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たいせつ2巻ちらり

 もう少しでございます。いくらなんでも今月中には出すんだ…!
 あまりイベント行かない発言をしたばかりですが、ちと事情があって10月のSPARKに申込をしたので、やっとこさ関東の皆様にもたいせつ~初お目見えとなります。どぞよろしゅうに。

 2巻の書き足し部分は3割以上になってます。この調子で書き足してると最終巻はあほみたいに分厚くなりかねないんじゃないかとコワいです。ただでさえ月刊が大嘘状態なのに、そんなことになったらどれだけ時間がかかるのか…できるだけ避けたいキモチです。あう。
 まあとにかく、今はひたすら書くですよ…



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 「おら、奥行けよ。静かにな」
 蹴り転がされるように、路地へ押し込まれた。
 奥を止める薄汚れたコンクリート壁を背にして、ぐるりと見渡せば相手は四人。キョーコを背負ったままでは闘うも退くもままならない。クオンはまず、父のマネージャーに心の中で謝りながら花束を地面に捨てた。近付いて来るうちの一人の足の下、それはぐしゃりと無惨な音を立てる。
 不穏な空気を感じ取ったのか、背中でもぞと少女が身じろいだ。それを軽く揺すり、彼は取り囲む四つの顔、とりわけトミーから目を離さずに呼びかける。
 「キョーコちゃん。
 「ごめん、起きて。降ろすから」
 「ん…コーン…?」
 小さく呻くキョーコをそろそろと屈んで背中から降りさせた。半ば滑り落ちながらごしごし目をこする少女は、目線を上げて緊迫した状況に気付くやひくりと固まる。
 「コ、コーン…この人たち、だれ…」
 「ちょっとした知り合い、かな」
 クオンは安心させるようにまるい頬を撫でながら、しっかりとかつての遊び仲間たちに視線を据えた。
 射るような眼光に、さしもの不良少年たちも鼻白む。
 それへ彼は、低い声で言った。
 「お前たちの目的は俺だろう。付き合ってやるから、この子は見逃せ」
 「へ~え?」
 トミーが鼻を鳴らす。
 「ずいぶん大事にしてんじゃねえか、いっつも誰にもキョーミございませんってカオしてたてめえが、お珍しいこともあるもんだ。一体そのチンケなガキが何だってんだ?」
 「お前には関係ない」
 小馬鹿にするように肩を揺らすのへ、クオンはぴしりと決め付けた。
 「いい態度だなあ、お坊ちゃま。
 「…ふん、まあいいさ。確かにそんなチビガキにゃ用はねえ。とっととどこでも行かせろよ」
 不良少年のリーダーが手を振ると、一人分の道が開けられる。クオンはそこへ向けてキョーコの背を押し出した。
 「キョーコちゃん、行って。俺は大丈夫だから」
 「コーン、でも」
 「君がいる方が動きにくいんだ。聞き分けて」
 「…!」
 キョーコは半べそで路地の出口を見る。クオンは余計なことを言わないでくれ、と願いながらその背中をもう一度押した。人を呼んで来るだとか言って、彼らを刺激してほしくない。
 幸い、少女は泣くまいと歯を食いしばっていて何か言うどころではない。振り返り振り返り、震えながら歩いて行く。
 それを見送るクオンの両脇に、それぞれ一人ずつが取り付いた。トミーが正面に立つ。それでもクオンの視線は揺るがない。息さえ詰め、小さな背中を見送り続ける。
 キョーコが路地を出るという瞬間になって、彼はやっと肩を緩め…
 同時に、通りのきわで見張りを務めていた少年が彼女の手をつかみ上げた。
 「きゃ…」
 悲鳴を上げようとする口を塞ぎ、盾にするようにクオンに見せ付ける。
 「バカだなーお坊ちゃんは。ホントに逃がすと思ったのか?」
 苦しげにもがく少女から目を離せず、クオンは叫ぶ。
 「お前たち、女の子にそんな…!」
