たいせつでたいせつで(63)

 (閃光弾!?)
 とっさに腕で庇いながら、クオンは強く目を閉じる。物理的な圧力すら感じる光量に、瞼の裏が白くなった。
 「うわ!?」
 「なんだ、眩しい…」
 焦るチンピラどもの中、エミリオの叫び声が飛ぶ。
 「バカ野郎、目ェつぶったまま撃つんじゃねえ!!」
 「けど兄貴」
 「ぎゃっ」
 「ぐ…」
 バタバタと室内に駆け込んで来る足音に続き、断続的な悲鳴が上がり始めた。しかし、やはり打撃音ばかりで銃声がしない。一体どうなっているのか…
 光が瞬いて収束し始めるのを感じ、クオンはそろそろと目を開いた。すぐ目の前に、黒いタクティカルブーツの爪先。上へ辿ると、黒っぽい人影が屈み込んで手を差し出して来たところだった。
 「大丈夫ですか、クオン・ヒズリ」
 「ええ…?」
 少年は手袋をした手に助け起こされ、ぼんやりと周囲を見回した。
 目の前の人物を含め、ツナギの上にボディアーマーを着け偏光グラスをかけた筋骨たくましい男たちが数人、のしたチンピラをまとめて縛り上げたり銃で小突いて集まらせたりしている。恐ろしく手際がいい。
 「あなた方は…」
 尋ねると、男はすこし口元を歪めた。
 「貴方のお父上に雇われたセキュリティガードです」
 どうもガードマンと言うよりむしろPMCと呼びたい風貌だが、ともかくも救いの手であるらしい。
 「って…もしかして、ずっと俺について」
 「ました。ここ2週間ばかりはずっと」
 「全然気がつかなかった…」
 「我々もプロですので」
 もう一つ笑うと、男は反対側の壁際に立たされているヴィットーリオに向き直る。
 「そういうわけなので彼は連れて行くが、異論はないな?」
 伊達男が肩をすくめた。
 「そのお父上によろしく願いたいね」
 「伝えておこう。
 「では」
 と促され、クオンは背後の二人を振り返る。
 「この二人も連れ出したいのですが」
 「それは契約に入っていませんね。そもそも当社は、そちらの彼が貴方に行き過ぎたことをしでかさないように警戒して欲しいと頼まれたのですが」
 あっさり首を振る男に、マフィアのボスも同調した。
 「そうともヒズリ・ジュニア、彼らのことは彼らに責任を取らせるべきだ。トミーは我々の顔に泥を塗った…こちらとしても恥ずかしい話だが、うちの者から銃を盗んだんだし、そちらの女性はそれを承知の上で彼を匿った。どちらも重罪だ」
 そう言われても、真っ青になる二人を見るにつけクオンははいそうですかと自分だけ帰る気になれない。
 「銃は返させます。許してやって下さい」
 きっぱり言い切ってまっすぐヴィットーリオを見据えるが、慌てた声を上げたのはトミーだった。
 「おいバカ、余計なこと…お前はさっさと帰ればいいだろう!?俺がその銃で何しようとしてたかわかってんのか!」
 「まったく想像もつかないとは言わないよ」
 鋭い視線が飛ぶ。気を呑まれたトミーが絶句するのへ、クオンは仕方なさそうな息を吐いた。
 「だけど仕方ないだろ、それとジニーごと見殺しにするのとは別の話なんだから。そんなマネしたら、俺は大事な人に顔向けできない男になる…
 「そうだ、お前にはあの子を怖がらせた報いを俺の手から受けてもらいたいし」
 「…!」
 トミーの肩が動く。
 「かっ…かっこつけも大概に…」
 「はは!」
 突然、笑い声が弾けた。ヴィットーリオだ。
 「クーの息子はなかなか面白いな!」
 「褒め言葉ですか?」
 「勿論。クオン・ヒズリ、君は素晴らしい。父親に負けないくらいの目力と胆力、更に父親以上の美貌まで身に具えている」
 「え…」
 クオンは一瞬息を飲む。ずっと欲しかった言葉、彼を彼として評価する言葉をこんな所で貰うとは。
 イタリアンマフィアは気障に肩をすくめ、ちらちらと拘束された手の先を振った。
 「好きにしたまえ、クオン。彼らは君に預ける。ただし、できるだけ速やかに盗んだものを返しこの街を出て行ってもらう、という条件で。破格だろう?」
 クオン・ジニー・トミーが目を瞠る。
 それから金の髪の少年は、晴れやかに笑った。
 「太っ腹ですね、パパ・ヴィットーリオ」
 「なに、勝ったのは君だよ」



 「お父上に確認しました。あなたが不要と仰るなら、我々はこれで撤収して良いそうです。ここまででよろしいですか?」
 ジニーの店の前で三人を車から降ろし、携帯を閉じたガードマンはクオンに尋ねる。
 「ええ、結構です。お疲れ様でした…たぶん想定外のマフィア戦までさせて申し訳ありませんでした」
 丁寧に詫びる少年に、男はあっさり笑った。
 「お蔭で売上が大幅に伸びましたよ」
 ええ、父からふんだくって下さいと笑うクオンは、勝手に護衛をつけられてやはり怒っていたらしい。去って行く車を見送り鼻息を噴く。
 「…さて。とりあえず、中で少し話をしようか?」
 くるりと振り返ると、所在無げな二人を人の行き交う通りから追い立てた。
 
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 PMC…民間軍事会社。
 実はSEALs(米海軍特殊部隊)的(要するに荒っぽい)と言われていたブ○ックウォーター社(現在社名変更)をモデルにした会社が、特に頼まれて抑え目に活動してみたなんていう裏設定があるのです。名乗らせたかったんだけど、小なりと雖もマフィアんとこカチ込んで名乗るバカはいないよね、と諦めた次第。

 あ~やっぱ傭兵モノ書きたいかも~。ハリウッド的な景気のいいやつ。
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