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天に斉しき<鏖(みなごろし)編-BAD END->

<あてんしょん>
 今回は、ブラックです。
 ちと後味が悪いと思われますので、暗い話が駄目な方はお読みにならない方がよろしいかと存じます。
 大丈夫だぜ任せな!と言うめげない勇者様のみ、続きを開いて下さいまし。





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 「お師匠様ッ…!!」
 切迫した叫び声が大気を引き裂いた。立ち枯れた疎林全体がびりびりと震える。
 ぎらつく視線の先、白ちゃけた風景の中で、そこだけ真紅の花が咲いたように鮮血がしぶく。
 ゆっくりと。
 ひどくゆっくりと傾ぐ華奢な体。
 高僧の肉を喰らおうと襲って来た妖怪の爪にかかり、玄キョー三蔵は声もなくのけぞり倒れて行く。
 それへ、両側から毛むくじゃらの太い腕が伸ばされた。左右の腕を別々の妖怪に取られ、吊り下げられた形で三蔵の頭はがくんと前に垂れる。
 頭上から冠が転がり落ち、石の上に落ちたか高い音で啼いた…



 蓮悟空は頭が真っ白になるのを感じた。
 失策だ。
 数を揃えた襲撃を、それでも殺すなという師命を守って捌きあぐねているうち、気がついたら弟弟子たち共々三蔵から引き離されていた。
 なお悪いことに、小竜の化身たる白馬が尋常ならざる騒動に脅えて浮き足立ち、三蔵を振り落として逃げてしまった。そうなれば、高僧と言っても三蔵は身を守るすべも持たない非力な人間に他ならない。
 「お師匠様ッ」
 悟空は身も世もなく叫び、師に駆け寄ろうとする。追いすがり立ち塞がろうとする敵を、一瞥すら与えぬまま叩き伏せて。手加減する余裕などあろうはずもない。あるいは地に打ち付けられて血を吐き、手足をおかしな角度に曲げ、ビシャリと脳漿を撒く。嵐に喩えることすら不足に思われる、凄惨な光景が現出していた。
 「あ、兄貴」
 「悟空兄貴…」
 社八戒と沙悟奏の声も耳に入らず、悟空は三蔵を捕えたまま茫然と自分を凝視している二体の妖怪のもとへ殺到した。手を伸ばす。
 三蔵の体を奪い返し、同時に如意棒で無造作に宙をひと薙ぎする。
 打ち払われ吹っ飛んだ妖怪たちがぴくぴくと痙攣しじきに動かなくなるのを見遣ることもなく、さっと屈んで師を横たわらせ傷を検める。
 瞳孔が収縮した。絶望に。
 深すぎる。この傷では、助からない      
 「お師…玄キョー…ッ!!」
 喉の奥から絞り出す呼びかけに、青ざめたまぶたが震えた。薄く開く。
 「悟…空…」
 かすれた細い声。
 「!!
 「喋らないで、いま手当てを…」
 焦点の合いきらない瞳が彼を見返し、周囲をゆるゆると眺める。
 「貴方は、また」
 溜め息に似た呟きに非難を聞き取り、石猿は苛と毛を逆立てた。
 そうとも、殺した。貴方を手にかけた奴らを。それがどうしたと言うのだ。そんなことを言っている場合か。
 「お叱りも罰も受けます!でも今は」
 悟空は隠しから布を取り出し、三蔵の傷に当てる。血が少しも止まらない。焦る耳元に、かすかな吐息が触れる。
 「…は…」
 「       え」
 私は、
 貴方だけが、
 心配です…
 ほとんど声にならない言葉を唇の動きで伝えて、三蔵は深く息をついた。
 最後の息を。
 「玄…キョー…?」
 悟空は震える手を青ざめた頬に伸ばした。
 あたたかい。
 まだあたたかいのに。
 この、何かが抜け落ちてしまった硬質な感じは何だろう。
 思わず、力いっぱい抱き締めていた。肺の空気が押し出されたのか、三蔵の唇がはくりと動く。たった一度だけ。
 だから最後の言葉は変わらず。
 私は、
 貴方だけが、
 心配です…
 いっそ残酷なその言葉を、彼は噛み締める。
 ならば、どうして。俺を置いて。
 貴方は、俺を大いなる救いへと導くはずの人なのに。
 そのやさしい手の摂受(しょうじゅ)を信じて、従って来たのに。
 すべて無駄になってしまった。台無しになってしまった。
 貴方がくれた世界を、貴方が奪う        
 貴方がいない。
 貴方のいない、世界。
 それに、意味が、あるのか…?



 ずん、と空気が沈んだ。
 師と兄弟子に敵を近づけまいと奮闘していた八戒と悟奏までもが膚を粟立たせる。
 大気に、虚無にほど近い瞋恚が満ちる。
 少しずつ冷えて行く三蔵の体をそっと、丁寧に横たえ、悟空はのろのろ立ち上がった。
 絶対の静謐に包まれる愛しい人を見下ろし、目を伏せ、拳を握る。
 爪が、ぎちぎちと伸び始めた。
 髪が禍々しくざわめく。
 引き歪んだ口元から、黄色い牙が覗く。
 瞳が、赤く…細く収縮する。

 世界に、災厄が生まれた。





 
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