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たいせつでたいせつで(35)

 (救急車に担ぎ込まれたところまでは覚えてるんだけど…)
 と考えながら、クオンはゆっくり咀嚼している。どうやらその後、安心して意識を手放してしまったのか。
 そこへ慌しい足音が聞こえ、
 「クオン!」
 急ぎ足で両親が入って来た。クオンは瞬間、ちょっと照れた顔になる。以前とは逆に、キョーコに食事を食べさせてもらっているところを、両親に見られるとは。しかも、少女は手が届かないので膝でベッドの上に乗り上げ、彼にのしかかるように一生懸命伸び上がっているのだ。
 「まあ」
 母が微笑んだ。
 「元気そうね、安心したわ。それに…本当にキョーコも、元に戻ったのね!よかった…!」
 「…母さん、父さんも」
 急いで口に入れられたものを飲み込む息子に両親は顔を見合わせて微笑み合い、歩調を緩めて病室に入って来た。キョーコは振り返った不自然な体勢のまま、穴が開きそうなほどジュリエナを見つめている。緩んだ手からスプーンが落ち、皿の上でかしゃんと音を立てた。
 「よ…妖精女王様……」
 陶然と呟くので、クオンは思わず噴き出してしまった。我に返り顔を赤くするキョーコの手から朝食の皿を取ってベッドテーブルに置く。やはり笑いながら近寄ったクーが、ひょいと少女を抱き上げた。
 「ありがとう、キョーコ。クオンが世話になるね」
 「本当に。キョーコがいれば、クオンはすぐよくなるわ。ありがとうキョーコ、それにお帰りなさい…本当に…」
 「え?えと、あの、そんな。わたし、大したことできません」
 しみじみ言うジュリエナに、キョーコは不得要領な顔でカチコチと口を動かす。クーに抱き上げられて一層至近距離で“生きた宝石”の美貌を見ることになり、頭上から湯気でも噴き上げそうに緊張している。
 ジュリエナがにっこり笑った。
 「あら、そんなことないわ。クオンには、いつでもキョーコがお薬なのよ。ねえクオン?」
 悪戯っぽく視線を投げられて少年が苦笑する。
 「確かにね…曲がった性根にまで効く特効薬だ」
 ふふ、と母が笑い、キョーコの髪を優しく撫でた。キョーコがびっくり顔で叫ぶ。
 「あっ!あの、は、初めまして!!ごめんなさい、ごあいさつ遅れました!」
 「ああ…」
 聞いてジュリエナは少し顔を曇らせる。夫に一歩近付き、キョーコの頭をきゅうと抱き寄せた。
 「ふわ!?」
 「そうね、貴方には私は初対面ということになるのね。寂しいわ…」
 「あ」
 ジュリエナの言葉を聞き、少女は何か思い出した顔をする。
 「そ、そう言えば、コ…クオン、さんが、昨日のお洋服のこと…」
 「?」
 「キョーコが昨日着ていたのは、君がプレゼントした服だったんだ。あれは、とてもキョーコに似合うからね」
 「まあ、そうなの?嬉しいわ」
 「父さん、キョーコちゃん返してよ」
 置いてきぼりのケガ人が痺れを切らした。
 「断る。いいじゃないか、お前は昨夜からずっとキョーコを独り占めしてたんだぞ。私たちだってキョーコと話させろ」
 「独り占めって…そうなの?いやでも、俺には覚えがないし」
 「どっちにしても、お前は入院中嫌というほどキョーコと話せる。だが、私たちはそうじゃないんだ」
 「嫌なんて言うわけないだろ。
 「って言うか、入院なんてしてたら映画が…」
 「ああ…」
 困惑の声を上げる父に、クオンは何かの予感を抱えて碧い瞳を向ける。
 「映画は…な」
 「降板?」
 父の言葉を先取りした。医者の話を聞いた時から、半分方覚悟はしていた。
 「ああ…」
 不承不承頷く父の腕の中で、キョーコがはっと凍りつく。
 「コーンっ」
 たちまち涙をあふれさせる少女を、クーはそっと息子の傍に下ろした。キョーコは一瞬抱きつこうとする素振りを見せたが、少年のギプス姿に思い留まり、背中を丸めて項垂れる。
 「ご、ごめんなさいっ…私、コーンのおしごとまで邪魔しちゃった…」
 「違うったら」
 クオンが苦笑した。一瞬投げた視線に、クーは妻を促して病室を出て行く。僅かに緩んだ口元から洩れる小さな呟き。『一人前に男の顔をするじゃないか…』
 父の言葉は聞き取れなかったが、気を利かせてくれたことに感謝しながら、少年は少女にやわらかく話しかけた。
 「キョーコちゃん、泣かないで。言っただろう、昨夜のは俺のせいで、君が助けてくれたんだって」
 「でも」
 「んー…
 「まだ泣くなら、キスするよ?撮影所で、俺にキスされるのイヤじゃないって言ったよね」
 「ふあ!?」
 キョーコが飛びあがった。
 「き、聞いてたの!!?よそ向いてたのにっ。そ、それに、イヤじゃないってはっきり言ったわけじゃ…」
 「じゃあ、イヤ?」
 「え」
 じっと瞳を覗き込まれて、進退窮まったとばかり固まる。
 だらだらと汗をかくまるい頬に、クオンはそっと手を伸ばした…

 
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 たまにゃ平和な引きはいかがでしょう(笑)。
 つかクオン、おみゃーさん攻め攻め過ぎーへんか…
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