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ヴァージン・ホワイト(中編)

 前に突き出したポールが雪を分ける。
 体を横向きにして対向面積を小さくした蓮は、膝と肩でバランスを取り雪を巻き上げながら急斜面を滑り降りて行った。すぐ横の雪面に、キョーコの体に削られたに違いない溝がほぼまっすぐに刻まれている。
 「最上さん!
 「最上さん、大丈夫か!?聞こえたら返事をしてくれ!!」
 口の中に飛び込む雪にむせそうになりながら呼ばわるが、風の音に紛れて自分の声さえよく聞こえない状態だ。
 「くそっ…!」
 焦りながらも20mばかり滑り降りたか。漸く崖下に行き当たり、蓮は溝が斜めに曲がった部分に不自然な盛り上がりを見つけた。
 「最上さん!?」
 雪溜まりに踏み込まないようポールで地面を確かめながらいざるようにそちらへ急ぐ。
 「最上さんっ…」
 長身の俳優が腰まで埋まる雪壁の向こうに、ちらりと黒い色が見えた。衣装のスカートの色だ。それからその先に続く、細い爪先。靴は見当たらない。更に近付くと、確かにキョーコだった。背中側が半分雪に埋まっている。
 蓮は震える手を伸ばし、少女の体を雪の中から引き上げた。名を呼んでも、まぶた一つ動かないのが恐ろしい。目の前がすうと狭まる心地がした。
 蓮は必死で己を叱咤する。
 (落ち着け。こういう時は…そうだ、DRAB。まず危険(Danger))
 血走った目で周囲を見回す。脅威は当面、雪と風。少し先の崖下に、ささやかながら庇のように岩が張り出している部分があった。あそこの下で雪を掘って…とポールを握ったままキョーコを抱き上げる。
 雪を押し分けて一歩一歩進む間にも、彼は忙しく考える。
 (次は反応(Response)、今のところない…気道(Airway)確保、呼吸(Breathing)…)
 恐る恐る視線を落とすと、びしょ濡れになった白いブラウスの胸は肌の色を映して共にかすかに震えていた。
 (よかった…!)
 思わず腕に力がこもる。
 その、瞬間。
 すか、と足元が抜けた。
 「…!?」



 中空に放り出された、頼りない感覚。
 雪に塞がれていた穴か何かに踏み込んだ…!?
 と悟った一瞬、蓮はキョーコをぎゅうと抱え込む。雪の白が消え、視界が一気に暗くなった。耳もとで風が鳴る。下から、上に向かって。
 どさりと重い音が先に響き、そこに一瞬遅れて自分たちが投げ出される音が重なった。
 仰向けに落ちたまま上を見上げても、暗くて何も見えない。ただ、真上にうすぼんやりと白く見えるのが落ちて来た穴だろうと思う。とても手は届きそうにない。と思って、ポールを手放していることに気付いた。地上に残して来たようだ。
 蓮は暗闇に慣れて来た目で今度は尻の下を見下ろし、ほっと息をつく。
 「助かった…」
 先に落ちた大量の雪がクッションになって、特に打撲なども負わずに済んだようだ。次いで周囲の気配を窺ったが、危険な動物がいるような気配や臭いはしなかった。外ほど寒くないことだし、救助を待つにはむしろ有難い場所と言えるかもしれない。
 蓮は数度声を張り上げて叫んでみたが、応える声はなかった。助けが来るにしても、もう少し時間がかかるか。
 (仕方ない。とりあえず、ここで待つしかないな…)
 そろりと腕を解き、キョーコの様子を確かめた。そっと頬を叩く。
 「最上さん」
 もう少し強く。
 「最上さん。目を開けてくれ、頼むから…」
 ぺちぺち、と冷えた頬の鳴る音まで硬い。蓮の眉宇に焦りが滲み始めた時、ふと、キョーコの吐息が揺れた。
 「…!最上さん!?」
 「…う……」
 「最上さん!」
 小さな呻き声を追って張り上げる声に、少女はゆるゆると半眼を開く。
 「…?…」
 ぼんやりした視線がふらりさまよい、次第に蓮の顔に固定して行った。
 「最上さん、俺がわかる!?」
 性急に尋ねれば、弱い吐息にかすかな声の欠片が乗る。
 「つる…がさん…?私…」
 大きな眼がいきなりかっと見開かれた。
 「私、崖から…え、ここは!?」
 「落ち着いて。そう、君は崖から落ちて…俺は助けに来たはいいんだけど、少しは安全な場所に移動しようと思った途中で穴に落ちてね。ごめん、君まで巻き添えにしてしまった」
 「そんな!私の方こそご迷惑を…」
 言いかけて少女はぶるりと震える。
 「ああ、そうだ、寒いよね。ちょっといいかな…痛いところはない?」
 蓮はキョーコを抱え直し、小さな呻き声が上がるのを聞いた。
 「せ…背中、打って…でも、どこか折れてるとか動かないとかは、ないみたいです」
 自分でもぞもぞと体を確かめ、キョーコは苦しげな声で言う。
 「吐き気とかは?」
 「ありません」
 「とりあえず大丈夫かな…」
 息をついた俳優はキョーコを立てた膝にもたれさせ、防水ジャケットのファスナーを開いた。
 「敦賀さん?」
 衣服を脱ぐ様子に、少女が戸惑いの声を上げる。ジャケットを脱ぎ落とした蓮は続いてセーターも脱ぎ、それをキョーコに差し出す。
 「濡れた服を脱いで、これを着て。俺は目を瞑ってるから」
 「え…で、でもそれじゃ敦賀さんが」
 「大丈夫だから。君が着替えるまで、俺はこのままでいるよ」
 そんな、と呟く少女にインナーだけになった蓮はセーターを押し付けた。
 「す、すいません…お借りします。…痛!」
 身を起こそうとした少女が悲鳴を上げる。俳優は迷わず手を伸ばした。
 「手伝うよ」
 薄い肩をそうっと抱え起こし、ブラウスのボタンに手をかける。
 「つっ敦賀さん!?ボ、ボタンくらいは…って言うか、自分で着替えますからっ!!」
 「え、あ。…うん、でも…脱ぐの、辛いだろう?」
 「脱がされる方が辛いです~!!」
 叫ぶキョーコに、蓮の目が半分になった。
 「…元気が出て何よりだけど、駄目。ついでに背中見るから、ボタン外して後ろ向いて」
 「せなっ!?」
 「打ち身の具合だよ。…ほら」
 促すと、キョーコが絶句する。呼吸が震えるのは、寒さのせいなのか?くしゃん、とくしゃみが跳ね出す。
 「早くしないと、無理矢理ひん剥くよ」
 蓮が苛立ちをこめて言った。キョーコの気配が飛びあがり、それでもまだ迷い。震えながら、彼に背中を向けた。ぷち、ぷち、と、ブラウスのボタンを外す緩慢な音。
 
 

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 3回で終わるか怪しくなって来ました。
 それにしても、蓮が装備ナシで追って行けるところへ救助がすぐ来れないわけがない、と思うと苦しすぎる展開。ロープでもあれば降りられるでしょうこの崖。そもそも防護ネット張ったスタッフがいるんだし。あうー。

 あと、確かホントは張り出した岩の下とか避難場所にしない方がよかったと思うんですが、絵的に想像し易いので敢えて採用しました(目指すだけだけど)。よいこはまねしないでね!
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