ヴァージン・ホワイト(前編)

 「京子さんにもさっき説明しましたけど、このポールとポールの間が大丈夫な部分ですから」
 先端だけ黄色に塗られたポールを撫でるスタッフに、蓮は少し目を細めながら頷いた。
 「わかりました」
 「まだ雪が降ってるんで、見にくくなるかもしれません。お気をつけて」
 「ありがとうございます」



 真っ黒な空から、風とともに大きな雪の粒がびしびしと吹きつけて来る。凍った疎林のほかに立つものの姿もなく、狂ったような風の吠え声の他には物音ひとつ耳に届かなかった。
 「もう、諦めたらどうだい?助けなんて来ないよ」
 片頬を歪めながら手を差し出す男を、部屋着らしいブラウスとスカートの上にストールを巻きつけただけの少女は嫌悪をこめて睨みつける。
 「ほら…こんな雪の中に、いつまでもそんな格好でいたら凍えてしまう。ここで凍え死ぬよりは、おとなしく俺のものになった方がいいんじゃないかな」
 背の高い追跡者は自分の完璧な防寒の拵えを見せびらかし、分厚いスキー手袋を嵌めた手を弄うようにちょいちょいと揺らした。
 「たくさん、可愛がってあげるから」
 「いっ…嫌です、絶対嫌!!誰が貴方なんかっ…」
 少女が振り絞るように叫ぶ。
 「両親を殺したくせに…あの人まで、私の婚約者まで死なせたくせに!!」
 男の目の色が変わった。ひどく、暗く。
 「…そう、気付いてたの」
 いっそ優しいと呼べる、愉悦に満ちた呟き。
 「大事にしてあげようと思ってたのに…ね」
 「…!」
 大きく肩を震わせた少女は、サクリという軽い音を聞いた。雪の中に踏み込む、男の足音。距離を詰められる、音。
 本能に逃走を命じられ、彼女はさっと身を翻す。
 「…!?最上さん、駄目だ!そこは…」
 叫び声と同時に、足元がぎゅうと軋んだ。地面だと思っていた雪の塊が、踏み込まれた重さをあっさり宙に放つ。
 しかしキョーコには、まだ事態がしかとわかっていなかった。小さな悲鳴を上げながら考える。
 (敦賀さんは、何をあんなに慌ててるのかしら?あんな風に、助けようと手を伸ばすシーンじゃないのに。私は、すぐ崖下に張ったネットの上に…)
 落ち…ない!?
 思った時には、ぼそ、と雪の中に全身が潜り込んだ。しかしそれで勢いが止まることもなく、彼女は混乱のうちにごろごろと崖に沿って転がり落ちて行く。永遠のように思える数瞬のあと、背中を強く打ちつけて漸く止まった。茫然と見上げる目の端に、ずっと高い位置に張られた防護ネットのオレンジ色。
 (私、ポールの間隔、間違えた…!?)
 ブラックアウトする意識の底に、彼女を呼ぶ声がひどく間延びして響いた。
 「も…がー…みさ…」




 「大変だ!」
 「京子ちゃんが!!」
 「あそこは防護ネットの範囲外だぞ…」
 騒然とするスタッフの声を背に、
 「最上さん!!」
 蓮はキョーコの落ちた雪のえぐれに駆け寄った。崖下を覗き込むが、闇と吹雪に遮られて視界が利かない。
 「…!」
 傾斜を目で測り、蓮は防護ネットの範囲を示すポールを雪の中から抜き取る。
 「敦賀くん!!?」
 「何を…」
 驚きと制止の声を聞く間もあらばこそ、俳優は崖下に身を躍らせた。ぱっと舞い上がる雪が、瞬く間にその長身を飲み込んだ…




→NEXT web拍手 by FC2


 ぽと吉様のみなデリク②、「雪山映画ロケ。キョコ転落、蓮が追うが崖を上がれず、救助を待つことに。(以下略)」です。なんか、こんなような話をスキビワンダリング中にどっかで読んだ覚えがあるので今まで迷ってたのですが、まあともかくチャレンジしてみるかと。ちゃんと私の話になるよう頑張ります。
 ちなみに劇中劇はサイコサスペンスで☆
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
作品一覧
サイト「花うてHP!」トップよりブログ内の作品のリストに飛べます。閲覧者の皆様のアクションに対して加算させて戴く「花うてポイント」の説明・管理もこちらよりどうぞ!

作品リスト(サイトトップ)

アクセス

・メールフォーム

・BBS

リンク

◆リンクページ


◆当ブログへのリンクについて

当ブログはスキビコンテンツをお持ちのサイト様に限りリンクフリーといたします。


ブログ名:花のうてな

管理人名:みなみ なみ

URL:http://hananoutena.blog14.

fc2.com/


 ↓各ジャンルごたまぜの本サイト。

↓スキビの同人誌作品をブログ記事として収載・販売しています。(2014年7月までで更新停止)

 ↓BUD BOY二次です。


  • 管理画面
  • RSSリンクの表示
    QRコード
    QR