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妙法蓮華(7)

 都内にある、プロ御用達の貸しスタジオ。
 「早く早く、急いで」
 「何だよ、まだ時間あるだろ」
 覚えのある声を聞きつけ、キョーコはドアの前でぴたりと立ち止まった。彼女はビー・グールとのユニット練習のために呼び出されて来たのだが…
 「時間にうるさい方なのよ…大御所をお待たせするわけに行かないでしょ!?」
 「ったく、なんで俺がンなジャンル違いの…」
 角を曲がって現れた一組の男女が、彼女に気づいてやはり足を止める。
 「…キョーコ」
 男の方が、目を瞠って呟いた。
 「ショータロー…あんたも今日、ここだったの!?おおいやだ、なんてゲンが悪いのかしら!ただでさえ嫌な仕事だって言うのに、あんたの顔まで見るなんて!
 「あ、祥子さんこんにちは、ご無沙汰してます」
 「え、あ、こんにちはキョーコちゃん。本当、久しぶりね」
 「お疲れ様です、いつもこのバカの世話なんて大変ですよね!」
 「…お前」
 ばしばし言い放つキョーコに、尚が何か言おうとした。そこへキョーコの前のドアが室内側に吸い込まれ、
 「何の騒ぎだ」
 レイノが顔を出す。
 「……」
 尚が低く舌打ちした。不快を露わにする顔に冷ややかに笑みかけ、レイノはすいとキョーコの背に触れた。
 「始めるぞ、早く来い」
 「え、ちょ」
 「おいコラ、挨拶もなしか!!業界人としてどうなんだ!?」
 「ちょ、ちょっと尚!」
 尚はいきり立ち、マネージャーの制止も聞かずキョーコの背に置かれた骨っぽい手をつかみ上げる。ビー・グールのヴォーカリストは一瞬ぴりと緊張を走らせたが、じきに冷えた瞳のまま喉だけで笑った。
 「それは失礼。こうか…?
 『やあ久しぶりだね、不破くん。元気そうで何よりだ』
 「不破くんだあ…!?気色悪ぃな、テメエそりゃ誰の口真似だ。全っ然似合わねえ!」
 「さあな。ただ、意外に気の合うところがあったかと思って」
 「はあ!?ふざけんな、誰がテメエと」
 「でかいお守りライオンが苦手だろう?」
 「…!?」
 「まあそんな話はどうでもいい。スペシャルユニットの練習があるんでね…」
 ちょっとやたら触んないでよ、と文句を言うキョーコの声は綺麗に無視して、レイノは室内に引っ込もうとする。尚が食い下がった。
 「待ちやがれ、まだ話は終わってねえぞ」
 「悪いが、お前に構っている時間はないな。こちらはお前のように完成された大御所と組むわけじゃない、まだまだ研鑽する必要がある。…キョーコが俺の作った歌を歌いこなせるようになるまでにはな」
 「…!?お前が?テメエんトコは、いつもちんちくりんのかたっぽ…キーボードか。アイツが曲書いてんだろうが」
 「ちんちくりんとは何だー!!」
 突然、憤懣やる方ないといった叫び声が響いた。当のキーボード担当が室内から飛び出してくる。
 「黙って聞いてれば、この不破ボンは!レイノくんに絡むんじゃない、チンピラめっ」
 「んだあ!?どっちが絡んでるってんだふざけんな。
 「だー、テメエなんぞどうでもいい!…くそ!おい犬野郎」
 悪し様に呼ばれ、レイノはキーボードとキョーコをスタジオ内に押し込みながら視線だけ尚に向けた。
 「見学させろ!お前が書いたとか言う変態ソングを、俺に聞かせてみやがれ。ヘタなもん聞かせてみろ、ガンガンツッコミ入れてやる!!」
 「ちょっと尚!」
 「いいだろ祥子さん、ちょっとくらい。まだ時間あんだから」
 「でも…」
 「俺は構わんが」
 「ほら、アイツだってそう言って………え?」
 「俺がキョーコのために書いた曲を聴きたいんだろう?構わんぞ。聞いて行けばいい、お前にはそれしかできないんだからな」
 「なっ…」
 「ちょ、ちょっとアンタ、何言ってんのよ!!なんでバカショーの前で歌なんか!」
 室内からキョーコの抗議が聞こえる。レイノが低く笑った。尚を見て。
 「心配するな、ジャンル違いの大御所と組まされる不破よりも、お前の方がよほど有利だ。まあそれも、俺がお前のためだけに書いた曲あってのことだがな…」
 言われて尚は、本日の待ち合わせ相手の名を思い起こした。坂東ひろし。芸能生活38年、演歌界の重鎮だ。こう大物が相手では、さすがの尚もそちらのジャンルに合わせる他はない。
 痛いところを突かれ、トップセールスを走り続けるミュージシャンはむっつり黙り込んだ。
 ややあって、低い喉声で言う。
 「…上等だ…
 「とっくり聞いてってやらあ、俺を賛嘆させて見せやがれ!!はん、どうせキョーコだからな!無理に決まってんだ、精々笑わせて貰うぜ!!」
 「なんですってええ、このバカショー!!!」
 キョーコの怒声に、レイノはスタジオのドアを大きく開けて腹から叫ぶ女優の声を通した。素晴らしい声量が壁でかんと跳ね返って反響を加え、尚は音に襲い掛かられたような感覚に立ち竦む。
 「!?」
 「やってやろうじゃないの。あとで吠え面かくんじゃないわよ!」
 びしい。厳しく指を突きつけるキョーコと不快と狼狽の入り混じるまま立ち尽くす尚を見比べ、レイノはするりと腕を組み、声もなく笑った。
 


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 さすが幼馴染、発想が近い(笑)。尚にまで変態ソング言われてしまいましたよレイノ君。
 尚も妄想癖じゃキョーコに劣らないですしね~。
 てか、またこんな話が伸びるネタ突っ込んですいません春葵様。
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