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たいせつでたいせつで(46)

 「ち、ちがうの!そんなんじゃなくて…」
 いつも優しい少年の不快そうな様子に驚き、キョーコはオロオロと両手を振り回す。黙っているクオンの表情が変わらないので泣きそうな顔をした。
 「あの…ただ、私」
 「うん?」
 少しだけ表情を緩めて促す少年に、彼女は口ごもりながら言う。
 「クオンは、綺麗だし優しいから、やっぱり人気があるなあって…だから、私なんかが近くにいると、みんな腹が立つんじゃないかって思ったの」
 「……」
 クオンは無言のまま、ゆるゆると周囲を見渡した。慌てて逸らされる、キョーコへの険を含んだ視線に気付く。
 確かに、俳優として大成を願う彼にとって、他者から好かれることは重要ではある。それでも、そのためにキョーコを犠牲にするわけに行くものか。
 (大体、俺が荒れてた頃は遠巻きにしてたクセに、ちょっと真面目になったら掌返すような人間がキョーコちゃんに嫉妬する方がおかしい)
 と思うのが正直なところ、彼は少し身を屈めて少女にだけ聞こえるように声を落とした。
 「でも、俺はキョーコちゃんのだよ?」
 ぼっ。一瞬で真っ赤になるキョーコに、いつも通りの笑顔を向けた。
 「昼休み、教室に行くから。お弁当食べさせてくれるんだよね?楽しみにしてたんだ」
 「え?あ、う、うん。でもクオン足が…私がそっちに行く方がいいんじゃない?」
 「いいよ、少し用事もあるから」
 「?」



 「いい加減にしなさいよ、みっともない」
 ぱきん、と硬質な声が響き、教室の中が一瞬静まり返った。
 「な…」
 キョーコを取り囲んでいた女生徒の一人が半身を振り返らせ、声の主を睨みつける。ストレートロングの黒髪も艶やかな美少女。明らかに東洋人だ。
 「なによカナエ、私たちは転入生とお喋りしてるだけじゃない」
 「ひどく話題が限られてたみたいだけど?クオンとどういう関係、どうして一緒に来たの、なんでケガしてる彼に抱きかかえられて車降りて来たりしてたの」
 「いっ…いいじゃない、気になるんだから!あんたには関係ないでしょ、余計な口出さないでよ」
 別の一人がきつい調子で言う。反対側でもまた。
 「同族意識ってやつなんじゃないの、おんなじ黄色い肌の!」
 「ああもう!めんどくさいわね、もー!!」
 カナエと呼ばれた少女は突然日本語で叫んだ。ついていけずにポカンとしていたキョーコが、一瞬大きく目を開いた。
 「うるさいのよピーチクパーチクくだらないことばっかり!どうでもいいことで騒ぎ立てないでちょうだい、迷惑よ!!」
 英語に戻して厳しく叫ぶと、カナエはツカツカとキョーコの前にやって来た。群がっていたクオンのファンたちを掻き分け、バンと机を叩く。
 「アンタも!!黙ってないで何とか言ってやんなさいよ。飛び級してるくらいなんだから、言葉わかんないわけじゃないでしょ!?もー!」
 また日本語だ。
 「え、あ、えっと」
 キョーコもつられて母国語で困った。
 「この子達は何の権利もないくせに嫉妬してるだけなんだから、びしっと言ってやればいいのよ。どういうことか知らないけど!!
 「…って、何笑ってんの。気持ち悪いわね、もう…」
 ひとしきり説教をかましてからキョーコの様子に気付き、カナエはちょっと後ろへ肩を引く。
 「あ、ごめんなさい。つい、嬉しくて」
 「嬉しがるようなこと言ってないと思うけど…ああ、日本語が?」
 「ううん、そうじゃないの。私、そんな風に女の子に庇ってもらうの初めてだから」
 「べ、別に庇ったわけじゃないわよ。ただ、この子達があんまりうるさいから…」
 突如始まった日本語会話に介入しようともしないイチャモントリオを指して言いかけたまま、彼女らの視線を辿るように廊下の方を見た。
 「何?今度は廊下が騒がしくなったわね」
 「あ」
 キョーコが小さな声を上げる。
 さわさわと渡って来るざわめき。薄くピンク色に染まったような空気に覚えがあると思った。そう、彼が現れる前兆。黒い瞳が、なつかしみといたみを綯い交ぜにした複雑な表情を浮かべる。
 しかし教室の戸口に立ったのは、当然ながら彼女の過去の記憶とは全く異なる姿だった。
 すらりとした長身に見合う伸びやかな手足、さらりと光をこぼす金の髪、やわらかく緩められた碧い碧い瞳。何よりも、幸福を形にしたかのように甘やかな笑顔。
 「キョーコちゃん」
 クオンは軽く松葉杖を振ってよこす。
 「待たせてごめんね、ちょっと先生に捕まってて」
 などと言いながら教室に入ってくるので、キョーコは慌ててカバンをつかんで立ち上がった。ちらりとイチャモントリオを見ると、真っ赤な顔でクオンに見とれたまま固まっている。クオンはそれに、にこりと微笑みかけた。
 「やあ。君達、このクラスの人?」
 「はっ!?え、あ、はいっ!アンナです!」
 「私ポーラ…」
 「ジェーンですっ」
 「そう。三人とも、キョーコちゃんをよろしくね。俺の妹みたいな大事な子だから、優しくしてあげて」
 「は、はいっ!!」
 声を揃える三人を、キョーコはポカンと見る。
 「じゃ、行こうキョーコちゃん。今日は天気がいいから、外の芝生でお弁当食べよう」
 「あ、う、うん」
 涼しい顔で促すクオンに続こうとして、彼女は所在なげにしている同郷の少女に目をやった。
 「あの、えっと。モー子さん」
 「はあ!?それ私のこと!?」
 「だって、“もー”が口癖みたいだし…あの、ありがとう」
 「琴南奏江。お礼言われるようなことしてないわ」
 奏江はプイと顔を背けて去ろうとするが、キョーコはそのなめらかな頬に差す朱色を見逃さなかった。思い切って声をかける。
 「こ、これから仲良くしてくれる?」
 すらりとした後ろ姿が、言葉に比べて語調の弱い返事をよこした。
 「へんなアダ名やめてくれたらね」
 細く白い手が、ひらひらと軽やかに躍っていた。




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 モー子さん出しちゃいました。
 やっぱキョーコを癒すにはこの人が不可欠かなと!
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