スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

最終兵器あの子(5・完結)

 「ちょっと、ちょっと待って下さい!俺はそんな風には…」
 堪りかねたような抗議の声を途中で止め、蓮はふと目を泳がせる。記憶を順繰りに辿る様子を、社はじりじりしながら見守った。
 「あの時、彼女は…営業部の何とかって言ってましたか、LMEの社員に告白されてて」
 低く呟かれる言葉に驚く。
 (うわ。社内では“敦賀蓮のお気に入り”認定されつつあるキョーコちゃんのところに、そんな勇者が現れてたのか。むしろ気の毒だな。って言うか、“敦賀蓮”が立ち聞きとかやめて欲しい…)
 「断りこそしたものの、あの子が一人になってから悩ましげに溜め息なんかつくから。たまらなくなって、出て行って」
 「うん…?」
 ぽちぽち紡がれる情景を想像しながら聞いていた社は、自分はこの辺りで行き合わせたんだなとひっそり頷いた。
 「最上さんの肩を、強めにつかんでしまって、視線を合わせて、『もう我慢できない』って」
 社の額に微細なヒビが入った。担当俳優を見る目に不安が過る。
 「愛してるって告白して…『今すぐ』………」
 「蓮?」
 止まってしまった蓮に、マネージャーは不安を増大させながら先を促した。しかし“抱かれたい男№1”は声もなく石化している。
 徐々に、徐々にその硬化が解け始めた。
 ぎちぎちぎち。軋む首が、ゆうっくりマネージャーへと向け変えられて行く。
 (ごめん、怖いんだけど…)
 「…どう、しましょう。社さん…」
 それは社でさえ初めて聞く、途方に暮れまくった声と言葉。余人ならず、“敦賀蓮”の。
 「言った、かも…と言うか、飛ばした、かもしれません……」
 「は?」
 「だから、さっきの台詞です。
 「俺は、『今すぐこの場で君を抱き締めたいんだ』って言うつもりだったんですが、そう言えば、2文字ほど飛ばしたような気がします」
 「……」
 今度は社が石化した。ただしこちらは解除が早い。
 「れ…ん……」
 眼鏡のマネージャーは首をグラグラ左右に揺らし、へたへたとソファの背もたれに沈み込んだ。
 「お~まえええ~…何やってんだよ一体。よりによって、なんでそんな致命的な2文字を抜かしちゃうんだ!?仕事なら絶対やらないミスだろ…」
 「いや、なんでと言われても」
 蓮は困惑している。それが何やら年相応に見えて、いつもの落ち着き払った顔よりも可愛げはあるかなと社は思ってしまった。はー、と溜め息が出る。
 「抱き締めたいと抱きたいじゃ大違いだろ、しかもあんな場所じゃ」
 「すいません…」
 「俺に謝ってどうするんだよ、まったく」
 しかし、言葉の割に、社の顔はやわらかく綻んでいた。
 「社さん?」
 蓮の不審顔に、彼はぱたくた手で顔を扇いで嘆息する。
 「でもちょっと安心した。蓮がコワレたりキレたり血迷ったりしたわけじゃなくて。いやある意味その全部かもしれないけど、まあオチがそんなところで。一時はどうなることかと思った…」
 「はあ、すいません」
 「だから、謝る相手が違うだろ。お前に強烈なセクハラされても、ちゃんと食べてるのかって心配してくれる可愛い後輩女優ちゃんとかさ?」
 「最上さんがそんなことを?」
 「決定的に嫌ってたら、そんなこと言わないよなあ?」
 「…っ、でも、単に食へのこだわりかもしれないじゃないですか」
 「そう思いたいのか?」
 少し意地悪くマネージャーが問うと、俳優はぐっと息を飲んでから身を乗り出すようにした。
 「社さん、あの」
 「今すぐは無理だぞ?」
 「わかってます、でも」
 敏腕マネージャーは眼鏡の奥から担当俳優ににたりと笑いかけ、スケジュール帳を取り出してかざす。
 「そう言えば、悪い、言い忘れてた。ここが終わった後、取材が入ってたよな、雑誌の」
 「はい…?」
 「あれ、なぜか延期になったから」
 「え」
 「その次の仕事は事務所の近くだし、ここの終わり時間次第じゃ移動を含めて3時間以上浮くんじゃないかな?」
 「社さん…」
 「ちなみに今日、ラブミー部は夕方まで事務の手伝いに駆り出されてるらしい」
 「現場の様子を見て来ます。復旧してたらそのまま入りますから」
 長身の俳優がすっくと立ち上がった。戻って来る前に時間調整してくれたに違いないマネージャーに一礼して控室を出て行く。
 ふす、と社の鼻から空気が洩れた。
 「やれやれ」
 一人になったマネージャーは苦笑をこぼし、ソファの背にだれ~んともたれかかった。天井を見上げて呟く。
 「ほんと、一時はどうなることかと思ったよ…
 「それにしても、すごいなキョーコちゃん」
 敦賀蓮を一瞬でへこませ、一瞬で張り切らせる活殺自在、唯一絶対の人物。
 すべてを決める        
 「最終兵器あの子、なんてね」



―完― web拍手 by FC2


 だから戻って来るのが時間ギリギリだった社さんです。
 キョーコにあやまりたおす蓮も書こうかと思ったんですが、ちょっと独立させて書きたいシーンがあるので、そちらに回します。ここのシリーズに入れるようにするかも…?
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
作品一覧
サイト「花うてHP!」トップよりブログ内の作品のリストに飛べます。閲覧者の皆様のアクションに対して加算させて戴く「花うてポイント」の説明・管理もこちらよりどうぞ!

作品リスト(サイトトップ)

アクセス

・メールフォーム

・BBS

リンク

◆リンクページ


◆当ブログへのリンクについて

当ブログはスキビコンテンツをお持ちのサイト様に限りリンクフリーといたします。


ブログ名:花のうてな

管理人名:みなみ なみ

URL:http://hananoutena.blog14.

fc2.com/


 ↓各ジャンルごたまぜの本サイト。

↓スキビの同人誌作品をブログ記事として収載・販売しています。(2014年7月までで更新停止)

 ↓BUD BOY二次です。


  • 管理画面
  • RSSリンクの表示
    QRコード
    QR
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。