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無敵のマヨネーズライス(3)

 カカカカカカカ。
 高速で連打されるノッカーに気付き、丁度着替え終えた蓮は宙に指を伸ばして楕円を描きながら何事か低く呟く。するとそこには、玄関先の映像が映し出された。
 「っ!?最上さん」
 来客を確かめ、彼は急いで玄関に向かう。その間にも続くノッカーの音に、よく響く声で返事を投げた。
 「いま開けるよ」
 ぴたりと堅い音が止まり、かわりにそわそわした空気が伝わって来る。こんなにせっかちな子だったろうか、と思う一方で、彼を訪ねて焦れてくれるとはとつい心が弾んだ。蓮は常にない勢いでドアを開いてしまった。
 「おはよう、もう薬ができ…」
 「敦賀さん!!」
 言葉の途中で絶句したのは大声に遮られたからではなく、キョーコの弾むような表情のせいだった。かつて彼に向けたことのない、全開ありったけの笑顔。
 「ありがとうございます!!」
 会うたび見るたび眉間に皺を刻んでいた少女が、頬を紅潮させまっすぐに彼を見上げて礼を言う。勢いよく下げられた頭はきっかり90度、伸びた背筋が美しい。
 「…え、あの」
 望外の状況にうっかり戸惑う蓮の顔を、彼女は瞳を輝かせながらまっすぐに見上げた。
 「昨日、敦賀さんのアドバイスに従って、呪文を唱える時にイントネーションにすごく気をつけるようにしてみました。そ、そしたら…あの、まだどうかすると発音外しちゃったりするんですけど、でも…今までとは比べ物にならないくらい成功率が上がったんです!!初歩の灯火魔法なんか、ほぼ100%でした!
 「敦賀さんのお蔭です。ほんとにありがとうございました!!」
 「どういたしまして」
 蓮は、はうはうと拳を握る少女にそっと微笑みかけた。と言うよりも、自然に顔が綻んだ。脇へどいて道を開け、家の中へ招き入れる。先に立って応接間に案内した。
 「お役に立てたなら幸い。ところで、薬の方はどうかな?」
 「あ、はい!できました。昨日、言われた通りに街で材料を揃えましたので、すぐ調合に取り掛かれましたし」
 遠慮がちに広い部屋へ足を踏み入れ、やたらフカフカのソファを勧められておっかなびっくり腰を下ろしたキョーコは、肩から提げていた手作りらしい鞄を開けて小壜をふたつ取り出した。とろりとした液体が、透明なガラスのなかでたぷんと鳴る。
 「それと…」
 壜をテーブルに置き、更にごそごそ探り出したのは、何かを包んだハンカチだった。
 「材料費の余りです」
 とテーブルの上に置く。ごと、ぢゃり、と重い音がした。
 「えっと…材料費をケチるなって仰ってたので、龍の鱗とか代用品のあるものもちゃんと正規品を買っちゃって、思ったより高くついたんですけど。それでもすごく余ったのでお返しします」
 「ああ、それは君への報酬の残りってことで取っておいて」
 「はあ!!?まさか、眠り薬の調薬くらいでこんな金額を受け取る訳には行きません!半金も戴いてるのに。あ、そちらは、龍の眠り薬なんて特殊な調合の手数料ですから…ちょっと高めに金貨2枚戴きました」
 蓮は何とも言えない気分になった。失礼かもしれないが、キョーコの謙虚さはいっそ憐れを誘う。
 「それこそまさかだよ…
 「まあいい、じゃあね」
 ハンカチに手を伸ばして開き、小山になった金貨を布端へ寄せる。
 「これが、本来の半金の残りと、後払いの半金分。それから特急料金と、届けてもらった手数料と…」
 彼が何やかんや並べ立て終えた時には、金貨はすべて元通りハンカチに包まれていた。
 「ハイ、これで明朗会計ってことで」
 ずいと差し出された包みを、キョーコは茫然と見つめる。
 「こ、こんなに受け取れません…っ!敦賀さん、金銭感覚ヘンですよ!?」
 「ええ、そうかな。妥当だと思うけど」
 「そ、そんな馬鹿な。だってこれだけあったら、向こう5年はマヨネーズライスに困りません!」
 「君の基準も相当ヘンだと思う…」
 ぼそりと言って、蓮は一瞬視線を斜めに放り上げた。しかしすぐに戻し、
 「ああでも、そう言うなら…そうだなあ…」
 わざとらしくひとつ瞬きする。そして、さも今思いついたように、かつにこやかに言った。
 「もう一つ、依頼を受けてくれるかな?」



 「あそこの岩場だよ」
 風の吹く野っ原で、蓮は前方を指しながら背後を振り返る。
 「はあ」
 答える声には力がない。キョーコは常になく肩を落とし、死刑台を見るように示された方角に視線を移した。岩山一歩手前と言う規模で大きな天然岩ががっちりと組み合い、所々に謎のヒビがここからでも見て取れる。草木一本生えない周囲の地面が黒いのは、もしかして焦げているからだろうか。龍の吐く火で。
 息を飲むキョーコの顔を見て、売れっ子魔法使いはちょっと笑った。
 「怖い?」
 「あああ、当たり前です。龍ですよ龍!舐めてかかれる勇者なんて貴方くらいです!退治を手伝えなんて言われても、私にできることがあるなんて思えません!!」
 「別に、舐めてるつもりも勇者でもないけど…何だってやりようはあるってことだよ。うまく魔法を組み合わせて、最大の効果を得るのも腕のうちってね。だから、君にできることだってちゃんとある」
 「うう…そ、それを実地で教えて下さるんですよね!?」
 キョーコはすがりつくように鞄を抱え込んで言う。
 「手伝ってもらいついでにね。できれば、君に足りないものも合わせて教えてあげられたらと思うよ」
 「足りないもの、ですか…?」
 「そう。それを得れば、きっと君ももっとちゃんと魔法を使えるようになる。それとも、その可能性も放り出してここから逃げ出すかい?」
 意地悪く問えば、負けず嫌いなところのある少女の答えは決まっている。
 「だっ、誰がですか!今更逃げたりしませんっ、ちゃんとパワーごはんを食べられましたから、今日は元気一杯ですし!!」
 「それはよかった」
 噴き出す蓮に、へっぽこ魔法使いはますますムキになって言い募った。
 「馬鹿にしてますね!?マヨネーズは栄養価が高いんですよ!そうだ、敦賀さんも食べてみればわかりますよ。ちょうど、お薬を届けた後で山へ薬草採取に行こうと思ってたから、お弁当用にマヨネーズお握り持ってるんです。おひとついかがですか!?」
 「え、あ、ええと…」
 つまり、具がマヨネーズということだろうか。蓮は遠慮したい気持ちとキョーコ手作りのお握りとの間で揺れる。しかし返事をする前に、さあっと落ちて来る影に気付いて頭上を見上げた。皮膜状の翼を拡げ、蒼穹を悠々と渡る巨大な生物の姿。
 「りゅ、龍…」
 キョーコが茫然とした声をこぼした。それへ蓮が、しっかりと視線を据える。
 「大丈夫。俺を信じて…守るから」
 「え!?」
 天空で、緑の鱗に弾かれた金色の陽光が散った。



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 ううっ終わりませんでしたっ。もう一回…二回…?書かせて下さい~。

 8/10 慌てて書いたので、ちょっと手を入れました~。急ぐのはまだしも、慌てるとやっぱ質に影響せずにおかんですな。反省。
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