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ヴァージン・ホワイト(後編)

 袖から腕を抜いたキョーコは体の前で蓮のセーターを抱き締めて縮こまる。
 蓮は辛うじてジャケットのポケットに入れておいたハンカチで闇にも白く浮き上がるような背中を拭いてやった。そうひどく腫れあがっている様子はない。セーターを着させて小さく震える背中に手早く指を走らせ、打ち身の具合を確かめた。重要な内蔵や骨や腱には影響がなさそうだと見て安堵する。
 自分の靴下を与え、スカートを剥ぎ取るように脱がせてセーターの中に亀の子のように丸まらせたキョーコを自分に密着させてジャケットのファスナーを閉めた。身長に合わせたサイズなので、胴回りに余裕があるのが幸いだった。
 「つ…るがさんっ、こんな格好」
 「我慢して。火でも焚ければいいけど、何もないし…こうするのがお互い一番温かいんだ」
 「でも、でもでも…こんな、敦賀さんに乗っかってるみたいなの…」
 「……」
 蓮の顔から表情が消える。半泣きのキョーコを打ち身に触らないように抱き締め、大きく息をついた。
 「頼むから、おとなしくそこに収まっててくれ。こんな所で凍死したくないだろう?」
 しょうことなしにキョーコが口を閉じる。俳優は小さな頭を自分の肩に引き寄せて髪を撫でた。心の片隅に湧き上がる、状況を弁えない不埒な喜びを押し殺して。
 「いい子だ。でも、眠っちゃ駄目だよ。お互い起きてられるように、声をかけあおう」
 「は、はい」

 

 どのくらい経ったのか。気がつくと、キョーコの頭がふわふわと上下に揺れている。
 「最上さん」
 「…」
 「最上さん!」
 「あ」
 軽く揺すると、驚いた声と共に顔を上げた。同時にけそ、と咳をする。
 蓮は手袋を外して雪溜まりに手を伸ばした。雪を少量掻き取って掌で溶かし、それを開かせたキョーコの口に流し入れる。
 「もっと飲みたい?体温が下がるといけないから、少しずつだけど」
 「もう…いいです。敦賀さんの手が冷えちゃいます…」
 「そんなの構わないよ」
 「駄目、です。私なんかのためにそんな…
 「!?」
 ぎゅ。と蓮は彼に抱えこまれて身動きもならない少女の鼻を強く摘む。
 「こんな時までなんかなんていうんじゃない」
 「あ…だって私、いま、敦賀さんに何もして差し上げられないのに…なのにこれ以上何かして戴くなんて心苦しくて」
 「…何を言ってるんだ…」
 君が、この腕にいるだけで。こんな時ですら、俺は幸せを覚えてしまうのに。
 そう告げたいと思う一方で、この状況で彼女に負担をかけることになったらとブレーキが働く。蓮は唇を噛み締め、少女を抱く腕に力をこめた。
 「本当に、そんな風に思うの?」
 「…え」
 「俺は…君の周りは、何かしてあげないと何もしてくれない人ばかり?」
 「え、あっ…!?そ、そんな」
 「君が言ってるのはそういうことだよ」
 「ちが…います!私はただ、あの…私は何も持ってないから、人に好きになってもらえるようなものを持ってないから…」
 「それこそ大違いだ」
 幼い日を思い起こし、蓮は瞳に痛みを宿しながらもきっぱりと遮る。
 母親に顧られずに育った君は、ずっとそんな風に思って、差し出すばかりで…
 「違うんだ…」
 「敦賀さん?」
 戸惑うキョーコに何か言おうとして、蓮は突然動作を止めた。キョーコにも黙るように合図する。こうこうと落ちて来た穴から風の音が響いて来る。それに混じって…
 「……ん…」
 「…い…」
 「るが…く…」
 「きょ…子ちゃ…」
 切れ切れに、人の声が聞こえた。次第に近付いて来る。
 「おおーい…」
 「敦賀くんー!?」
 「おい!あそこに何か…あれ、敦賀君が持って行った目印のポールじゃないか!?」
 二人同時に息を飲んだ。ざく、ざく、と雪を掻き分ける音に向かって、俳優と女優は鍛え上げられた声量を充分に発揮して見せた。



 「背中を打ってますから、そっと…俺は、どこも何ともありません」
 毛布にくるんだキョーコを先に引き上げてもらい、蓮は誑されたロープを伝って地上に這い上がった。外に出てみれば直径で80cmもないような穴で、よりによってここに踏み込まなくてもと脱力しそうになる。
 風こそ残っているが雪は止んでいて、暗い空の下には自ら輝くような純白の世界が広がっている。その様はまるで、キョーコの姿を思わせると彼は思った。
 すべての色を含み、夜明けを待つ白。積もった心は届いた光によってあざやかに染まり変わる。
 彼女が、自分の豊かさに気付くのはいつなのだろうか。
 その時には、自分の気持ちにも目を向けてくれるだろうか…?
 担架に乗せられ運ばれて行く少女を、蓮はずっと見送っていた。まるで、祈るように。



-完-
 
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 うう…ぽと吉様スイマセン。リク内容は「過去の話をする」でしたが、ソレ死亡フラグじゃね!?とか思ってしまって…毎回リク内容をいじり倒して申し訳なく;
 しかもえれえハンパな話ですね…あーうー。
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