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無敵のマヨネーズライス(5・完結)

 見返る蓮の袖をつかみ、キョーコは不安げに眉尻を下げる。
 「あの、ほ、他に方法は…生き物の命を簡単に奪うのは、よくないと思います…」
 「命、ねえ…生き物はそれこそ、他の生き物の命を奪って生きてるだろう?たとえ菜食主義者であったとしても、植物の命を奪ってるには違いない」
 「…偽善だって仰るんですか」
 「そこまでは言わないよ。君の優しい気持ちは大切なものだと思う。だけどね、この龍はたくさんの人たちにとって現実に脅威であり恐怖でもある、だから俺が頼まれてここに来た。君はその、たくさんの人たちの安心には価値がないと思うかい?」
 「そんな…そんなわけ、ありません…」
 のろのろと緩める手から、上等な生地の感触がすり抜けていく。キョーコは今日一日でずいぶん印象の変わった蓮に、また新たな一面を見出していた。冷徹、と言うのだろうか。考え方としておそらく正しいのだと思いはするけれど、完全に同調できる気がしない。
 なぜだか、それがひどく哀しかった。
 細い息を震わせ、彼女は魔法界の頂上にも位置しようかという男の顔を見上げる。
 「…!」
 蓮が息を飲む様子に気付いて首を傾げた。偉大な先輩魔法使いは黙り込んだかと思うと少し考え込む顔をしてから、ふたつみっつ緩くかぶりを振った。
 「仕方ないな…」
 「?」
 「蒼き戦神の矢 大地を訣てる閃きよ
 刃に宿りて力となれ…」
 カリスマウィザードは低く唱えて短剣の上に手をかざす。銀色の刃に、ぼうと赤青い輝きが宿った。
 (魔力付与…!)
 連発される高等魔法の数々に、圧倒される思いでキョーコは拳を握る。自分も、いつかはこんな風にという願いが湧き上がった。
 蓮は炎と雷の魔力をまとった短剣を手に、優雅な足取りで眠り続ける龍に近付いて行く。規則正しく上下する頭部の横に立ち、斜めに突き出された角に手をかけた。ぐいと引っ張ってその根元に短剣を当てると、金剛石に次いで堅いと言われる龍の角はチーズか何かのようにするすると斬れて行く。
 「退治の証拠はこれでよし…」
 切り取った角を傍らに置き、蓮は短剣の上で印を切った。解呪された刃は再び白光を噴くような銀色に戻る。
 あれでとどめを刺すのかと思ってハラハラ見守っていたキョーコは、続いて指先で宙を薙ぐ蓮の姿に見入った。また、違う魔法を使うらしい。
 「光たる光 あかつきを連れ来たる天の花…」
 低い詠唱を、キョーコは細心の注意をもって聞く。今まで文献でも見たことのない呪文だった。
 蓮の足元から光芒が立ち上がる。ふわりと黒いマントが膨らみ揺れ、形成されて行く力場を感じさせた。うねるような波長に包まれて、魔法使いは長い腕を抱き取ろうとするように龍へと差し伸べる。
 かっ。光が溢れた。キョーコは眩しさに腕で目を覆う。
 光の爆発は数秒続き、徐々に収まり始めた。




 「済んだよ」
 蓮がすこしからかうような声を投げると、キョーコは恐る恐る目を開く。
 「…え」
 緑鱗の龍の巨体が消え失せていることに驚いた顔をした。地面にはかわりに、ぽて、と伏せてすーこすーこ寝息を立てている生き物がいる。と言うか形が龍のままだ。ただ、サイズがまるで違う。頭から尻尾の先まで入れても50cmになるかならないか。
 「…!?敦賀さんっ、これ…」
 「うん、あの龍だよ。リサイズしてみた。魔力の源である角も切ったし、このくらいチビなら大して脅威にならないだろ」
 「ならないだろ、って…」
 絶句しているキョーコに、蓮はごくあっさりと言い放った。
 「君、これ飼ってね」
 「えええ!!?」
 「殺したくなかったんだろう?でもそのままにしておくわけに行かないし、ってことでこうなったんだから、君の責任じゃないかな?」
 「そ、そんな!龍を飼うなんて」
 「大丈夫。ちょっと強力なライターくらいのものだから、意外に便利かもしれないよ」
 強力に微笑んで言い切ってやると、キョーコは選択の余地はないことを悟ったらしくせわしなく頷いた。
 「わ、わかりました。面倒見てみます…」
 「うん。まあ、何かあったら言って。俺も時々様子見に行くし」
 蓮は屈んでチビ龍を抱え上げ、キョーコから自分の会心の笑顔を隠した。そう、『しめしめ』的な。
 「はい。あ、これも君が持ってた方がいいな。念のために」
 眠り続ける小さな魔獣とキョーコ自身の作った眠り薬を渡し、にこりと促す。
 「はあ…」
 へっぽこ魔法使いがやむなく龍を抱き取った。
 「龍って、何食べるんですか…?」
 「うん?マヨネーズライスでいいんじゃないかな。栄養価が高いんだろう?」
 「マヨネーズライスは無敵です!」
 我が意を得たり、と頷くキョーコに苦笑しつつ、龍の角を拾った蓮は 片手を差し伸べた。
 「じゃあ街に帰ろうか、協力者さん。「ノスタルジア」で食事でもどう?」
 耐乏生活を送るキョーコの憧れである超有名ハンバーグ専門店に誘ってみる。彼女のツボだと信じて、彼女の笑顔が見たくて。
 しかし隣で共に歩き出した少女は、きょん、と首を傾げるのだ。
 「敦賀さん、お腹すいたんですか?」
 「え、あ、まあ…そうかな」
 「じゃあ、これどうぞ」
 キョーコが笑顔を浮かべ、自分の鞄から何か取り出す。望んだ通りの表情に気を取られ、彼はうっかり受け取ってしまった。
 ラップにくるまれた白いお握りを。
 「あ、りがとう。ええと、これ、具は…」
 もう一度もらった笑顔は、最高に可愛かった。
 「もちろん、マヨネーズです!」
 ああもう、無敵なのは君だよ…
 蓮のごく小さな呟きは、うきうきと鞄からもう一つ白い塊を取り出すキョーコには届かなかった。




-了-


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 チビ龍哀れ…マヨネーズライスじゃイカンだろ(笑)。

 さて、むてマヨ終了です。山口マヨネーズ様のナイス設定をお借りした三次創作、とても楽しくツルッと書けました。皆様にも楽しんで戴けましたならとても嬉しいのですが!
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