無敵のマヨネーズライス(1)

 「四方を護りし聖なる獣の名において…
 「我が求めに応え現れよ、疾風の陣!」
 呪文を唱え終え、高く宙に印を放つ。すい、と上がった光が一瞬収縮し、光度を増した。同時に、その周囲に螺旋を描く風が立つ。
 これは、いけるかしら…!?
 こくりとキョーコの喉が鳴った。今度こそ、まともに魔法を発動させることができるのか。
 どうにもこうにも失敗続き、なぜ魔法使いと名乗ることを許されたのか周囲に訝しがられるばかりの新米ウィッチは期待に溢れた眼差しを自らの構築した力場に注ぐ。
 …が。
 ひょろひょろひょろ…ぽて。
 弾けて風となるはずの光球は、突然明度を落としたかと思うと力なく地に落ちた。
 「…うう…また失敗……」
 がくりと細い肩が落ちる。
 「こんなことじゃ、ちっとも売れ残りの固パン生活から抜け出せないわ…!」
 せめて、せめてほかほかのごはんにマヨネーズをかけて食べるくらいのことはしたいっ…!!ささやかな住まいのささやかな庭で、涙がちょちょ切れるほどささやかな夢を握ってキョーコは叫ぶ。その時、背後で『ぷっ』とやけに可愛らしい音がした。
 「!?」
 慌てて振り返る彼女の視線の先には、口元を押さえてはいるが明らかに目もとを緩ませている天敵の姿。常々唐突に現れてはキョーコを馬鹿にするのを趣味とする(としか思われない)艶麗比類なきカリスマウィザードの。
 「つ、敦賀さん!!」
 見られた。魔法の練習、それもまた失敗してるところを。よりによってこの人に。狼狽する新米魔法使いに、笑いを収めた敦賀蓮は軽く片手を挙げ、宥めるような仕草を見せる。
 「やあ、最上さん。今日もご苦労様」
 「!?
 「むっ、無駄な努力をって意味ですか!!?わざわざそんな嫌味言いに来たんですかっ」
 キョーコは噛み付くが、男は動揺も見せずにまさかと肩を開いた。
 「違うよ、君に仕事を頼もうと思って」
 「は!?何仰ってるんですか、貴方が私に頼むようなことがあるわけありません!」
 「ところが、これはさほど得意でない、ってことは俺にもあってね」
 しれっと言われて、キョーコは疑わしそうに黙り込んだ。
 「…なんですか」
 仕方なく尋ねる。いったい何を言うつもりなのか知らないが、とっとと用を済ませて帰ってもらいたい。そんな心中を知ってか知らずか、蓮は澱みなく話し始めた。
 「うん、実はね。君にある薬を作ってもらいたいんだ。何しろ君は、呪いの人形(ひとがた)作りと調薬の腕はやたら抜きん出てるからね。魔法使いになれたのも、そのおかげだろう?」
 最後の一言が余計だが、一応は認めてくれている部分があるということだろうか。キョーコはそろそろと、鼻先のしわを一本だけ減らした。しかし疑問は残る。
 「どうしてそんなこと、知ってるんですか…?」
 「…校長に聞いた」
 一種個人情報の漏洩ではないだろうかと彼女は思ったが、蓮は魔法学校の校長のお気に入りだとか縁続きだとかいう噂もある。諦めて話を進めることにした。
 「どんな薬が必要なんですか?」
 「ああ、眠り薬。魔獣用のね。退治の依頼を受けたんだけど、なかなか大変な相手でね。人里に近いところに棲んでるから、あまり派手なこともできないし」
 意外に…マトモな依頼…?また一本鼻のしわが伸びる。
 「魔獣は何ですか」
 「ん?龍」
 「はああ!!?」
 キョーコはぶっ飛んだ。さらりと、そんなさらりと。龍退治とか言わないで欲しい。だってアレは超古代から生息する大いなる種で、体躯は雄大にして知恵は深甚、そんじょそこらの魔法使いじゃ目を合わせることすらできない最強生物だ。それを、まさかまさか一人で相手にすると!?
 彼女の心を読んだかのごとく、エリート魔法使いはうんうんと腕組みしながら頷いた。
 「ね、大変な相手だろう?」
 「たっ…大変どころの騒ぎじゃありませんっ!そ、それまさか、お一人で…!?」
 「まあね。だから、君の薬が必要ってわけ。
 「ということで。どう、受けてくれるかな?もちろん謝礼は支払うよ」
 蓮はにこりと笑う。
 普段、その笑顔でもって散々おちょくられているキョーコは条件反射のように身を引いたが…
 しかしである。切実な事情が彼女にはあった。
 魔法がどこまでもへっぽこであるという評価が先走って調薬や人形作りの依頼すらほとんど来ず、したがって彼女の収入は著しく低い。家計簿を見ていると泣きたくなってしまうくらい低い。
 よって彼女は、仕事を選り好みできる立場には、ない。
 かくて新米魔法使いは、悔し涙を飲んで天敵の前に膝を屈したのだった。
 「お、お引き受けします…」
 

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 「真夜中の魔法使い」山口マヨネーズ様宅の設定を、毟り取るようにお借りして参りました。
 失敗続きの新米魔法使いキョーコと、何かとそれに絡むカリスマ魔法使い敦賀蓮。おいしい!おいしすぎる!!食いつかずにはいられませんでした。マヨ様、厚かましい申し出を快く許してくださってありがとうございます!!この話はひたすらマヨ様の御為に。お楽しみ戴けるようがんばります!
 あ、今のところ、三回の予定です。
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