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無敵のマヨネーズライス(4)

 「君は向こうの木の陰にいて。合図したら、頼むよ」
 「は、はい」
 蓮に言われて待機場所へと移動し、キョーコは大木に寄り添うようにして振り返る。すると蓮はマントを払ってチュニックの胸元に垂れるペンダントを手の中に握り込んだところだった。風に乗って、低い声が流れて来る。
 「しろしめす力 炎の花よ
 大気に満ちてひびきとなれ
 「ボム・ディーラ!」
 蓮の手から光が迸った。それは遮るものもない自由の空間を舞う偉大なる長虫へと向かってまっすぐに駆け上り、絡め取るように火花をまつわりつかせる。知識だけは豊富なキョーコには、それは威嚇用で、見た目こそ派手だがあまり攻撃力のない花火技だとわかる。あんなものでどうする気なのか、とハラハラ見守っていると、彼を認識した…敵だと…龍が慣性を無視して飛翔方向を変えた。翼を固定し、グライダーのように蓮へ向かって滑空して行く。
 「敦賀さんっ…」
 小さく叫ぶキョーコの視線の先で、先輩魔法使いはチュニックの隠しから彼女の作った薬の壜を取り出す。それへ向かって、高度を低くした龍は衝撃波で地の草を薙ぎ倒しながら迫った。
 「!!」
 「…風と時のごとく移ろえ
 「リポーラ」
 今度は物質転移の魔法。ただし、少しアレンジが加えられているようだ。本来はもっと効果レンジの短い、空間の交換によって物質を移動させる呪文だが、龍の体内に送られたに違いない薬壜の消えた蓮の手には何も代わるものが現れていない。
 「敦賀さん、やっぱりすごいんだ…
 「って危ない!!」
 人としては長身な蓮だが、成体の龍に比べればあまりにもちっぽけに見える。その姿が、殺到する風に巻き込まれてかき消えた。
 「なっ…」
 恐怖に目を瞠るキョーコの視界の上端を何かがさっとかすめる。慌てて視線を上げた先に、蓮がホバリングするように宙に浮かんでいた。浮遊魔術だ。
 目標を失った龍が、身をくねらせながら振り返った。巨大な金色の瞳がきょろりと動き、怒りと憎しみを浮かべるさまにキョーコはぞっとする。
 「つ…敦賀さん…っ…」
 かすれる声が自分のものとも思われない。祈る気持ちで身をもみ絞るが、今自分が介入しても邪魔になるだけだと駆け寄りたい衝動を抑える。
 と…
 中央にトパーズ色の角を具える龍の頭部が、ぐらりと揺れた。同時に、硬い鱗に鎧われた体躯全体がなにか力の抜けたように線を緩める。眠り薬が効き始めたのだ。
 しかしまだ完全ではない。先ほどまでよりもぐんと鈍くなった動作で、古き獣はなおも自分に歯向かう小生意気な生き物に襲いかかろうとする。
 蓮の頭よりも大きな鉤爪が振り上げられ、それを避けて魔法使いはすいと下がった。キョーコのいる木に少し近づく。次いで鞭のようにしなる、しかしそんなものよりずっと太い尻尾が空を打つ。それも避け、蓮は龍の鼻先に炎の光球を放った。ものすごい絶叫が上がる。
 鼻先を払うように身をよじる龍の瞳に血の色がかかるのが、キョーコの位置からも見て取れた。
 しゃぎゃあああ…
 天を引き裂く轟鳴とともに、躍り上がった緑の巨躯が蓮へと突っ込んで行く。キョーコは目を覆いたくなるのを必死に堪え、その時を待った。蓮からの合図を。
 そして、ついに、魔法使いが大きく右の手を振り上げ振り下ろす。
 (今だ!!)
 最大パワー、最大パワー、と心の隅で唱えながらキョーコは手早く呪文を紡いだ。
 「リス・ティーフ!!!」
 前方に向けた手から常にない速度で撃ち放たれたのは、灯火の魔法。物理的な圧力さえ感じるほどの光量に、さしもの魔獣もたまらずきつく目を閉じた。
 そこへ、既に呪文に入っていた蓮が高らかに宣する。
 「…シルヴォルト!!」
 ぴし、と大気が鳴った。縦に裂けた空気の層に吹き込む形で爆発するような強風が発生し、空気の摩擦によって瞬間的に強力な静電気が生成される。
 どぉん…!!!
 地を揺るがし天をもどよもす雷撃が、まともに龍の角の上に落ちた。
 あまりの音量のために、獣の絶叫はどういう音だったのか聞き取れないほどだった。とっさに耳を塞いでさえ殴りつけられるような衝撃を覚え、キョーコは頭がじんと痺れる感覚に立ち竦む。
 「…!!」
 声と言うよりも気配が届き、と思うと彼女の細い体は飛来した蓮に掻っ攫われて木の下を離れた。ほんの一拍遅れて、もんどりうって地上へ落下する龍の尻尾にへし折られた木が倒れかかる。
 数m先の草の上に下ろされ、彼女はバラバラと落ちかかる枝や幹の破片と共に地に沈む龍の姿を呆然と見た。
 「ほ…ほんとに勝っちゃった…」
 「…?」
 蓮が何か言った様子だが、キョーコは聴覚が麻痺している。フルフル首を振ると、ひとつ頷いた蓮の唇がもごもご動いて長い指が彼女の両耳に触れる。途端に、低い空気の鳴動が耳に入って来た。これは、もしや龍のいびきか。それから、蓮の優しい声。
 「怪我はない?」
 「あ、は、はい!ありがとうございます」
 治癒をかけてくれたのだと悟り、キョーコは慌てて頭を下げる。すると先輩魔法使いは、外に跳ねさせた明るい色の髪の上にぽんと手を置いた。
 「こちらこそ、ありがとう。お陰で助かったよ。最後の雷撃は俺にしても大技だけど、それでも弱点の角にピンポイントで落としでもしない限り龍には大したダメージにならないからね…足止めの必要があったんだ」
 「はあ…でも、たったあれだけでしたし、薬の効果も遅かったし、結局守って戴いて…ほんとにお役に立てたんですか?」
 「“たったあれだけ”が必要だったんだよ。協力者を守るのは当然だし、初めからそう言ってる。
 「それにほら、よく寝てるよ?」
 背後の龍を示して笑うので、キョーコは少し気を取り直した。
 「それなら、よかったです…」
 ほんのり浮かんだ微笑に自分では気付かなかったが、目を上げるとなぜか蓮が固まっている。
 「敦賀さん?」
 呼びかけると、はっと我に返った様子で視線を揺らした。
 「あ、あ。ごめん、ちょっと…疲れたかな。早くこの場の始末をつけて、帰ろうか」
 「はあ」
 そう言えば、眠らせただけで退治になるはずがない。この場の始末とはどうするのだろう…
 キョーコが思っていると、蓮はベルトの後ろから短剣を抜き出す。思わず叫んでいた。
 「え、あの、こ、殺しちゃうんですか!!?」
 
 
 
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 隠しちゅーのは、要はポケットですな。

 紙幅(紙じゃないけど)の都合上、竜退治が結構あっさりになりました。マトモに書いてたらそれだけで4~5話くらい稼げそう(笑)。
 そいでやっぱし呪文がイタイ。やだわ~。実は最後の魔法名の部分にはちゃんと漢字の名前があったりしますが、さすがにいたたまれないので表記してません。始めっから創作ファンタジーとして書いてる時はわりかし平気なのに、スキビでやるとなんでこんなに恥ずかしいんだろう。
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