものをくれたから、少しでも返したいのに」
 「そんなの逆ですよ!?」
 びっくり仰天、といったキョーコの声。
 「戴き過ぎは私の方で、どうにかしてご恩返しをと常々」
 クオンティヌスがくすりと笑った。
 「本当に、わかってないんだからな…」
 「何を…って、ひゃ」
 ふわりとストラの裾が翻る。鮮やかに組み敷いた娘の耳元に唇を寄せ、騎士はうっとり嘆息した。
 「いいよ、俺がわからせてあげるから」
 「…!?」


 その日、“ウルバ”のパンを待ちかねていつもの夜明けごろに店先に集まった人々は、少々待たされることになった。しかし店主がぎこぎこと辛そうに動くので、誰も文句を言う者はいなかったのだとか。




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 ちょっとあたくし寝不足が過ぎてハイになってるかもしれません。やっほーい。


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