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ただ乞いて(5)

 眠りの底で、やわらかなぬくもりをずっと抱きしめていた。それはひどく安らかな手触りで、充足とか安逸とか呼ぶのにふさわしく、しかし同時に耐えがたい焦燥を煽り立てるものでもあるような気がした。
 「…?」
 はかり、と目を開き、蓮はまず空っぽの自分の手を見遣った。それからうす明るい寝室の中を見回すが、人も何かの痕跡も発見することはできなかった。
 まさか夢だったのだろうかと混乱しかけた時、枕に残る香りに気付く。すっきりと清潔で、なのに甘いキョーコの髪の香り。蓮はそれを胸一杯に吸い込んで目を閉じた。
 夢から覚めれば、手に入れた、とはもう思えなかった。
 では、これで終わりなのだろうか。すべて?
 「…いいや」
 むくりと身を起こしながら、彼は低く呟いた。そうはさせない。
 行為の間中、最後の瞬間でさえキョーコは、他の誰でもなく彼の名を呼んだではないか。『つるがさん…』滴るような声が今も耳の底に残っている。あれは、彼女の中に彼が刻まれたあかしではなかったか?
 そうであるならば、今後の努力次第でもっと強くして行くこともできるのではないか。そもそも、彼女は嫌いな男とあんなことができる娘ではないのだから。
 どこかで逃げ出すのだろう、と恐れながらぐいぐい事を進める蓮に、キョーコは怯えながら泣きながら、それでも必死について来てくれた。許してくれた。それが嬉しくて、愛しくて…
 彼女の用意したタオルの上に散った破瓜の血を目にして、ついに最後の堰も切れた。
 ひどいことをしたと思う。めちゃくちゃに求めて、貪って、何度も何度も追い詰めて、毟り取って、挙げ句注ぎ込んだ。
 「…!」
 ふと重大な事実に気付き、蓮はひゅっと息を停めた。
 そう言えば…夢中になりすぎて、最後の方は避妊具をつけることも忘れていた…
 狼狽が浮かんだ。
 失策だと思う傍ら、もしそうなるならそれでもいいと思う自分がいる。
 俳優はふるふると頭を振り、男の勝手を退けようとした。
 ともかく、まずキョーコに会わねばならない。会って昨夜の暴走を謝り、君が欲しいのだと今度こそ一切の疑問の余地なく伝え、だから俺に可能性を与えて欲しいと真摯に乞うのだ。
 どうやら証拠のタオルまできっちり回収していったつれない少女の面影を脳裏に描き、蓮はそっと呟いた。
 「絶対、つかまえる」



 しかし。
 その後何日経っても、蓮はキョーコと話すどころか接触すらできずにいた。
 電話にもメールにも返信はなく、有能なマネージャーに協力を仰いでキョーコのスケジュールに合わせて会いに行っても影一つ見ることができない。明確な意思のもとに避けられている、と思うしかなかった。まずいことに、現在は共演や同じ現場になるような仕事がない。
 蓮は自問する。
 あの子は後悔しているのだろうか。自分に身を任せた一夜は、彼女にとって汚点となってしまったのか?
 そう、なのかもしれない。
 思うだに胸の冷える心地がする。けれど。
 そう、だとしても。
 乞い求める気持ちが已むことはない。心はすでに定まっている。
 トップ俳優は多忙を極める生活の中、わずかな時間を拾い上げてはキョーコとの接触を計ったが…
 ままならぬうちに日々ばかりが無情に過ぎて行く。
 そして、二ヶ月ほども経った頃。
 やはり空振ったラブミー部々室を出て、蓮は一人で頭を冷やそうと非常階段に出る扉を開け、そこで、足を止めた。



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 ここからは最後まで一般作になります。ハッピーエンド目指して行きますよ~!
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