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妙法蓮華(11)

 光たちに声の届かない位置へレイノを引っ張って行き、キョーコは猛然と抗議する。
 「アンタ一体どういうつもり!?全国に流される映像で、何わけのわかんないたわ言垂れ流そうってのよ!?」
 「俺は正直な心中を述べただけだが。なぜお前が怒るのかわからん」
 「だからそういう…」
 「言ったろう。お前は時として奇蹟のように美しい。ならば、美しいものを手に入れたいと思うのは、人の当然の欲望だろう?」
 いきり立つキョーコに、レイノはすと手を伸ばした。
 「時としては余計…ちょっと触んないでよ!!」
 身を避ける少女の胸元で、ネックレスのペンダント部分がちゃらりと躍る。それが、ヴォーカルの手に触れた。
 「!!」
 転瞬、レイノは自分の手を押さえて跳びさがる。
 「どこかで見た覚えのある、と思えば…」
 忌々しげな視線の先を辿り、キョーコは昂然と叫んだ。
 「そうよ、敦賀さんが貸してくれたの。アンタよけのお守りにね!やっぱり、魔界人のアンタには神の寵児の持ち物に触れることなんてできないんだわ!!」
 「神の…?だとしたら黒い神の、だな」
 「何言ってんのよ、アンタじゃあるまいし」
 にべもなく言い捨て、キョーコは昂然と胸を反らした。
 「とにかく!私に触ろうなんて考えないことね。でないと、容赦なくコレをお見舞いするわよ!」
 「…仕方あるまい…以前の石にも勝る禍々しさだ、それほどのモノを浄化するには、俺でも準備が要る…」
 「はあ?」
 どこまでも妙な男、とキョーコは斜めに体を引く。しかしとにかく相手は了承したらしいと見て半身を返した。
 「じゃあそういうことで、本番まで近寄んないでちょうだい!いいわねっ」
 言いつけてブリッジロックの待つ場所へ戻る背中を見送ったのは、今度は怪しく光る紫の瞳だった。



 「行くぞ」
 レイノが手を差し出した。
 「アンタに手を取られて登場なんかしたら、ファンがうるさいわよ」
 じっとり言うキョーコに、彼はうすく笑う。
 「黙らせろ」
 周囲で他のメンバーたちが頷いた。



 レイノが歌いだした瞬間、キョーコはそくと背をのぼる小さな戦きを覚えた。
 練習の時よりも甘く深い、誘うような声音。違う。挑むような。ここへ来てみろと。
 キョーコはひとつ息を呑み、微笑んだ。行ってあげようじゃない、首根っこ洗って待ってなさい。
 ベースに目を遣り、半音上がるタイミングを貰う。

 JUST YOU

 ターン
 ドラムスの放った最後の一音が、揺らめきながらライトの渦を振り払って暗い空へ吸い込まれていく。キョーコはマイクの前から一歩下がり、そっと息をついた。
 客席は、ただ黒い穴のように静まり返っている。失敗、という文字がちらつき不安に襲われた時、わっと歓声が弾けた。中に、確かに彼女を呼ぶ声がある。
 慌てて周囲を見回すと、ヴォーカルは当然だと言いたげに澄ましかえり、ドラムスは頭上でかんとスティックを打ち、キーボード・ギター・ベースはこんどはちゃんと親指を立てている。
 キョーコは晴れやかに笑い、客席に深く一礼した。
 ビー・グールのメンバーたちに背中を叩かれながら袖に引っ込むと、前方にいやなものが二つ。いや二人。
 その片方、坂東ひろしがせかせかと近寄って来た。
 「いや京子ちゃん、よかったよ。さすが私が見込んだだけのことはある」
 「坂東先生、俺らもすぐ出番ですよ」
 「わかってるよ不破君、食事に誘うだけだから。どうだね京子ちゃん、このあと…」
 言いかけたひろしと、足を踏み出そうとしたレイノが同時に動きを止める。奥からさわさわと渡って来るざわめきの中心で、かつと小気味良い靴音がした。通路から颯爽と現れたのは。
 「つっ…敦賀さん!?」
 「やあ最上さん、お疲れ様。歌、よかったよ。車の中で聞いてた。あ、車に花があるから、あとであげる」
 「へ!?あ、あの、ありがとうございます」
 蓮は後輩の前に立つと、にこやかに視線を移した。キョーコに手を伸ばしかけたままぽかんと固まっている演歌歌手に。
 「坂東先生、でしたね。先日はうちの後輩がお世話をおかけしましたそうで」
 「え?あ、いや、別に。つ…敦賀君がどうしてここに」
 さしものひろしも生敦賀蓮の前でへどもどしている。京子のファンとも言っていたことだし、結構ミーハーなようだ。
 「俺も彼女も、このあと事務所に呼ばれてましてね。俺が通り道だったので迎えに寄ってくれと頼まれたんです」
 「え」
 何か言いかけるキョーコを目顔で黙らせ、蓮はあくまでにこやかに言い継いだ。
 「エンディングが終わったらすぐ出るからね、京子ちゃん」
 「あ、は、はいっ!お手数おかけします!!」
 「お話中すいません。坂東先生、そろそろ出番ですよ」
 尚が割り込んだ。きつい視線を蓮に当て、
 「どうも、敦賀サン。よかったら先生と俺の歌も聞いてってくださいよ」
 挑戦的に言う。
 「やあ、不破君。君たちがトリだってね。さすがだよ」
 「坂東先生のお力ですよ」
 「いやいや、不破君も今すごい人気だしね。それに、今回は情念あふれる素晴らしい曲を書いてくれて。今後もぜひお付き合い願いたいものだ」
 「はは…」
 尚のうそ寒い笑いには気付かず、トップ俳優の前で持ち上げられた大物演歌歌手は上機嫌で言うのだった。



 「…へえ、不破君もなかなか器用だね…」
 ヤケクソのようにこぶしを回しまくっている尚の姿を見ながら、蓮が呟く。
 キョーコは首からネックレスを外してハンカチで拭いてから差し出した。
 「敦賀さん、これ本当にありがとうございました!すごく役に立ちました」
 「そう。それはよかったけど…」
 役に立つようなシチュエーションになったのかと口の中で呟き、蓮は少々笑顔を深めた。キョーコがぴき、と凍る…



 「ふうん」
 鼻を鳴らすミロクに、レイノは白っぽい視線を流す。
 「…なんだ」
 「アレが、お前の言うライオンってわけだ。凶暴そうには見えないけどな」
 ドラムスは青い瞳だの金のたてがみだのという言葉を聞いていない。どこかしら面白そうにボーカルを見返した。
 「……」
 むっつり黙り込むレイノの姿に、小さく笑った。
 「龍ならぬライオンを従えた観音様、ね。厄介な相手だな?」
 「おかげで退屈はしない。ひとつわかったこともあるしな」
 「うん?」
 ミロクはレイノの言う内容にではなく、レイノ自身の態度に興味しんしんといった顔をする。それへヴォーカリストはゆっくりと、うすくうすく笑った。
 「キョーコに憎まれるには、まず愛されねばならんらしい。少し、方向性を変える必要があるな…」




-「妙法蓮華」・完- web拍手 by FC2


 完結です。先があるっぽく。今のところ予定はないのですが~。
 あ~長くなった。そして迷走し放題。申し訳ありません春葵様、こんなんでもよろしければ貰ってやって下さいまし。
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