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たいせつでたいせつで(64)

 「お前、何考えてんだよ」
 店に休業の札を出しに行くジニーを目で追いながら、トミーは短気そうに問う。
 「それは言ったと思うけど」
 対するクオンも、けして機嫌が良いとは言えない。投げつけるような答えに、助けられた少年としては納得も行かずさりとて責めるのも確かに妙な話だと黙り込んだ。
 「お前がどうして俺につっかかって来るかの理由もわかったし…スッキリ終わらせたいんだよ、俺は」
 金の髪の少年は長い腕を振り、状況の代わりに空気を切った。
 「俺が、それで…そうしてやるつって、お前にいま銃向けたらどうすんだ」
 狡いような眼つきで見上げられ、彼はそれまで形のいい鼻からフンと息を噴く。
 「好きな女性を自分の事情に巻き込むような根性なしの弾に当たるもんか。俺は大事な子を守るために生きてるんだからな」
 「根性なし…まあ、否定できねえけどよ…しっかしお前」
 トミーがぼしょぼしょ呟いた。呆れたような顔をしている。
 「なんだ」
 尋ねれば、やけにしみじみと
 「お前って、そんな奴だったっけか?つうか…
 「あのガキんちょに、そんなにマジなのか……すげえな」
 いっそ感心したような口調から毒気が抜けているのに気付き、クオンはひっそり苦笑した。
 「ほっとけよ」
 「ちなみに、どこがそんなにいんだよ」
 「うるさい。教えるもんか、キョーコちゃんの良さは俺だけわかってればいいんだ」
 すげなくあしらいながらクオンは、かつて流れていた空気が少し戻ったような感覚を覚えていた。何となくつるんだりふざけたり離れたり、親しいというほどではないにしろ気が置けるというのでもない。そんな、気楽な距離感。もう、失ったはずの。
 そう、失ったのだ。それぞれに大切な存在があり、そのために対立が生まれた。
 そっと溜め息をつくクオンの耳に、似たような音が届いた。
 「…悪かったよ」
 「は?」
 思わず聞き返すと、トミーは目を怒らせ頬を染めてがなりたてる。
 「んだよこの野郎、オトコに何度も頭下げさせんじゃねえよ。潔く謝ってやってんだろ!?素直に受け取れよ」
 頭なんか下げてないだろ、とクオンは思ったが口にはせず、わざとらしくヤレヤレジェスチャーをして見せた。
 「厚かましい言い分だけど、仕方ないな。俺はいい男目指してるところだし?」
 「っ、このやろ…それが素か!?今までのお前って、マジ何だったんだ」
 「だから、ぐれてたんだろ」
 グレてる方が落ち着いてるってどうなんだとか何とか呻くように呟き、トミーは長い溜め息を洩らした。
 「なんか、バカらしくなった…」
 「今頃か?俺はとっくにだけど」
 「ああ…
 「なあ」
 不良少年は、何か思い決めた者の瞳でまっすぐにクオンに見る。クオンはそれを受け止め、ほんの少し首を傾げて先を促した。
 「俺の足、折れよ」
 「は?」
 「俺がしたみたいに」
 ぐ、と拳を握り締めるトミーに、やはり金色の眉が器用に片方だけ上げられる。
 「そんなこと、意味ないだろ。お前たちはこの街を出なきゃならないんだし、お前の足が折れてたら大変なのはジニーだ」
 後半はいつの間にか戻って来てトミーの後ろで青い顔をしているジニーに聞かせるように、クオンは穏やかに言う。トミーが低く呻いた。
 「…くそ、じゃせめて、殴れよ」
 「嫌だね、殴る方だって手が痛いんだからな。そんなことより、約束しろよ」
 「わかってるよ、銃は返すし街も出る。もうお前らに絡むこともねえよ」
 「それもだけど…ジニーを大切にしてやれよ。少なくとも、ジニーがお前の傍にいてくれる内は」
 揶揄も忍ばせて言うクオンに、トミーは不承不承頷いた。
 「わかってるよ…」
 拗ねたような呟きを、クオンは聞かなかったふりをした。
 なんだよ、いい男ぶりやがって。差つけやがる。




 帰宅すると、父も母もまだ帰っていなかった。広い家の中はあくまで静かで、ひどく冷たい感じがした。慣れた自宅なのに、と自室に引き上げながらクオンは首を傾げる。
 不意に気付いた。キョーコの気配がないからだ。
 ベッドに腰を下ろし、クオンは自分とキョーコの部屋を区切る壁に目を投げる。溜め息が出た。
 (これから、何年こうなのかな?)
 自分は確かに、淋しいのに違いない。キョーコはなんといろんな感情を教えてくれるんだろう。ジャケットのポケットから携帯電話を取り出し、時計を確かめてからだるまやの自宅番号を押した。
 数コールで出たのは、愛らしい少女の声だった。両親はまだ店に出ているはずだから、狙ったわけだが。
 『はい』
 耳をくすぐるやわらかい響きに微笑が浮かぶ。
 「やあ、キョーコちゃん」
 『クオン?どうしたの、忘れ物でもした?』
 「いや、大丈夫。キョーコちゃんの声が聞きたくなっただけ」
 『え、ええ~?夕方まで一緒にいたのに』
 「君の声なら、一日中だって聞いてたいよ」
 キョーコが絶句する気配。今、真っ赤な顔をしているのだろうかと想像してクオンはクスクス笑った。
 『あ、もう。からかったのね!?』
 怒り出す少女に信用がないなあと嘆いて見せ、彼は不意に口調を変える。
 「ねえキョーコちゃん、大きくなろうね」
 『うー…どうせ私はチビだもの。でも、クオンだっておっきすぎるんだからっ』
 「違うよ、そうじゃなくて。
 「俺はね、もっと成長して、君に相応しい男に、自分の力で君を守れる男になりたいんだ」
 『クオン…?』
 何か感じたのだろうか。キョーコの声がひそやかに彼の名を綴る。クオンはどこかしら甘いおののきを感じさせるそのひびきをつかまえようとするように拳を握った。
 「なるから」
 たぶん自分の声には、炎が潜んでいると彼は思った。まだ齢の進まない少女を怯えさせないようにひっそりと、けれど無垢な心に刷り込むように。
 その時は、俺のものになってね。
 伝えなかった言葉の代わりに、彼は対応に困っている様子の少女に小さな笑声を送った。
 「大きくなろう」
 『う?うん…えっと、でも』
 何か言いたげにするのを待つと、遠慮がちな声が電波に乗って彼のもとに届けられる。
 『クオンは、ゆっくりね?置いてっちゃ、嫌よ?』
 「         
 クオンは自分の頬に驚きと笑みと血の色がのぼるのを感じた。
 『クオン?』
 心配そうな声に呼びかけられ、彼は熱心に言う。
 「勿論…俺は君を置いてったりしないよ、キョーコちゃん。絶対。約束する」
 『うん…信じてる』
 「!」
 それから、(必死に立て直して)もう少し他愛無い話をして。
 お休みを言い合って電話を切ると、クオンは火照る顔を押さえてベッドに仰向けに転がった。
 「あー、もう…あの子は……」
 俺を何回殺すのかな。
 呟きながら彼はその片方で、キョーコに携帯電話を贈る理由を模索し始めるのだった。



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 たまにはクオ坊にごほうび?いやもしかすると逆かもしれませんが(笑)。
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