 「しょうがねえだろ、人呼ばれたりしちゃ厄介だからなあ。まあ、お前が暫くイイコにしてりゃ、このガキまで痛い目見るこたねえって」
 クオンはゆっくりと息を吐いた。
 「……」
 憎々しげに下から見上げてくるトミーに、目を細め、
 笑いかける。冷たく、禍々しく。
 「あの子に、毛ほどの傷でもつけてみろ。
 「…殺すぞ?」
 「っ…」
 じり、とトミーが一歩下がった。直後、彼はそれを恥じるように勢いよく喚き出す。
 「な…に言ってやがるこの野郎、状況見てもの言えっつんだよ馬鹿か!大体てめえ、いいのかよそのガキの前で本性出して?『キョーコチャ~ン』とかさびい声出してやがった癖によ。何なら、優しいキレーなオニイチャンが今まで何してたか全部ガキに教えてやってもいいんだぜ!」
 呼び名の由来でもある早口の口上を繰り広げる『トミーガン』に、クオンはただ黙ってうすら冷めた視線を当てた。
 「…くそ、スカしやがって!!」
 激昂する不良少年が、クオンの腹に拳を叩き込んだ。
 「!」
 身を折るクオンは両側から引き起こされ、同じ場所に膝を突き込まれる。ぐう、と胃液が上がった。そこへ横顔を張られ、酸っぱい血を吐き飛ばす。口の中が切れたようだ。
 「てめえはなあ、俺ゃあ最初っから気に入らなかったんだよ」
 トミーがクオンの前髪をつかみ上げた。ぎらぎらと粘い口調で囁く。
 「いっつも涼しいカオして、俺らから一歩離れたトコで『お前らになーんも興味ありませーん』って態度取りやがって。その癖おいしいトコだけはきっちり掻っ攫ってきやがる。結局お坊ちゃまは、俺らなんぞバカにしてんだよなあ?」
 「…て…」
 「ああ?」
 クオンの呟き声に、不良少年は苦痛に歪んでさえ損なわれない佳貌を覗き込む。しかし碧い瞳は彼を見てはおらず、ただ、涙を振りこぼしながら必死に自分に手を伸ばそうとしている囚われの少女だけに向けられていた。
 「目を瞑ってて、キョーコちゃん…こんなの見なくていい。すぐ済む、から…」
 かすれた声で言い、彼は微笑んでさえ見せる。
 「野郎…!」
 トミーの目に、血の色が入った。周囲を見回し、すぐ脇に這う錆びた鉄パイプを壁から引き剥がす。その動きを目で追っていた少女が、びくりと震えた。
 クオンはこまかくかぶりを振り出すキョーコに、何か詰まっているような喉から必死に言葉を絞る。
 「キョーコちゃん、見ないで。目を…」
 「ガキ気にしてる場合かよ、クオン?」
 トミーが、ことさら緩慢に凶器を振り上げた。
 「んん!んーっ!!」
 キョーコのもがく声。
 「いって、このガキ!」
めちゃくちゃに暴れ、自分を捕らえている少年の手を引っかき、少女はまろび出てくる。両手を必死に前に伸ばし、クオンだけを見つめて。
 「なっ…
 「来ちゃダメだ!!」
 ぶん、と凶器が空を切って振り下ろされる。そこへ、
 「コーンっ…!!」
 割り込むキョーコの声。クオンは自分の顔から血が引く音を聞いた。
 「キョーコちゃん!!」
 何を考える間もなく、両腕を思い切り振って拘束を振るい落とす。弾き飛ばされた少年達の悲鳴を聞きもせず、手を伸ばす。キョーコの腕をつかんで思い切り引き寄せた。自分の胸に抱え込み、身を捻る。
 がす、という打撃音。それに、べきと嫌な音が重なる。
 「っ…!!」
 右のふくらはぎに衝撃を覚え、キョーコを抱えたままバランスを失った。壁の手前で体を入れ替えて、背中を向ける。勢いをろくに殺せずに叩きつけられて一瞬呼吸が止まった。
 「コーン!」
 少女が悲鳴を上げた。ずるずると地面に沈む少年を必死に支えようとする。
 「コーン、コーン!!やだ…ごめんなさい、ごめんなさい、私のせいで…っ」
 「ちがう、よ…君は、大丈夫?キョーコちゃん。痛いところない…?」
 クオンは息を詰めて体勢を留め、そっとキョーコに微笑みかける。苦労はない。キョーコを瞳に映すなら、自然に笑みは零れるのだ。
 「だ、だいじょうぶ…どこも、痛くない」
 少女がこくこくと壊れた首振り人形のように頷く。
