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たいせつでたいせつで(32)

 蹴り転がされるように、路地へ押し込まれた。
 相手は4人。キョーコを背負ったままでは闘うも退くもままならない。クオンはまず、父のマネージャーに心の中で謝りながら花束を地面に捨てた。
 不穏な空気を感じ取ったのか、背中でもぞと少女が身じろぐ。それを軽く揺すり、彼は取り囲む4つの顔、とりわけトミーから目を離さずに呼びかける。
 「キョーコちゃん。
 「ごめん、起きて。降ろすから」
 「ん…コーン…?」
 小さく呻くキョーコをそろそろと屈んで背中から降りさせた。ごしごし目をこする少女は、緊迫した状況を見るとひくりと固まる。
 「コ、コーン…この人たち、だれ…」
 クオンは安心させるようにまるい頬を撫でながら、しっかりとかつての遊び仲間たちに視線を据えた。
 射るような眼光に、さしもの不良少年たちも鼻白む。それへ彼は、低い声で言った。
 「お前たちの目的は、俺だろう。付き合ってやるから、この子は見逃せ」
 「へ~え?ずいぶん大事にしてんじゃねえか、いっつも誰にもキョーミございませんってカオしてたてめえがよ。一体そのガキが何だってんだ?」
 「お前には関係ない」
 小馬鹿にするように肩を揺らすトミーに、クオンはぴしりと決め付けた。
 「いい態度だなあ、お坊ちゃま。
 「…ふん、まあいいさ。確かにそんなチビガキにゃ用はねえ。とっととどこでも行かせろよ」
 不良少年のリーダーが手を振ると、一人分の道が開けられる。
 「キョーコちゃん、行って。俺は大丈夫だから」
 「コーン、でも」
 「君がいる方が動きにくいんだ。聞き分けて」
 「…!」
 キョーコは半べそで路地の出口を見る。クオンはその背中をそっと押して立ち上がった。
 振り返り振り返り、震えながら歩いて行くキョーコを見送るクオンの両脇に、それぞれ一人ずつが取り付き、トミーが正面に立つ。それでもクオンの視線は揺るがない。息さえ詰め、小さな背中を見送っている。
 キョーコが路地を出るという瞬間になって、彼はやっと肩を緩め…
 同時に最後の一人が、キョーコの手をつかみ上げた。
 「きゃ…」
 悲鳴を上げようとする口を塞ぎ、盾にするようにクオンに見せ付ける。
 「バカだなーお坊ちゃんは。ホントに逃がすと思ったのか?」
 苦しげにもがく少女から目を離せず、クオンは叫ぶ。
 「お前たち、女の子にそんな…!」
 「しょうがねえだろ、人呼ばれたりしちゃ厄介だからなあ。まあ、お前が暫くイイコにしてりゃ、このガキまで痛い目見るこたねえって」
 「……」
 憎々しげに下から見上げてくるトミーに、クオンは目を細め、
 笑った。冷たく、禍々しく。
 「あの子に毛ほどの傷でもつけてみろ。…殺すぞ?」
 「っ…」
 じり、とトミーが一歩下がった。直後、それを恥じるように勢いよく喚き出す。
 「な…に言ってやがるこの野郎、状況見てもの言えっつんだよ!大体てめえ、いいのかよそのガキの前で本性出して?『キョーコチャ~ン』とか甘ったるい声出してやがった癖によ。何なら、優しいオニイチャンが今まで何してたか全部ガキに教えてやってもいいんだぜ!」
 呼び名の由来でもある早口の口上を繰り広げる“トミーガン”に、クオンはただ黙ってうすら冷めた視線を当てた。
 「…くそ、スカしやがって!!」
 激昂する不良少年が、クオンの腹に拳を叩き込んだ。
 「!」
 身を折るクオンは両側から引き起こされ、同じ場所に膝を突き込まれる。ぐう、と胃液が上がった。そこへ横顔を張られ、酸っぱい血を吐き飛ばす。
 「てめえはなあ、最初っから気に入らなかったんだよ」
 トミーがクオンの前髪をつかみ上げた。ぎらぎらと粘い口調で囁く。
 「いっつも俺らから一歩離れたトコで涼しい顔して、その癖おいしいトコだけ掻っ攫ってきやがる。お坊ちゃまは、俺らなんぞバカにしてんだよなあ?」
 「…て…」
 「ああ?」
 クオンの呟き声に不良少年は苦痛に歪んでさえ損なわれない佳貌を覗き込む。しかし碧い瞳は彼を見てはおらず、ただ、涙を振りこぼしながら必死に自分に手を伸ばそうとしている囚われの少女だけに向けられていた。
 「目を瞑ってて、キョーコちゃん…すぐ済む、から…」
 かすれた声で言い、彼は微笑んでさえ見せる。
 「野郎…!」
 トミーの目に、血の色が入った。周囲を見回し、すぐ脇に這う錆びた鉄パイプを壁から引き剥がす。その動きを目で追っていた少女が、びくりと震えた。
 クオンはこまかくかぶりを振り出すキョーコに、何か詰まっているような喉から必死に言葉を絞る。
 「キョーコちゃん、見ないで。目を…」
 「ガキ気にしてる場合かよ、クオン?」
 トミーが、ことさら緩慢に凶器を振り上げた。
 「んん!んーっ!!」
 キョーコのもがく声。めちゃくちゃに暴れ、自分を捕らえている少年の手を引っかき、少女はまろび出てくる。両手を必死に前に伸ばし、クオンだけを見つめて。
 「来ちゃダメだキョーコちゃんっ…!!」



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 なんかもうすいません。

 トミーガン→トンプソンサブマシンガン。禁酒法時代のギャングとかFBIとかが多用。
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