スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

だってアナタは○○だもの(後編)

 こんこん、と軽いノックの音がした。
 キョーコがはあいと返事をしてドアを開けに行く。それに迎えられて、
 「社さん待ちなんだけど、暫くお邪魔していいかな?」
 にこやかに同所属の先輩俳優が入って来た。
 どうぞと言われて微笑むさまは、奏江にはやはりし…親友、に惚れているように見える。大体、そんな理由でもなかったらどうしてこの忙しい人が事ある毎にラブミー部々室なんて場所に出没するのか。
 無料の喫茶処と思っているわけでもあるまいに…
 視線を流すと、はちりと目が合った。どうせお茶を淹れに行くキョーコを目で追っているだろうと思ったのが、なぜか自分を見ていたようだ。
 トップ俳優は当然のように慌てず騒がない。
 「琴南さんにも、いつも悪いね」
 あくまで愛想良く言うのだけれど、何だろう、笑顔に重圧感がある。若き女優は無意識に肚に力をこめたが、彼はじきに視線を逸らして今度こそキョーコに向けた。
 「さっき、楽しそうな声が外まで聞こえたけど。何の話だったのかな?」
 という台詞で気にしているところがわかり、先程のプレッシャーが嫉妬由来ではと思い至る。だって、『楽しそう』がやけに強かった。
 奏江はふと眉根を寄せる。
 案外小さいわ、この男。
 そうと思えば、手酷い失恋を味わったキョーコを任せるには不安がある。余人のことならば関与する気など起こすまいが、しっ親友の幸福に関わるとなれば話は別だ。
 眉間を絞る奏江をよそに、その親友はにこにことお茶を出しながら話に乗っていた。
 「お恥ずかしいです…いえ、可愛い小間物屋さんを見つけたので、琴南さんに一緒に行こうってお願いしてたんですよ」
 「相変わらず仲がいいね」
 「そんな…でも、そう見えるなら嬉しいです」
 キャッキャと喜ぶキョーコの姿は、照れ臭いから絶対に言わないけれど微笑ましいと言えなくもない。しかし、
 「何言ってんのよ…もー、恥ずかしい子ね」
 ついツンが出てしまう彼女に、蓮が再び視線を向けた。もちろん笑顔を保っているが、目が怖い。要らないならよこせと言わんばかりだ。
 だいぶ煮詰まってきてない?この人。と奏江は不安を覚える。
 「それで、お願いは聞いてもらえたの?」
 蓮の目がキョーコに戻った。横顔はただ甘いばかりだ。
 こっそり息をついた奏江だが、じきにまあいいと思いなおした。今のところ自分は、彼に勝っているはずなのだし。ラブミー部員1号は、2号が一番で最優先なのだ。照れ臭いからz(略。
 「えっと、それは、まだなんですけど」
 当のアンタが邪魔したのよ、とはさすがに言えないらしい。ちらりと視線をよこしたキョーコに、今なら承諾してもいい気がした。
 ところが奏江が口を開きかけるのと同時に、
 「じゃあ」
 と先輩俳優が妙に楽しそうに口を挟むではないか。
 「俺がつきあおうか?」
 「へ?」
 「は?」
 ラブミー部員は二人揃って間の抜けた声を放った。
 何を言い出すんだこの男は。自分がフラフラその辺を歩ける立場だと思っているのか。恋に目が眩んで常識が吹っ飛んだのか。そもそも似合わなすぎるだろう、敦賀蓮とかわいい小物は。ていうかこの男、キョーコに『つきあって下さい』とか言われてみたいだけじゃないのか。
 ぐるぐる考える奏江よりも先に、キョーコが我に返る。
 「いえ、あの…無理、では」
 そろりと言う、そうともその通り。つい大きく頷いてしまった彼女を横目で見て、トップ俳優は
 「どうして?」
 なんてキョーコに食い下がった。どうもこうもあるかと思うのだが。
 「だってそれは…私なんかが隣にいても人の目に連れとも映らないでしょうから、そこは置いておくとしても、敦賀さんがその辺にいるってだけで充分騒ぎになりかねないじゃないですか」
 余計な認識もくっついているが、一番無難で大きい理由を挙げたキョーコは正しいと奏江も思う。なのに蓮は、それはにこやかに言い放った。
 「大丈夫、変装して行くよ」
 「……」
 目眩を覚えた。
 馬鹿ですか。先輩でなかったら言いたかった。
 ああうん、キョーコバカですよね。すぐに思いなおした。
 「それは…バレるでしょう。ファンの目を侮っちゃいけませんよ」
 疲れた気分で、できるだけやんわり言ってみる。私が付き合うからいいですよ、と続けようとしたのだけれど、果たせなかった。
 「バレなかっただろう?」
 蓮は囁くように言って、キョーコだけに顔を向ける。背中に滲む雰囲気が変わったと思った。ひどく剣呑な、鉄錆びたようなものに。
 「兄さ…!」
 何か言いかけたキョーコが慌てて自分の口を塞いだ。
 え、なに今の。
 二人だけで通じ合ってるの?って言うか今のやりとりって、キョーコと変装した敦賀さんが一緒に外歩いたことがあるって意味?
 どういうこと。
 奏江が疑問で一杯になりながら成り行きを見守るうちにも、トップ俳優は社さんにスケジュールを確かめないとと笑っている。あざといまでに本気だ。
 「え、あの、でも」
 キョーコはキョーコで狼狽しているのだけれど、どうも先輩に逆らいきれずに陥落しそうな様子が見えた。
 ああ、ほら。
 「ありがとうございま、す?」
 しきりに瞬きしながら礼など言うので、蓮が愉しげに肩を竦めている。
 「どういたしまし、て?」
 どうも自分の知らない関係性をそこに嗅ぎつけ、新進女優は胸の底を危機感に焼かれた。
 キョーコの一番を、奪われる日がくるのだろうか。
 それはそれで仕方ない、どころか違うでしょ別にこだわるようなことじゃないじゃない。彼女はそう思おうとして、もやもやとした気分が晴れないのに溜め息をつく。
 なんてこと、と思った。
 キョーコバカは私もっぽいわ、もー。






web拍手 by FC2
 
 


 
 えらい間が空いてしまいましたが、「だって~」後編です。
 リクは「最終的に蓮の棚ボタ勝利」だったんですが…これ、自分でもぎ取ってますね。おとなしく棚ボタ待ってると、ラブミー部員たちにスルーされまくるのかも(笑)。


関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
作品一覧
サイト「花うてHP!」トップよりブログ内の作品のリストに飛べます。閲覧者の皆様のアクションに対して加算させて戴く「花うてポイント」の説明・管理もこちらよりどうぞ!

作品リスト(サイトトップ)

アクセス

・メールフォーム

・BBS

リンク

◆リンクページ


◆当ブログへのリンクについて

当ブログはスキビコンテンツをお持ちのサイト様に限りリンクフリーといたします。


ブログ名:花のうてな

管理人名:みなみ なみ

URL:http://hananoutena.blog14.

fc2.com/


 ↓各ジャンルごたまぜの本サイト。

↓スキビの同人誌作品をブログ記事として収載・販売しています。(2014年7月までで更新停止)

 ↓BUD BOY二次です。


  • 管理画面
  • RSSリンクの表示
    QRコード
    QR
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。