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たいせつでたいせつで(26)

 「あそこは額に祝福のキス、だろ!なんであんな」
 「だって、あの方がメルの喜びの激しさが出るもの。いいじゃない、監督だってOK出したんだから」
 「…キョーコちゃんの前で、あんな…」
 ぶつぶつ呟いたクオンはキョーコを見遣るが、気まずそうに目を逸らされてしまった。
 ガーン。
 バックにベタフラを背負い、慌てて少女に駆け寄る。
 「キョー、コ、ちゃん」
 「なあに」
 そっぽを向いたままの冷たいお返事。素直なキョーコちゃんが…とクオンはますます狼狽する。
 「あのね、さっきのは…」
 「おしばいよね」
 「え、あ、うん。そう、そうなんだ」
 「わかってるもの。テレビで見たことあるし。ちょっと、じかに見ちゃったからびっくりしただけで」
 それだけでなく、先刻のことを思い出しているのだとクオンにはわかった。キョーコの小さな手が、そわそわ唇のあたりで踊っているから。
 「へいきだもの」
 言い張る口調はいつもの、人に頼らないキョーコのもの。クオンは軽い苛立ちを覚えてキョーコの手を取る。
 「俺は、それだけだったらイヤだな」
 掌にそっと口づけた。
 「!?」
 「俺のキスは全部キョーコちゃんのだ、って言ってくれればいいのに」
 「な…っ、な、何言ってるのコ、クオン!?ほほほほんとにハレンチなんだから!!!」
 「俺にキスされるの、イヤ?」
 「イ、イヤって…そんな…でも」
 キョーコが何か言いかけた時、しかし、クオンは彼女を見ていなかった。背後を振り返り、じっと耳を澄ましている。
 何かのざわめきが、伝わって来ていた。
 「…まさか」
 呟くとほぼ同時に、セットの向こう側から話し声が聞こえて来る。
 「すまないなデニス、突然邪魔をして」
 「まったくだ、俺を振ったくせによ。言っとくが、倅はいじめてねえぞ。今回はな」
 「ああそうじゃないよ。今日は…」
 「!」
 クオンが額を叩いた。なんて即断即決即実行の人なんだ…
 あの父は。
 「おお、クオン」
 セットを回り込んで現れたクーが、息子に気付いて片手を挙げる。そのまま、固まった。視線はベンチの前に屈み込んだクオンの向こう側、ちょこなんと座っている小さな女の子に釘付けになっている。それに気付き、キョーコは『なにかご用?』と言った風にかるく首を傾げた。
 「…っ…
 「キョオオオコオオオオオオ!!!!」
 踊るようにブリ寄るアクションスター。驚いて立ち上がるキョーコを背に庇い、クオンが父の鼻先を止めた。
 「ストップ父さん、落ち着いて!!“初対面”の人にそんな勢いでがぶり寄られたらキョーコちゃんが怯えるだろ!!?」
 「…ああ…」
 息子からの電話で大体の状況は知らされている。クーはおとなしく引き下がった。
 「すまん、そんなしっかりした表情のキョーコを見たらつい興奮して」
 「それは、わかるけど。可愛すぎるからね」
 「まったくだ!!」
 「…何だよお前ら、実は似た者親子なのか」
 マカナンの呆れ声に、うんうん頷き合っていた父子はあるいは照れ喜びあるいは嫌そうに眉を潜める。
 クーは息子を押しのけ気味に、少女の前で長身を折った。
 「やあ、キョーコ。私はクー・ヒズリ。クオンの父親だ」
 「クオンの…じゃあ、妖精国の王様!?」
 キョーコは頬を紅潮させ、スカートの裾をつまんでお辞儀する。
 「初めまして!」
 愛らしい仕草にクーは唇を緩めるが、小声でこっそり息子に囁いた。
 「なるほど、現実と映画がごっちゃになってるのか…」
 いやそうじゃなくて元々そういう傾向が、とは言い難く、クオンは曖昧に笑ってやり過ごした。
 クーは気を取り直し、少女のすなおな黒髪を撫でる。
 「初めましてじゃないんだよ、キョーコ。私たちはずっとおまえを待ってた。私たちに気付いてくれるのをね」
 「え…あの…?」
 戸惑うキョーコに、クーは慈しみをこめて微笑みかける。ドギマギと赤くなる少女の姿が、クオンには面白くなかった。
 「父さん、触りすぎ」
 押しのけ返そうとするが、父はびくともしない。わざとかと余計にイラッと来たところへ、出し抜けに尋ねられた。
 「ところで電話では触れてなかったが、何が切っ掛けになってキョーコが戻って来たんだ?」
 「え?あー…」
 言い淀む少年を小突き、マカナンが口を挟んだ。
 「王子様のキス、ってヤツだな」
 「…ほほう!やるなクオン」
 クーは妙に嬉しそうだ。
 「しかしそれは、大将には黙っておいた方がいいかもしれん」
 「わかってるよ…」
 軽く笑ったクーが、先程のクオンのように耳をそばだてた。
 「ん、何だ騒がしいな」
 いくつかの人声がするのは、彼も使ったゲートからの通路のようだ。
 「ちょっと、駄目ですってば…」
 「すぐ帰る、うちの自由気儘なバカ俳優をふんづかまえたらな!」
 「そんな…あ、ちょっと、貴方も」
 「娘を迎えに来ただけだ」
 聞こえて来た会話に、クーは肩をすくめて笑った。
 「うちの厳格律儀なマネージャーと…」
 あとを引き取り、クオンは少し困った声を出す。
 「噂をすれば、の影だね」



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 ここのところカタオモイを休んでるので、ナンバーが追いついちゃいそうですね。カタオももうじき再開できるはずではありますが。
 さて、クーパパ何回ぶりかに登場。クーがいると暗くならなくていいなあ。いいキャラだ~。
 あんど攻め攻めのクオン(笑)。
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