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ただ乞いて(3)

 「もう、こちらにお邪魔するのはよそうと思うんです」
 トップ俳優の自宅のリビング、食後のお茶を卓に置きながらキョーコが言う。蓮は湯呑から立ち上る湯気を目で追い、静かに尋ねた。
 「どうして急に?」
 「あ」
 少女の細い肩が、びくりと震える。
 「そ…れは、あの…
 「す、好きな人に迷惑をかけるのは」
 「誰」
 短く遮る蓮の声が鋭い。キョーコは男の変化についていけずに目を瞬いた。
 「好きな人って、どんな奴」
 俳優に問いを重ねられ、かすかな呼気を洩らす。どうして、そんなことを、あなたに。
 「敦賀さんには…」
 「関係ない?つれないね、最上さん。俺は先輩として、ラブミー部卒業の暁にはお祝いの花でも贈ろうかと思ったのに。いつかの不破より、よほど豪華な花束を贈ってあげるよ」
 「…!
 「つ…るがさん、そんな、意地悪なこと…」
 関連して色々思い出したらしい。複雑な表情を過らせたキョーコは、絞るように言って膝の上で拳を握った。
 「要りません、花なんて。そもそも、ラブミー部卒業だってできっこないんです。ただの片思いなんですから」
 「最上さん?」
 少し慌てたような、救われたような蓮の声には気付かず、少女は俯き肩を落とし、色のうすい声を出す。
 「とても、優しい人で。何度も助けて貰って、辛い時慰めて貰って、救い上げて貰って…いつの間にか、かけがえのない人になってました。
 「でも…その人には、他に大切な人がいるんです」
 「そんな…」
 蓮が何か言いかけた。いつの間に、と呟いたようでもあったが、キョーコはひとつかぶりを振って笑顔を作ろうとする。
 「いいんです。私、はじめから知ってました。第一、私はもう恋なんてしないできないって思い込んだまま、何も努力してません。そんなので、人の心が手に入るはずないんです」
 「最上さん」
 くしゃっとした泣き笑いに手を伸ばしかけ、蓮は宙で拳を作る。それを自分の顔の前に引き戻し、じっと凝視した。
 「…ないのに」
 キョーコの声の調子が変わった。高低も抑揚もバラバラになり、激しい息音が合間に混じる。
 「私は勝手です。それでも、と思ってしまう。ぬくもりが欲しいって。これ以上近くへ行けないことが、触れ合えないことが淋しくて、哀しくてたまらないんです。こんな…こんな気持ちで敦賀さんのお傍になんて、いられません…っ!!」
 顔を覆って身を震わせる女優の声の不確かさにこめられた激情を思い、蓮はしんと表情を沈めて呟いた。
 「淋しいの?」
 え、とキョーコが顔を上げた。
 「ぬくもりが欲しいんだね」
 「つる…が、さ…ん?」
 「だったら、俺を利用すればいい」
 「!?」
 何を言い出すのかと男を見返す大きな目から、抑え切れなかった涙がほろりと震え落ちる。それを指先で拭い取り、俳優は自嘲するように笑った。
 「俺もね、同じなんだ。ずっと好きな人がいる…でも全然俺の手に落ちてくれなくて、ぐずぐずしてるうちにとうとう他の男に彼女の気持ちを持って行かれてしまった」
 「そんな…敦賀さんが」
 「俺も淋しいんだ」
 蓮は繰り返す。少女の瞳を見つめ、哀しげに、憂わしげに、誘惑の言葉を。
 「だから…ああごめん、利用は言葉が悪いね。助け合いって言ったらいいかな。君は俺をその男だと思って、俺は君を彼女だと思って…ぬくもりを与え合う夜は、少しの慰めにもならない?」
 「なっ…」
 キョーコはかあっと頬を紅潮させ、叩きつけるように叫んだ。
 「だっ、駄目ですそんなの、不実です!」
 蓮の眼差しが昏くなる。
 「どうして?俺たちは二人とも片思いしてるだけだ。しかも、ほぼ失恋確定の。誰にも、何の責任も負ってないよ」
 「だからってっ!
 「そ、それにいきなりそんなこと言われても…私、経験がなくて…」
 「なおさら欲しくなるよ」
 「え?」
 小声で呟いた蓮の言葉を、ぐるぐるの思考を抱えていた少女は聞き逃した。尋ね直しても、男は何でもないと首を振る。
 「初めてなら尚更、経験のある男の方がいいんじゃないかなって。俺が、ちゃんと教えてあげるよ。そしたら、また今後役に立つかもしれないし」
 「そんな…でも…」
 「ねえ…最上さん」
 長身の俳優の長い指が、明るい色の髪を梳き撫でる。キョーコがぴしりと固まったまま動かなくなった。
 「やさしくし合おう?君は俺を慰めて…俺が君を温めるから」
 「で、でも…」
 少女は魅入られたように俳優の精緻な造作を見つめながら、次第に語尾を弱める。
 「私……」
 震えるソプラノ。揺れる瞳。リズムの狂った呼吸を継ぎ、キョーコはそっと自分の胸元に手を当てた。そこに一滴ずつ、何か溜まって行く気がする。もうすぐ溜まりきって、心臓に流れ込んでしまう。
 自分が、この人を、慰める。慰められる…?
 でも。
 でもそんなこと。
 「わた、し」
 かぶりを振ろうとした。振ろうとしたのだ。
 しかし、男は計ったようなタイミングで押し被せて来る。
 「       どうする?」
 ああ、とキョーコは目を伏せた。もう駄目だ、と思った。この人に逆らえない。神の寵児だと思った人は、実は悪魔だったのかもしれない。
 ねだるような      ひどく頼りない微笑に誘われ、彼女は頷いてしまった。
 「お願い、します…」



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 と、こんな感じで。この辺はリクの「蓮はキョに好きな男がいると勘違い、キョも蓮に好きな女がいると勘違い。でもでも、諦めきれなくて最低人間を演じ一晩だけ結ばれる二人」のあたりで書いてみました。最低人間つかヘタレですが(笑)。
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