Happy Day!

 「20歳の誕生日おめでとう、キョーコ」
 と蓮が差し出したのは、例年に比べてずっと小さな包み。
 もしや…という予感がなかったと言えば嘘になる。礼を述べ、おずおずと手を出したキョーコは押し付けるように手渡された包みを受け取った。
 「開けてみて?」
 眉目秀麗な恋人はこれ以上ないほど優しく、あたたかく、しかしどこか強引な様子で促す。言われた通り、キョーコは小さな紙袋のシールを丁寧に剥がした。
 中には、箱が二つ。細長いのと、掌に納まるような四角いのと。まず細長い方を引き出した。
 「うーん、そっちから行くか…」
 蓮がぽそりと呟く。顔を上げると愛しくて仕方ないといった風に目元を緩ませるので、キョーコはドギマギと俯いてしまった。
 細長い箱のリボンを解くと、やはり中からはジュエリーケースが出て来た。ぱかりと開く。
 「…!」
 ほろんと虹色を帯びる、見事な真珠のネックレス。色合いも美しければ粒も大きく、また揃っていること。
 「つ、敦賀さん!」
 「真珠は冠婚葬祭に使えるだろう?一人前の女性には必須アイテムだと思って」
 「で、でもこんな高そうな…」
 うろたえるキョーコに、抱かれたい男No.1の座を一度たりとも余人に明け渡したことのないトップ俳優は伝家の宝刀たる甘やかな微笑を向ける。
 「君の価値に比べたら、何ほどでもないよ」
 「~!!?」
 この内のひと粒だけで3万円はかたいわ、とつい値踏んでいた女優は遅れて脳みそに届いた甘ゼリフに耳まで真っ赤に染め上げてぶっ飛んだ。
 「ななな、何、何言って…」
 あわあわ。口の回らなくなってしまった恋人をまるで気にせず、蓮は細い首をすいと掻き寄せてこめかみに唇をつけた。ちぱ、と小さな音がする。
 「ねえそれより、キョーコ」
 「うわははは、はい!?」
 「笑ってないで、もう一つの箱開けて欲しいな」
 「別に笑ってるわけじゃ…」
 キョーコはぶちぶち呟いたが、蓮が強引に話を進めているのか自分が故意に先へ延ばそうとしているのかわからずに綺麗に揃った眉をハの字に下げた。
 「早く」
 蓮がもう一度促す。やっぱり、強引に進められているのだろうか。
 仕方なくもう一度紙袋に手を入れ、彼女は四角い小箱を取り出した。掌に載せて蓮を窺うと、にっこりしっかり目でまたしても促される。早くしないと大魔王どころか大魔神でも目覚めてしまいそうで、キョーコは泣きそうになった。まったく、自分の誕生日だと言うのにどうしてこんな思いをしているのか。
 世の理不尽さに首を傾げ傾げ、彼女は小箱に手をかけた。予想通り、出てきたのはビロード張りのジュエリーケース。ネックレスと同じく、銀座の有名宝飾店のロゴが品よく印されている。
 手が震えた。
 「開けて?キョーコ」
 蓮の声が史上最大にやさしい。キョーコはこくりと息を飲み、何かこわいものでも入っているかと疑うようなへっぴり腰で体から離してケースを開けた。しかも、口を蓮に向けて。
 燦、と煌きが溢れこぼれた。
 「…あ」
 「ああ」
 俳優がふと笑った。キョーコの手からケースを取る。
 「そうか、こういうことだね」
 一人で納得したかと思ったら、ケースの中身を取り出しキョーコの左手を引き寄せた。薬指をするりとかすめる冷たい感触に、キョーコが思わず身を縮める。
 「俺に嵌めて欲しいって差し出してくれるってことは、OKなんだね。嬉しいな」
 にこにこ言う蓮は太陽のごとき輝きを放ち、事態について行けていない女優の身を灼く。
 「…え…あの、OKって…」
 ぼんやり呟くキョーコは、のろのろと自分の左手を見た。薬指に輝く…
 ダイヤの指輪。プラチナのリングをメインの石が中央で繋ぎ、その両脇に小さなタンザナイトとアメジストが嵌め込まれている。石が出すぎていない、シンプルだが上品で使いよいデザインになっていた。
 これは、これは、これは。いくらにぶいキョーコでも、頭の中を駆け巡る文字がある。大体、もとは乙女思考なのだ。
 蓮が言った。むしろ言い切った。
 「もちろん、プロポーズだよ。君はもうとっくに俺のものだけど、それをちゃんと形にしたい」
 「プっ……」
 「驚くようなことかな?全然予想してなかった?」
 大きな目を瞠るキョーコに、彼はわざとらしく首を傾げて見せる。
 「い、いえあの、やっぱりって言うか…その、薄々…でも!実際となると…」
 「そう、そんなものかもしれないね」
 蓮はほんのり微笑んで、恋人の指におさまる約束の指輪にキスを落とした。
 「つっ敦賀さんっ」
 「君はいつまで経っても照れ屋でかわいいけど、今日はちゃんと返事をして欲しいな。君の言葉で。もっとも、Yes以外聞きたくないけど」
 「な、なんですかそれっ。言葉ねだり取って、意味あるんですか」
 「君が言うなら何だって、俺には世界一重大だよ」
 「つるがさんん~」
 「言って、キョーコ」
 ひたりと視線が合う。追い詰められて、キョーコは短い呼吸を必死に継いだ。
 「…あ」
 蓮は待っている。ごまかしも逃げも許されないのだと不意に理解した。
 「あの…」
 キョーコはふると震え、数度口を開閉してから唾を飲み込み、また口を開閉して…
 小さな、小さな声で言った。
 「…お受けします」
 俯く寸前、蓮の腕が伸びてくるのが見えた。



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 またしてもキリリク強化週間作品~。
 今回はももにゃ様の50000打リク「ヘタレでない積極的で強引な蓮→キョ」です。さて、果たせておりますか。

 ところで、リク戴いてるお題で時系列続きそうなものがいくつかあるので、キリリクシリーズでほんとに繋げちゃおうと企んでいます。そうすると、この話が最初になるかな?
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