 「そう、よかった…」
 クオンは立ち上がろうとするが、右足に力が入らない。急激に腫れあがっているのがジーンズの上からでも見て取れる。まださほど痛みはない。これは、逆に深刻な負傷だという意味だ。
 (骨が折れたか…)
 心中で舌打ちし、頭上を見上げた。視界が暗いと思ったら、いつの間にか陽が落ちている。まずいな、と思った。トミーたちの仲間が続々とねぐらを出てくる時間帯だ。これ以上人数が増えては敵わない。集団の行動が動揺・高揚しやすくしばしば行き過ぎることを、曲がりなりにも彼らとつるんでいたことのあるクオンは知っている。
 彼の異状を悟ったらしいトミーは、ニヤつきながら鉄パイプで肩を叩いている。クオンに振り飛ばされたうちの一人がのそのそ歩み寄り、キョーコを足で引っ掛けて転ばせ、つまみ上げた。
 「きゃ…」
 「キョーコちゃん!」
 「おっと、だからお前は余所見すんじゃねえよって。なあ?」
 「!!」
 激痛に襲われ、声にならない叫びが上がる。もう一人がクオンの右足を故意に踏みにじって回り込み、残りの一人と共に背中から押さえつけたのだ。
 「頭起こさせろ」
 トミーがひどく昏い声で命じる。ぐい、と後ろ髪を引っ張られ、クオンはなめらかな首を夜気に晒した。
 「…喉、つぶれたら、俳優ってどうすんだろな?」
 「!」
 「いまどきサイレントムービーでもないしなあ」
 妙に調子の外れた声で言うトミーを、クオンは視界の許す限り睨み据える。
 「い…や……」
 か細い声が聞こえた。碧い瞳に苦痛が過る。
 ごめんね、と彼は声もなく呟いた。自分のことは結局自業自得だ。けれど、キョーコにこんなシーンを見せることになるとは。
( 君をもう、傷つけないって誓ったのに。あんな風に泣かせないって決めたのに)
 暴力の記憶に震えるキョーコの姿を、つい先刻見たばかりではないか。その際にも何も出来なかった彼が直後にこんな騒動にまで巻き込むなど、どれだけ悔やんでも足りないことだ。
 ぎり、と奥歯を噛むクオンの喉仏に、ひやりとざらついた冷たさが触れる。それが、ぐ、と押し付けられて…
 「やだ…
 「コーン…
 「いや…いやあああ!!」
 キョーコが甲高い声で喚き出した。恐怖と混乱のあまりに英語が飛んでしまったらしい、高い声が紡ぐのは母国語たる日本語だった。
 「やめて、いや、おねがいやめて、そんなのだめ、クオンにいたいことしないで、おねがい、おねがい、おねがいいいいっ!!!」
 「っ…このガキ!何言ってやがる、静かにしろ」
 口を塞ごうとする手からもがき逃れ、少女は叫び続ける。そこへ、
 「へえ?」
 新たな声が場の空気を割った。覚えのある、とクオンが顔を振り上げる。冷ややかな悪意の感じられるその声は、鼻に抜くような調子で続けた。
 「わけのわかんねえ喚き声がすると思ったら、やっぱ東洋の小猿かよ。品性の欠片もない金切り声出しやがって、お前にゃ似合いの連れだよなあ…クオン・ヒズリ。
 「ああ、日本じゃコーンって発音するのか?とうもろこしね、黄色くて中が空っぽってか。ぴったりじゃねえか」
 すいと手を差し伸べる先頭の人物の後ろから、下卑た同調の笑い声が上がる。
 新たに現れた人影は六つ。うす灯りに浮かぶのは、いずれも知った顔だ。大スターの一人息子たるクオンを目の敵にしては小突き回す、同業者たち。
 ますますまずい状況になった。戸惑っているキョーコを視界の端に留めながら、クオンはきつく闖入者たちを睨みつけた。
 「よう、クーの息子。いい晩だな?」
 グループのリーダーであるラルフ・マクファーソンが皮肉に口を歪める。
 「いいざまじゃねえか。やっぱ、どこでも嫌われてんだよなあお前は。俺が教えてやった通りだよ、お前の居場所なんてどこにもねエんだ。なあ?」
 マクファーソンは整った顔をトミーに向け、親しげに笑いかけて見せた。顔に似合わず言葉の悪い俳優に同意を求められ、トミーの方はちりとこめかみを引きつらせる。
