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たいせつでたいせつで(178)

 画面の下端を文字が流れて行く。
 トマス・ラウズ。
 その名は、嫌悪感と共にクオンの記憶に刻みつけられている。
 「キョーコちゃんの…!」
 かつての義父の名だ。彼女を虐待し、彼女の母を殺した。
 愕然と立ち竦む息子を、クーは一瞬怪訝そうに見たが、彼の呟きを聞き取ると勢いよくテレビを振り返った。
 速報の終わった画面では、元通りに金の髪の少年がにこやか穏やかに話している。
 しかしここ、ヒズリ邸のリビングではその同じ少年が険しい顔で拳を握り締めていた。
 「嫌なタイミングだな…」
 ぽつりと呟き落とす父の声と同時に、彼は尻ポケットから携帯電話をつかみ出した。帰宅したまま持っていたのは幸いだった。アドレス帳を忙しく繰り、キョーコの番号を探し出す。
 強くボタンを押し込むと、苛立つような空白のあとやっとコールが始まった。
 一回、二回、三回…早く出てくれ、早く、早く。
 しかし彼の願いも虚しく、応答のないまま留守電が作動する。クオンは即刻終話ボタンを押し、今度はだるまやの番号を探す。
 その手を、父の声が止めた。
 「ああ、おかみさん?忙しい時間帯にすまない、少しキョーコに用があるんだが…」
 様子を見て先回りしてくれたらしい。時を惜しむクオンは感謝の目を向けたが、それも父の次の言葉までだった。
 「え。カナエと出かけた?どこへ…
 「学校!?」
 聞いた瞬間、クオンはリビングを飛び出していた。手の中には、返しそびれた車のキーがある。
 「クオン、待ちなさい!私が…」
 制止も聞かばこそ、胸を冒す不安を振り切るように彼は走った。




 キュリキキキキキ!
 横滑りして歩道に乗り上げる直前で車が止まる。
 ぎょっと振り返る人々の視線を意に介さず、クオンはドアを蹴り閉めて駆け出した。
 途中でだるまやに電話をかけて、キョーコが家を出た時間を確かめてある。クーから事情を聞いたと声を震わせるおかみの話によれば、もう学校に着いていてもいい頃だ。
 手の中の携帯を見た。
 おかみもキョーコと連絡を取ってみる、取れたら電話をかけると言ってくれたが、キョーコ本人からの折り返しは勿論そちらからも着信はない。ずらりと並ぶのは『父』の文字だけで、彼はそれらを黙殺した。
 かき分ける空気が、ぬるりと重い。
 手足に絡みつくこの不安はどうしたことだろう。
 考えすぎではないのか、と思う。思いたい。
 単に偶然が重なっているだけ。キョーコは無事で、奏江と共に楽しく歩いているために大抵マナーモードのままの携帯の着信に気付いていないだけ。その元義父は今頃、再び捕まって護送されている…
 それだといい。それならいい。用心のしすぎは笑い話で済む。しかし、足りなかった時は。
 クオンは傾き始めている太陽を見上げた。血のような赤さが更に焦燥を呼ぶ、
 昼間の自分が馬鹿に思えた。
 心構えひとつ、自分がしっかりしていれば済むことをぐだぐだ考え込んで、後込みして。あの時キョーコに会っていれば、きっと今頃こんな思いをしていなかったのに。
 (キョーコちゃん…!)
 後悔に追い立てられて駆け込んだ校内で、彼は忙しく周囲を見回す。求める姿はない。警備員の姿を認めて尋ねてみた。キョーコはただでさえまだ11歳な上に童顔の日本人で、子供にしか見られないためよく目立つ。警備員も彼女のことは知っていたが、自分は午後からずっといるが今日は見ていないとかぶりを振られた。キョーコが奏江まで伴って校内へ入ったなら、まず見落とされることはないだろう。一瞬校舎を見遣ったがクオンはそこにキョーコがいる可能性は低いと退けた。
 ではどこに。
 思った時、ふと疑問を覚えた。
 学校と聞いて自分は、直前に見ていたテレビ番組のせいもあって高校に直結してしまったけれど、キョーコは奏江と共に出かけたのだ。
 それならむしろ、中学の方に行ったのではないか?
 幸い、そちらもすぐ近くだ。確かめてみようとクオンは身を翻した。





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 もうすぐアクションだ~。楽しみ。早く書きたい。

 あと、以下に都合でまるっとボツられてしまったマカナン監督の消息(?)を置いておきます。もうコレどこにも入りそうにないし。




 二週間が、やけに簡単に過ぎた。
 CM以来忙しくなって来ていたから、考え込む暇がないのはむしろ助かった。そんなことを考えながら撮影所の廊下を歩いていると、前方に見覚えのある中太のシルエットを発見した。
 「お」
 向こうも同時に気がついたようで、短い声を上げて片手を挙げる。
 「よう、CMプリンス」
 からかうように言うのは言わずと知れた映画監督、クオンの名を押し上げているそのCMを撮った張本人でもあるデニス・マカナンその人だ。
 「やめてくださいよ…自分だって、あれのせいで引っ張りだこになってるくせに」
 目の前まで来たマカナンのちょっと広くなり始めている気がしないでもない額に白い目を当てると、テキは嫌な顔をして背を反らした。そんなことをしても、一層額が広く見えるだけなのだが。
 「別に俺は、あれがなくたって引っ張りだこだからな。今更だろ」
 えへんとばかり言われてクオンは鼻白む。事実かもしれないが自分で言うなと思う。
 マカナンはちろりと彼の顔を見た。
 「それよっかお前、若いくせに何疲れた顔してやがる。スターってのは誰も見てねえ時でも気イ緩めるもんじゃねえぞ」
 からかう口調を改める気はないらしい。
 「俺は別に、スターなんかじゃありませんよ。自分のコントロールも効かないただの子供です」
 するりと言ってしまってから、彼はしまったと一瞬息を詰めた。果たしてマカナンがにたりと笑う。
 「察するに、また嬢ちゃん絡みで悩んでやがるな。今度は何だ」
 「こんなところで…それでなくたって監督に言う気はしません」
 ふん、とばかりそっぽを向くとそうかよと笑っている。
 「ま、悩め悩め。脳ってのは使用依存的に発達すんだ、若えうちに苦労しとけってのは本当だぜ」
 言い放つと、映画監督はかるく手を振ってぶらぶら歩きすぎようとする。頼りにならないこと甚だしいとクオンはその背を睨み送った。
 不意にマカナンが振り返る。クオンの渋面を見てニヤニヤ笑った。
 「だけどお前、ものごとにゃいつもタイミングってのがあるからな?」
 具体的なことは何もなく、それだけ言って彼はまたぶらぶら歩き出す。
 深いようでも、ごく一般的でもあるような言葉だ。時間を思うまま切り取って物語を紡ぐ映画監督には何が見えているのかと少年は訝るが、いくら丸い背中を眺めても窺い知れることではなかった



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楽しく作品拝見させていただいてます(>_<)あやですw
スキップビート二次作品をこよなく愛してサイトを流離う中、貴方の花のうてなを携帯充電器持ち歩きながら読ませていただいてますww
これからサイト運営、作品発表追いますので是非頑張ってくださいw
そして"たいせつでたいせつで"179話以降を、、、(>_<)続きが、、
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