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たいせつでたいせつで(179)

  キョーコと奏江が、何の交通手段を使ったのかはわからない。しかし駅もバス停も同方向だし、中学と高校への道の分岐はすぐそこだ。
 車を使うまでもない距離ではあるが、足が必要になるかもしれない。クオンは急いで車に戻り、助手席に携帯電話を放り投げて乗り込んだ。
 エンジンをかけるや急発進、急ハンドル、急転回。対向車線に入り、短い距離を走って左折する。高校の敷地が広いから多少の距離はあるが、視界の奥にもう中学の建物が見えた。
 歩道にちらほら見える歩行者にも、路上に駐められた車にも目を配りながら進む。じきにグラウンドの前にさしかかり、数人走っている人影が見えたが、いずれもキョーコよりよほど長身だと目を切る。
 一瞬、ほぼ沈んだ秋の陽を追うように飛び去る鳥の影が視界をかすめた。思わずそちらへ視線を持って行かれる。
 「!」
 同時に、思い切りブレーキを踏んだ。後続車がなかったのは幸運だったかもしれない。
 鳥影の向こう、右前方の歩道に車道を渡ろうとしているらしくきょろきょろと周囲を見回している少女たちが見える。揺れる黒髪の艶やかさが遠目にもよくわかった。キョーコと奏江だ。
 無事だった。
 クオンは大きく安堵の息をついた。
 ハンドルを握り締めていた手を片方放し、窓のガラスを下ろす。キョーコに呼びかけようと頭を窓の外に出し…
 た瞬間、その髪先が乱暴な風に攫われた。
 ほんのわずか遅れてごうと空気が鳴り、それからけたたましいスリップ音。後方から突然現れたグレーのピックアップが膨らんだ軌道を強引にねじ変えて路肩に身をつける。キョーコの進路を塞ぐように。
 「!」
 まさか。
 現場まで少し距離がある。クオンはまたしても急発進を敢行し、悲鳴を上げるタイヤをものともせずに父の車を駆った。
 狂おしく揺れる視線の先で、不審な車のドアが開いた。そこから赤っぽい髪の男が突き飛ばされたようにまろび出る。
 ラウドではない…と思ったところへ、車の中からまた別の手が突き出された。キョーコが感電したように震えるのが見える。危険を感じ取ったのだろう、奏江がその肩を引こうとしているが、彼女は立ち竦んだまま動けずにいる。
 「キョーコちゃん!」
 叫んで、不審車の前を斜めに塞ぐ形で車を停めた。外へ飛び出す。
 少女がぱっと振り返った。
 「クオン…」
 駆け寄る彼に伸ばされた手を、ピックアップから乗り出した男がつかんだ。
 「あっ」
 「キョーコ!」
 小さな体が、いつかのように車の中へ放り込まれる。振り払われた奏江が尻餅をついた。
 「キョーコちゃんっ」
 追いすがる手は間に合わず、ドアが手荒く閉められる。垣間見た運転席に、ニュースで初めて知ったラウズの顔がある。一瞬、目が合った。血走った目にギラギラと浮かぶ狂気の色にぞっとする。
 灰色のピックアップが咆哮を上げた。しかし、車道側はクオンの停めた車に塞がれている。わずかにバックし、大きく方向転換して歩道に乗り上げた。
 その先には、足を押さえて立ち上がろうともがく奏江の姿。
 「危ない!」
 飛びついて転がるクオンの足先を、間一髪ピックアップのドアミラーがかすめて行く。そのまま、車は街灯を倒し街路樹を引っ掛けながら歩道を回り込んで走り出した。
 「くそ…!」
 舌打ちしたクオンは奏江を見遣るが、気丈な少女にぐいと肩を押された。
 「行って!私は大丈夫。警察やキョーコの家にも連絡しておきますから」
 携帯電話をバッグからつかみ出しているのを見て、金の髪の少年は力強く頷いた。人の駆け寄って来る姿もある、彼女のことはどうにかなるだろう。
 「わかった。じゃあ、犯人は逃亡中の脱走犯トマズ・ラウズだって警察に知らせて欲しい」
 立ち上がりざま、
 「キョーコちゃんの元の父親だ、ってことも」
 ぽつりと告げ、驚きの声を聞き捨てて自分の乗って来た車に乗り込んだ。
 フロンドガラスの向こうには、日が落ちた直後の影のない街。ともすればそこに溶け込んでしまいそうなグレーの車が、道の先へ早くも小さくなりかかっている。
 エンジンをかけ、クオンは思い切りアクセルを踏み込んだ。
 車が弾かれたように走り出す。車の好きな父のものだけあって、整備は万全だ。。
 じりじりと距離を詰める。トップスピードで言えばこちらに分があるはずだが、生憎と交通量の増える時間帯に差し掛かり、一直線には追いすがれなかった。
 先行する車がぎりぎりで黄信号を抜けた。クオンは前にいた一台を強引に抜いて交差点に入る。同時に携帯電話が鳴り出したが、とても応答していられる状況にない。
 寸時そちらに気を取られた間に、横合いからトレーラーが出て来た。
 「!」
 怒鳴りつけるようなクラクションを聞きながら、大きくハンドルを切る。



 


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 せっかく3周年なので、せめて久々にSS更新でもしときます。と言いつつ、でぢAKAで更新したものを持って来ただけですけども。

 あ、でぢAKAの方には(186)をアップしました。次で終わる…かもしれないし、終わらないかも…しれない…です。あー、うんと、…どうでしょうね;終わらない、かも?←ホントにもうコイツは。


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