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たいせつでたいせつで(167)

 「どうしたの?キョーコちゃん」
 寺の庭先に佇む少女を見つけて声をかけると、彼女はびくりと肩を跳ねさせた。
 「れ、蓮さん。何でもないの、終わったなあって、ちょっとぼうっとしてただけ」
 母の初盆もどうにか終え、墓への移骨(正確には分骨だが)も済んだ。諸手続きが完了するにはまだ数日を要するらしいが、それを終えればアメリカに帰ることになっていた。そこで、少女は正式に米国在住の日本人夫婦の養女となるはずだ。
 「疲れた?無理もないけど」
 振り返ったキョーコに近付き、顔色を確かめようと蓮はまるい頬に手を伸ばす。
 すると、
 「ぴゃっ」
 奇声を発した少女がエビのように後ろへ跳ねる。
 「…キョーコちゃん?」
 蓮は宙に浮いた手を戻さないまま茫然と呼びかけた。この反応は一体どういうことか。まるで自分に触られるのを忌避するような。
 「あ、えっとあの、大丈夫。元気だから」
 訥々と言って、キョーコはじりと足を踏み変えた。
 「そうだ、監督さんはもう戻って来た?」
 法事が終わるやうきうきと寺の中を散策しに出たマカナンの様子を尋ねられ、蓮は仕方なく頷く。
 「うん、それで呼びに来たんだけど」
 そこで、やけに儚げに佇んでいる少女を見たというわけだった。
 「そうだったの。ごめんなさい、すぐ戻ります」
 ちょっと他人行儀に言ってキョーコは身を翻す。ぱたた、と走っていく背を見送り、蓮は心中に首を傾げた。
 このところ、キョーコはあきらかに挙動不審だ。何か考え込んでいたかと思うと大慌てでかぶりを振り、次の瞬間には顔を赤くする。それに時々、ふと視線を感じて振り返ると彼女と目が合い、彼は微笑みかけるのだがぱっと目を逸らされてしまう。どうも、何かと避けられている気がする。
 これが彼を意識し始めた証拠などと言うことなら喜ばしいのだが、つらつら思うにそうではないらしい。大きな瞳の中に、どんなに必死に探しても彼への恋情のたぐいは発見できないのだ。むしろ、己の中に深く沈むような色がそこに浮かんでは消えるような…
 一体何があったのか。どんな心境の変化を迎えてキョーコがそうしているのか理由を知りたくて蓮は焦れたが、彼女相手にうまく追及する自信がない。へたに追い詰めて身を引かれてしまった日には目も当てられないと思うにつけ、まさかの思いがかすめることだった。
 キョーコのそんな態度は、祭りのあとからのことだ。穏やかに過ぎ始めていた日々が日本へ来てからのあれこれで波立ったせいでもあるのかもしれないが、彼女の心の傷がいまだに癒えていないことを目の前に突きつけられたあの夜。あの時は、自分に心を開いてくれている気がしたのに…
 まさか。
 と思うだに不安が胸に拡がる。気付かれてしまったのだろうか。自分がキョーコを守りたいと思う気持ちに偽りなどはないけれど、それだけではないのだと。それでまだ幼い彼女は戸惑っているのか、あるいは考えたくはないが恐れているのか…
 蓮は唇を結び、息を詰めた。
 と、木立の向こうに何か茶色いものがかすめるのに気付いた。忙しい両親に代理を強要されたと不満顔で同行して来たショータローが、一丁前に着込んだ子供用礼服のボタンをだらしなく外したまま歩いて行く。彼の視線を感じたか、うすい色の頭がふと振り返った。




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 このところどうもこう、頭の働きがにぶいです。もともとがさしてハタラいてないから目立たないかもですが。早い所新刊原稿を終えて睡眠とらないとだめですねー。


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