S☆HOPPING

 「どうして?」
 いきなり問われて、鏡の前で肌の手入れをしていたキョーコはベッドに座る夫を見返った。
 「何がですか?敦賀さん。…あ。
 「結婚しても、呼び方が全然直らないこと、ですか…?」
 「それもあるけど、今はそうじゃなくて。
 「この前作った家族カードで、君の部屋を好きに調えればいいって言ったじゃないか。なのに物が増えてないから」
 「え、買ってますよ」
 「食材とか生活雑貨とか、一番大きなもので脚立とか?」
 「だって収納棚も天袋も私には雲の上なんです」
 「要するに、必需品しか買ってないわけだ。俺はもっと、君が贅沢品みたいなものを楽しんでくれればいいと思うのにな」
 「えー…」
 ちょっとふてくされたように言う蓮にぽてぽて歩み寄り、キョーコはその隣に腰を下ろした。
 「だってあれ、敦賀さんの口座からの引き落としなんですもん。申し訳なくて無駄遣いなんてできません。それに、いずれ渡米するなら家具はできるだけ少なくしておかないと持って行くのも処分するのも大変ですし…
 「何よりも、私は、すっごい贅沢してます」
 すかさず抱き寄せる俳優の腕の中で、新婚1ケ月の新妻は頬を染めながら笑う。
 「どこが」
 耳元に落ちて来た唇が溜め息混じりに零せば、彼女は広い胸に身をすり寄せて目を閉じた。
 「だって、敦賀蓮の心を独り占めなんて、いくらお金積んだって不可能じゃないですか」



 「敦賀さん、そろそろ起きませんか?」
 寝室を覗いたキョーコは携帯電話を手にしている姿を見て慌てて顔を引っ込めようとする。
 「ごめんなさい、お電話中でしたか」
 「いや、もう済んだよ。ちょっと父さんに用があってね」
 「先…お義父さんに?」
 「うん、帰ったら連絡して欲しいって伝言を残しておいたんだけど、昨夜は遅かったみたいだね。向こうは今、夜中の1時頃だし」
 「お義父さんもお忙しいですよね…お体こわされたりしないといいんですけど」
 「大丈夫だよ、あの人は食べれば回復するから」
 言われてキョーコがちょっと笑う。蓮はそれを手招いて、寄って来たところを胸に引き込んだ。
 「ひゃ!敦賀さんっ」
 「ちなみに俺は、キョーコで回復するから」
 「ちょっどこ触ってるんですか!ダ、ダメです。今日は久しぶりに一緒のオフだから、デートしようって言ったの敦賀さんですよ!?」
 「これも家庭内デート」
 胸元でもぐもぐ喋られて、若奥様はせめてもの腹いせに夫の肩を一つ二つ抓ってやった。



 「午後になっちゃったじゃないですか…」
 ぶいぶい言われて、苦笑した蓮は運転席から伸び上がって血の色を残す耳もとに唇を寄せた。
 「でも、君が歩けなくならないように手加減はしたよ」
 「!?バッ…」
 「ほら奥さん、ちゃんとシートベルトして」
 「もう…どこ行くんですか?」
 「そうだね…」
 蓮はまだ顔の赤いキョーコの髪をぽんと撫でる。
 「今や堂々と二人で歩けるようになったことだし、ウインドウショッピングなんてどうかな」
 「あ、いいですね!大好きです」
 「だと思った」
 嬉しそうに手を打ち合わせる妻に甘やかな微笑を向け、夫は静かに車を発進させた。
 この日。弾むような足取りで楽しげに店々を回る敦賀夫妻の姿が、多数の人に微笑ましく目撃された。
 夫はコンパスの差にも拘らず目を輝かせて歩き回る妻に遅れがちにつき従い、なぜか店を出る度に妙にこっそりと財布をポケットに戻していたのだとか。




 そして米国、某アクションスター邸。
 朝食の席で、既にあまり新しくない方の夫が美貌の奥様に言う。
 「昨夜、帰り次第連絡をくれと伝言があってね。クオンにTELしたんだが」
 「まああなた、ずるいわ自分だけ」
 「ごめんよジュリ、君はもう寝んでいたし」
 可能な限りは早寝の習慣を保つ“生きた宝石”は少し膨れながらも話の続きを催促する。
 「仕方ないわね…それで、クオンの用件は何だったの?」
 「ああ。何でも、荷物を送るから二人がこちらへ越して来るまで預かって欲しいと言ってね。キョーコへの贈り物だが、あとでびっくりさせたいんだそうだ」
 「まああの子ったら、お茶目ね」
 陽を吸った金剛石にも喩えられる微笑を惜しげもなく振りこぼし、ジュリエナは楽しそうに愛しそうに呟く。そこでふと、何か思いついた顔で前に身を乗り出した。
 「ねえあなた、じゃあ…」
 「うん?」
 「私たちからも、キョーコに贈り物をしたいわ。結婚の贈り物はもう済んでしまったけど…娘のハリウッド進出だって、充分お祝いに値するわよね」
 「いいね、何を贈ろう?」
 にこやかに頷く夫に、ジュリエナはそれはそれは晴れやかな微笑を見せる。
 「家なんてどうかしら」
 アクションスターが、大きく手を拡げた。
 「おおジュリ、それはいい考えだ!」




 さて。
 まるで金銭感覚の違うセレブ一家と終生の付き合いを余儀なくされた、庶民娘の運命やいかに?


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 タイトルは「ショッピング」もしくは「スペシャル☆ホッピング」どちらでも。
 ぽと吉様のみなデリク③として書かせて戴きました。毎回シチュいじってるんですけども(>_<)
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