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たいせつでたいせつで(27)

 「あー、いいよ。こいつらの客らしい」
 マカナンが部外者を押し返そうと奮闘するスタッフにヒズリ親子を親指で示す。はあそうですかとやや不満げに呟くスタッフの向こう側から、3人の人影が現れた。その内の一人、スーツ姿の男がクーを見るや勢いよく噛み付く。
 「クー!お前、いきなり撮影現場抜け出して」
 「ああ、悪いな敏腕マネージャー殿。大事な用だったんだ」
 両手を開いて男をいなし、ハリウッドスターは残りの二人に向き直った。
 「やあ、大将。おかみさんまで。店はまだ開かないだろうけど、仕込みはいいのかい?」
 からかうような口調のクーから、だるまやの夫婦は下へと視線を移動させる。俳優の影に半分隠れるように、次から次へと現れる人々に戸惑っている少女の姿があった。
 「キョーコ」
 「キョーコちゃん!!」
 駆け出したのはおかみの方が早かった。腕組みして睨んでいる自分のマネージャーの方へ歩き出すクーの前を駆け抜け、少女の顔を両手で挟んで見入る。
 「あ…あの…?」
 視線と反応を返され、彼女はぶわと涙を溢れさせた。
 「ほんとなんだね、ほんとに元に戻ったんだ…!よかった、よかったよ…」
 抱きしめられてキョーコは驚いた顔でクオンを見る。少年が笑顔で頷くので少し安堵した時、頭上に影が差して目を上げた。
 「!?」
 仏頂面の、怖そうな中年男がすぐ傍にゆらりと立っている。手を伸ばして来た。
 思わず身を縮めるキョーコの頭を、ごつい手がぐりぐりと撫でる。頭がグラグラするほどの不器用さにキョーコはおたおたと両手を動かすが、その表情は何か記憶を辿るふうでもあった。この感覚には覚えがある、というような。
 キョーコは思う。実際、見知らぬ人々なのだ。そのはずだ。なのにどうして自分は、そんなおとな達に囲まれて少しも緊張していないのだろう?
 クオンがいるからだろうか、と視線を向けてみた。するとやさしい、きれいなきれいな笑顔が返って来る。クオンずるい、と思いながら目を逸らした。そんな顔をされたら、恥ずかしくてまともに顔を見られない。この人たちが誰なのか聞きたかったのに。
 子供心に、本人たちに直接尋ねることは憚られた。なぜか、傷つけてしまうような気がしたのだ。
 どうしよう、とキョーコは自分を抱きしめている中年女性と傍らの中年男性、彼らと一緒に現れたスーツ姿の男と何か話しているクオンの父、クオンは素通りしてその雇い主と名乗った男へと視線を巡らせる。すると、にしゃ、と悪童っぽい笑顔が返って来た。マカナンは言う。
 「お取り込み中悪いけどな、お前らカエレ。邪魔だっつの。坊主も今日の出番終わってんだから、もういいぞ」
 「はあ」
 クーのマネージャーがすかさず答えた。
 「ああ、申し訳ないマカナン監督。このバカ俳優はすぐに連れて帰るから」
 「待てショーン、私はまだろくにキョーコと話してないんだ」
 「うるさい」
 俳優の耳を引っ張って歩き出す。
 「痛い痛い。耳がちぎれたらどうするんだ人非人。ああキョーコ…」
 助けを求めるように少女に差し伸べる手は、ぺしりとマネージャーにはたき落とされた。
 「ひとの話もロクに聞かない耳なんか要るか。今日は早く上がれるように調整してやるから、さっさと歩け」
 「ショーン!やはり君は有能だ…」
 「わかったわかった」
 大騒ぎしながら2名退場。
 「えっと…じゃあ俺、着替えて来ます。少し待っててもらえますか?一緒に帰りますから」
 クオンが点目でだるまや夫妻を振り返る。頷く二人とキョーコに笑いかけ、彼は衣装の装飾を外しながら歩き出した。



 戻ってみると、おかみが何やかやとキョーコに話しかけている。微笑んでいるキョーコを見て、クオンは安堵した。おかみのあたたかい人柄は、記憶がなくても親しみ易いのだろう。
 帰れと言われた瞬間、彼も、おそらくだるまやの夫婦も新しい問題に直面したことに気付いていた。
 どうやら彼と再会した直後からの記憶がない様子のキョーコは、帰ると言うなら実の親と暮らしていた家に帰ろうとするのではないか。しかし、もうそこは空家になっているか他人が住んでいるか(起こった事件を考えれば、空家のままである可能性が高い)…ともかく彼女の家ではなくなっている。
 それを、11歳の少女にどう説明したらいいのだろう。
 何が起きたのか隠すにはキョーコは賢い。しかし、説明を誤ってすべての記憶を蘇らせてしまったら…再び彼女が自分の殻に閉じこもるようなことになってしまったら?
 (嫌だ)
 とクオンは思う。やっと元のキョーコになったのに。彼をまっすぐに見て、微笑いかけ、話しかけてくれる。それを再び失うことなど考えられない。人は、二度目のいたみには耐えられないのだ。
 「お待たせしました」
 だるまやの夫婦に会釈し、クオンは少し哀しげなキョーコに手を差し出す。
 「行こうか、キョーコちゃん」
 「う、うん…あのね、私のお家は…」
 住所を言いかけるキョーコに、里親たちは歯が痛むような顔をした。
 少年は繋いだ手にわずかに力をこめ、努めて穏やかに遮った。
 「違うんだ、キョーコちゃん」


 
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 うが~。自分で設定したとは言えムズカシー問題でがすよ。説得力のある話がでけるのか…しかしここをクリアせねば先へ進めない。ハタラけハタラけ私の脳~!! 
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