フォルトゥナタ(35)

 (な…に言って…この人たち)
 キョーコはぎゅうと盆を握りしめる。自分の鼓動や血流がひどく耳について、男たちの声が遠くなった気がした。駄目だ、聞き逃すわけに行かないと自分を叱咤するが、全身がひどく震えてどうしようもない。
 「…好都合…」
 「戦場に流れ矢はつきもの…」
 「食中毒ということも」
 「機会はいくらでもある」
 切れ切れに聞こえる言葉はいずれも不吉で、その響きだけで打ちのめされそうになった。
 やがて男たちは散々勝手なことを言い散らして去り、あとに痛いような静謐が落ちる。
 我に返ると、キョーコは柱廊の隅の暗がりにへたり込んでいた。こんなところを人に見られたら不審を買ってしまう。慌てて立ち上がろうとした時、すぐ手近で憤然とした声が上がった。
 「なんてことなの…!!」
 え、と視線を向ければ、そこにはなぜか子供が一人。やけに身なりのいい女の子が、小さな拳を握って仁王立ちしている。どう見ても厨房の下働きなどには見えないが、なぜこんなところにいるのか。
 少々呆気に取られていると、女の子は一人前に結った髪を撫でつけながら足でたんたんと床を打った。
 「クオンティヌス様がいらしてるって聞いて来てみたけど、正解だったわ…あんな卑劣な陰謀を掴めたんですものね!!」
 やけにませた口調で言う内容に、キョーコは妙に安心してしまった。どうやらいかにも身分の高そうなこの子はクオンティヌスの味方らしい。
 「あの…」
 「きゃあ!!?」
 声をかけてみると、女の子は文字通り飛び上がった。
 「だっ、誰…私は皇帝の孫よ、無礼な真似は許さないんだから…!」
 先程の男たちが戻って来たかと思ったらしい、彼女は精一杯の威厳をかき集めて胸を張る。年の割に度胸もあれば自尊心も高いらしい。と言うか、抜き差しならぬことを言った。
 「皇帝陛下のお孫さま…って言うと、たしかマリアさま!?」
 皇帝一家の噂は時々クオンティヌスから仕入れることができる。それによると世継ぎの皇子のひとり子がマリア・ファウスティナ、確か9歳。利発で愛らしいと聞いていたが、眼前に見るに確かにそのようだ。
 「そうよ!…って、女の人…?」
 やっとキョーコを確認して、皇孫は少し肩の力を抜いた。
 「あの、私は本日の饗宴に出すお料理を担当しております料理人で、ウルバと申す者です」
 「ああ、そう言えば知る人ぞ知る料理人を招いたんだっておじい様が自慢してらしたわね。なんでもクオンティヌス様の縁故とか…
 「って貴方!!」
 「はい!?」
 今度はキョーコが飛び上がった。マリア・ファウスティナは小さな体でつかみかからんばかりに詰め寄って来る。
 「あなた、さっきの話聞いた!?聞いてたの!?」
 「は、はいっ」
 「じゃあ話は早いわ!」
 「え」
 高貴なる少女は高々とこぶしを突き上げた。
 「クオンティヌス様を、守らなきゃ…!!」
 「マリアさま…っ」
 かくて、少女同盟は成る。




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 マリアちゃん初書き~。
 身分差があるので、いまのところ原作っぽい会話になりませんねえ。

 さて、あした更新したら600日達成です。そのあと一ヶ月くらい休もうかなーとか、そんな休んだらワタシもう帰って来ないかもとか、ちと迷ってるですよ。むー。
 

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