 「なんだてめえら。いきなり割り込んで来てべらべら喋りやがって、クソうぜえな」
 「おっと、そうとんがるなよ。俺らもそいつは気に食わねえし邪魔なんだ、あんた達の邪魔する気はないって。どうぞ遠慮なく続けてくれ、俺らはおとなしく見学してるから」
 馴れ馴れしく言って両手を拡げるさまが小面憎い。 
 おそらくトミー達の邪魔をする気はないというのは本当だろう。ありがたくもないが、もっと深刻な問題はその後に控えている。
 邪魔をする気はなくとも、利用する気もないとは彼は言っていない。
 仮にトミーたちが鬱陶しがって追い払ったとしても、彼らはただでさえ足を折って思うように動けなくなっているクオンがさらに傷めつけられた頃合を見計らって戻って来るだろう。
 そこで、何をする気になるか。罪は不良少年たちになすりつけることにして、最悪の場合は殺されることも有り得る…
 下手をすれば、キョーコともども。
 冗談じゃない、と唇を噛む。
 必死にこの場を切り抜ける方法を考えさ迷う視線の片先、トミーが歯を剥き出した。
 「ふざけんな、見せもんじゃねえぞ」
 低い声が紡ぐのは予想内の言葉だったが、相手の反応が予想外だった。すぐに退くかと思っていたマクファーソンは、さも不快げに片眼を眇めたのだ。
 「なんだよ、ケチケチすんなよ。俺らにしてみりゃ、そこのジャップが傷めつけられてるとこなんざ最高の見せ物なんだぜ?」
一 瞬、背後へと目を流したから、人数が勝っていることで気が大きくなっているらしい。俳優のくせによほどわざとらしい動作で肩を竦め、器用に片眉を上げて見せる。
 「ああ?」
 いかにも侮った態度に、通りを根城にする不良少年はさも不快げに口を歪めた。
 「そんなもん知るか、てめえらのためにやってねえってんだよぬるいオツムだなダニ野郎。いいからとっとと失せやがれ!」
 「は?」
 トミーとマクファーソンの間の空気がぎりぎりと引き攣れ始めた。赤に近い金髪に飾られた頭がやれやれと振られ、若い俳優は短く鼻息を噴く。
 「『街のダニ』がよく言うぜ」
 「なんだとこの野郎!」
 たちまち色めき立ったのはトミーよりも残りの二人だった。もともと興奮状態にあるところへ挑発のような言葉を投げられ、彼らは状況も忘れ去ったように闖入者たちへと険しい視線を集中させる。
 実際、キョーコを捕まえている少年の手が離れ、賢い少女がそろりとあとじさるのが目に入った。いいぞそのまま逃げてくれ、と敢えて視線を外すのに、すぐに肩に感じた振動に目を瞠る。
慌てて振り返った先、キョーコが彼を押さえつけている左側の少年の手を外そうと躍起になって引っ張っていた。
 「キョーコちゃんっ」
 ばか、とへたり込みたくなる。さっさと逃げればいいのに、その方が彼は助かるのに。どうしてこんな時まで、守ろうとするのか。
 目が眩む思いがした。
 (俺なんかを)
 圧倒的な後悔に襲われてクオンは吐息を噛む。これまでを彼女に恥じない自分でいたのなら、こんなことを考えずに…いや、そうだったらそもそもこんな状況になどなっていなかったのだ。
 頭の上から舌打ちが降って来た。
 「うぜえなこのガキ…」
 マクファーソンたちに気を取られていた彼も、キョーコを無視できなくなって来たようだ。小さな女の子の力が何ほどのこともあるまいが、彼らはいま気が立っている。
 「」
 今からでも逃げろとキョーコに促すために口を開いたが、言葉が出る先に場が変化したことを感じて視線が迷う。空気が重く沈み、引き攣れて火花を発するような。
 「てめえ…」
 マクファーソンが低く呻く。背後に控える取り巻きたちが浮き足立ちざわめく、彼らの悪意の向く先、路地に射し入る弱い街灯の光を受けて、くろぐろと、
 銃口がきらめく。







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