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FLOW(後編)

 「じゃあ私、お台所に…
 「!?」
 彼女が振り返る前に、背中から覆いかぶさった。
 「つ、敦賀さん!?やっぱりご気分が…あっ、血糖値が下がりすぎたとか!大変、お砂糖を…」
 俺をしょったままキッチンへ行こうとするので、少し苦笑した。
 「そうじゃないよ、最上さん」
 甘い香りのする首筋に顔を伏せたまま呟く。
 「ひゃうっ!や、あ、あの、では」
 「俺が食べたいのは…欲しいのはね、君」
 「…は?」
 「拒否は3秒以内。321、はい終了。じゃあ合意ってことで」
 固まっているのをひょいと抱き上げ靴を脱がせて放り出した。
 「えっ…え、あの、つ、るがさん?たちの悪い冗談は」
 「俺が冗談でこんなことするって思ってるんだ。…まあ、君はそう思ってたっていいよ。でも俺は知ってる。君の方は、冗談とか遊びとかでこんなことできないよね。
 「だから」
 瞳を合わせる。吸い込まれそうな大きな瞳。いっそ、そこに吸い込まれてしまいたい。
 「とにかくまず俺のものにする。その後で、ゆっくり俺がどのくらい本気かわからせてあげるよ…」
 最上さんの喉が甲高く鳴った。悲鳴みたいに。だけど俺は、彼女の香りに幻惑されてひどく情動が鈍ってる。
 「さて、まずお風呂かな。その香りを剥ぎ取って、俺の匂いをつけなおさなきゃ」
 「そ…な、つ…るがさ…」
 「大丈夫、任せて」
 震え出すのに構わず、細い体をがっちり抱えたままバスルームに向かった。知ったことか、君が悪いんだ。俺の気も知らずに、俺じゃない奴に影響されて…
 それで一層、俺を惑わせて。
 「…が…った…のに!」
 脱衣所に入ったところで、最上さんが急に暴れ始めた。
 「暴れないで、いい子にしておいで。やさしくしたいから」
 聞かないだろうな、と思いながら言ってみる。案の上、最上さんは俺の言うことなんか聞かないで手を俺の胸に突っ張り足をバタつかせた。
 「敦賀さんがっ…言ったのに!この香り、好きだって…!!」
 叫んだ最上さんが足をリネン棚にぶつけて顔を歪ませる。
 「ほら、言わないことじゃない…
 「……え?」
 「この前、富士の廊下でっ…可愛い感じの女優さんに!だから私…
 「わ、私にも同じこと言ってほしくて、言って下さったから、嬉しかったのに。なのにどうしてこんな!」
 「最が…」
 な…んだ?彼女は、何を言ってる…?
 困惑に緩む俺の腕から、彼女はとうとう脱け出した。鼻の先を、激情にあたためられた香りがかすめる。それで思い出した。確かに、そういうことがあった。だから覚えのある匂いだと思ったんだ…だけど…
 「あんなのは、ただのお愛想で」
 「じゃあこれも、お愛想ですか!」
 最上さんは叫んで俺を突き飛ばし、バタバタと玄関へ向かう。
 「待っ…」
 追いかけると、玄関には彼女の靴が俺が投げたまま残っている。ともかく拾い上げて外に出ると、エレベータの扉が閉まったところだった。



 まったく、いざとなると何て足が速いんだあの子は!
 数十m先を、見慣れた背中が飛ぶように走って行く。見失うわけには行かない。俺は水の入った靴を脱ぎ捨てた。
 幸い、雨の街に通行人の姿はない。スカートの裾を跳ね上げて走る京子の姿も、それを追いかける敦賀蓮も、二人ともが靴下裸足であることも誰も見てはいない。
 「最上さんっ」
 やっと追いついてつかまえると、彼女はぎょっと立ち竦む。
 「敦賀さん!傘もささずに…早く戻って下さい、風邪ひきます!!」
 「まったく、君は…こんな時にも俺の心配をするのか?」
 「だって」
 足元に靴を置いてやると、最上さんは初めて気付いたようにビリビリになったストッキングを見下ろし、すいませんと小さな声で言った。ついでに俺の足元を見てまた驚いた顔をする。
 「敦賀さん、ご自分の靴は…!」
 「邪魔だったから捨てて来た。手は塞がってたし」
 「そんな!私の靴こそ捨てて下されば…もしケガでもしたら」
 「いいんだ」
 俺は強い調子で言った。だけど手を伸ばす時は、恐る恐るだった。最上さんは一瞬身を固くしたけれど、おとなしく俺の腕に収まってくれる。
 「ごめん」
 謝る声がかすれて、自分の声じゃないみたいに思えた。
 「本当にごめん。どうかしてた。焦りすぎて…」
 うまく言葉が出て来ない。かわりに、何度もしなやかな髪を撫でた。肩に当たる額が少しずつ重くなって行くことに、喩えようもなく安堵する。
 「戻ろう?体を温めて、服を乾かさないと」
 ぴくり、と細い肩が震える。慌てて何もしないよと誓った。
 途中で俺の靴も発見して拾い、二人でガポガポ変な合奏をしながら帰った。
 手を差し出すとおずおず握り返してくれたから、俺は急に幸福になる。全く、現金すぎて自分でも呆れてしまう。いつもいつも、君に赦させてばかりなのに。そう反省する一方で、俺が戯れ言に好きだと言った香りを身につけてくれたことに期待せずにいられない。
 本当に、ひどい男だね俺は。君を手に入れることしか考えてない。いや、考えられないんだ。
        だったらせめて、待つことくらい覚えるべきじゃないか?この子の気持ちが育つまで、俺に追いついてくれるまで。
 握る手に少しだけ力をこめて、俺は言ってみた。
 「ゆっくり行こう」
 最上さんはちょっと首を傾げて俺を見上げ、それからほんのり微笑んでくれた。




<了>

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 なんで…私が書くと、皆さん基本アクティブになるんですかね。切ないってどうしたらいいんだろ…
 リク主様、こんなんなりましたが大丈夫でしょうか;
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