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妙法蓮華(10)

 「大体、アンタたちはまだ出番ずっと後でしょ、なんでこんな朝一番に来てんのよ!?アンタが爽やかにオープニングに出てるところなんて想像もできないんだけど!」
 どきっぱり言い切るキョーコに、レイノは表情も変えずに
 「当然だ、そんなものに出るか」
 やっぱりきっぱり言い切った。
 「じゃあなんで…」
 「お前が、本番前にインタビューを受けると言ってたからな」
 「は?」
 キョーコは意味が取れずに眉根を寄せる。確かに、畑違いのタレントたちに心境や意気込みを尋ねようという、少しばかり趣味の悪い取材を彼女も申し込まれている。しかし、それがどうしたと言うのだ。
 キョーコの心を読んだかのように、レイノがあっさり言った。
 「俺も同席する」
 「はあ!?何言ってんのアンタ。予定外の人なんていたら、相手方にだって迷惑よ」
 「ユニットの一方なら、そうとも限らんだろう。むしろ喜ばれるんじゃないのか」
 嘯くヴォーカリストに、番組の性質から言ってないとも言えないと思ったキョーコは黙り込んでしまう。そこへ…
 「あ、いたいた。京子ちゃーん」
 弾んだ声がかかって振り返ると、客席の後方に機材を抱えた小グループの中央で、マイクを持った人物がにこにこと手を振っていた。
 「光さん!?」
 これがよく見れば知り人、後ろの二人の名も勿論知っている。
 「おはよー。そっちはビー・グールのレイノ君やね。おはようございます」
 「おはようございます、光さん慎一さん雄生さん」
 「…ああ」
 嬉しそうにてけてけキョーコに歩み寄って来るタレントに、レイノはじろりと胡乱げな目を向ける。とたん、キョーコに叱り飛ばされた。
 「ちょっとアンタ、先輩に向かってその返事は何よ!挨拶もまともにできないの!!?」
 「きょ、京子ちゃん、いいんだよ。彼には彼のキャラがあるんだろうし」
 「でも光さん」
 「構へんって。
 「ところでな京子ちゃん、俺らクジでゲリラインタビュアー当たってん。今日はあっちゃこっちゃ出没するさかい、よろしゅうにな」
 「そうなんですか!?こちらこそよろしくお願いします」
 ぺこりと頭を下げるキョーコに目を細め、光はマイクを握りなおす。
 「ほな早速、京子ちゃんにインタビューさしてもらおかな。これ録画して、合間合間に流すそうやで」
 「はい。光さんがインタビュアーなんて、話しやすくて嬉しいです!」
 「いやあ」
 ブリッジロックのリーダーが照れ笑う。その視線を遮るように、黒い塊が進み出た。
 「俺も同席させてもらう」
 と右手を差し出すのを握手を求めているらしいと気付き、光は一瞬不思議そうな顔をする。が反射か天晴れプロ根性か、自分も笑顔で右手を出した。
 するとレイノはその手を握るでもなく軽く腕に触れ、両目を少し細めて呟く。
 「…安全パイか」
 「は?」
 「何でもない」
 それきりビジュアル系バンドのヴォーカルは手を引っ込め黙り込んでしまった。
 インタビュアーは気を取り直して後ろの二人に合図し、取材開始を告げる。
 「はい、富士TV8時間ソングスペシャル『歌は人類を癒す』突撃インタビューbyブリッジロック!まずは今日の目玉ユニットの一つ、“ビー・グールfeat.京子”の京子ちゃんとレイノ君にお話を伺ってみましょう!よろしく、二人とも」
 「こちらこそ」
 「ああ」
 明るい声を張り上げる光に、キョーコがにっこり、レイノはぶっすり応えた。
 「ところで京子ちゃん、今日はいつもとえらい雰囲気ちごてんけど…いや、カッコええなあ。それ、今日の歌に合わせてってこと?」
 ショート&タイトなカットソーにミニスカート、ベルトをクロスアップさせたエンジニアブーツにレースアップのショートジャケット。メイクも相俟って、確かにいつものキョーコとは随分違った印象を与える。
 キョーコは僅かに頬を染めて頷いた。
 「あ、はい。ある方にアドバイスを戴いたんです。事務所の先輩なんですけど」
 レイノの表情が僅かに動くが誰にも気付かれず、話はそのまま流れて行く。
 「そうなんや。歌の方もカッコええんやろうね~」
 「え、と…そうですね、魔…レイノさんが、書き下ろして下さって」
 「え、レイノ君作曲するんや!聞いてへんで、初めてちゃう!?」
 これはおいしいネタ、とばかりマイクがレイノに振り向けられた。
 「…まあ。歌は祈りに近い、人間にとってより本質的なものだ。キョーコに歌わせるなら、俺が書くのが一番だろう」
 意味深な台詞に、今度は光の口元が微妙に引き攣った。しかし彼は頑張る。
 「いや~、気合入ったはるやん。本番が楽しみやな~。ほな、歌のテーマはどんなとこで?」
 レイノはちょっと考え、微笑と薄笑いの中間ぐらいに唇を歪めた。
 「手を伸ばす勇気、と言ったところか」
 「え」
 意外そうな声を上げたのはキョーコだった。まじまじと隣を凝視する。
 「何だ」
 見返すレイノに、彼女はほとんど茫然と呟いた。
 「何、そのまともっぽいセリフ…」
 「きょ、京子ちゃん」
 光が慌てる。録画してんだよ、コレ。
 「まともとかどうとか俺は知らんが」
 対して落ち着き払っているのはレイノ本人だ。どういう人物なのか。
 「お前は修行中の菩薩に似ている。成就すれば仏となり、破れれば夜叉と成り果てる…鍵を握るのは今のところ、青い瞳と金のたてがみを持ったライオンか」
 「はあ!?ちょっと何言ってんのアンタ。頭大丈夫…じゃないのは知ってるけど」
 「どっちにしても、いずれ選択の時は来る」
 「だから!」
 「俺としては、破れて夜叉となったお前が俺の手に落ちるのがベストだがな」
 『えええ!!?』
 大声を上げたのは、成り行きについて行けずに点目で見守っていたブリッジロックの三人だ。
 「京子ちゃん…」
 心配そうな光の視線を受け、キョーコはにっこりと微笑を返した。
 「すいません、光さん。
 「今のインタビューはなかったことに!!!
 「ちょっとアンタ、こっち来なさいよ!!」
 一転、ものすごい勢いで叫び、レイノの襟首を引っつかんで彼女は駆け出す。
 残されたタレントたちには、為す術もなくそれを見送ることしかできなかった。
 


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 くっ…やっぱし終わらなかった。でも終わりは近いハズ…!
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