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あした世界がおわるとしても(4)

 もう2/3ほどの行程はこなしたと思う。
 空は早や暮れなずみ、藍色の天球を墨のような雲がのろのろと蠢き覆って行く。じきに、灯りのない街はおよそ都会人の忘れ去った始原の闇に沈むことだろう。
 なのに、ここへ来てこれか。
 と蓮は、潮臭い風に吹き寄せられては足元に這い寄る水を忌々しく見下ろす。
 彼の前には、一帯水没した街並みがくろぐろと広がっていた。とにかく最短距離を採って来たのが裏目に出て、相当に大きく迂回する破目になりそうだ。
 周囲には、とりあえず警報が解除されたらしく人の姿と声が戻って来ている。それにしても、茫然と座り込む者の多い男に引き比べ、テキパキと片付けや物品の回収を始める女性たちの姿が何ともたくましい。
 なるほど女性の適応能力というものは大したものだ、と自らの恋人を思うにつけ蓮は感心する気持ちになった。これは、身のうちに永遠を宿す性であるためなのだろうか?
 どうん、という鈍い音に振り返ると、どこから調達したのか遊具のようなビニールボートを水面に下ろし、しきりに近くに立ち尽くす男を手招く女性の姿があった。
 「ほら、あなた。行くわよ。貴重品と、できるだけの生活用品も持ち出さなきゃ」
 「あ、ああ…」
 「しっかり漕いでちょうだいね」
 生返事を返す夫にプラスチックのオールを渡し、彼女はきりりと黒くうねる水に浸る我が街を見渡す。導きと守護の女神とも見紛う頼もしさに、蓮は唇に微笑が浮かぶのを感じた。きっとキョーコだって無事でいる、そんな気がして。
 同時に、ふと疑問を覚える。
 無事でいるなら彼女は、果たしてじっとしているだろうか?
 自問への結論はすぐに出た。とてもそうは思えない。
 (そうだな…)
 まず揺れが収まれば、ともかく状況を確認する。都内中に避難勧告が出ているし、蓮の部屋に下手に居続けては高層難民となってしまうかもしれない。
 となれば。手早く(多分彼の分まで)荷物をまとめ、戸締りもきっちりした上で部屋を出るのではないか。伝言を残すなら、差し詰めエントランスの郵便受け。
 そして向かう先は?
 蓮は眇めた目の奥で暫し思案する。最寄の避難場所、もしくは彼女の自宅。他に選択肢もないではないが、このどちらかである可能性が最も高いと思われた。
 ではどうする。
 ともかくも、彼女がいないか、あるいは伝言を残していないか見確かめに一旦彼のマンションに戻るか。
 それとも、方向こそ逆だがここからならむしろ近い彼女の部屋に向かうか。
 蓮は問いかけるような視線を刻々色を濃くする空に投げた。どうすれば、君に一番早く会える?
 空も雲も風も答えをくれるではなかったが、ただ、目の端を白いものがかすめた。
 東の空、ビルの窓だろう高い位置で小さな灯りが点る。続いて、ポチポチと光が散らばり始めるのが見えた。
 (電気が復旧したのか…)
 停電が昼間でなかったら、もっと沢山の灯りが一斉についたのかもしれない。
 そんなことを思いながら視線を移すと、断線でもあるのか西側は暗いままだった。
 心が決まる。
 キョーコが一人で灯りもないままの場所にいるのなら、一刻も早く駆けつけなければ。長身の影は西へと足を向け変え、速いペースで歩き出した。






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 少し短めですが、キリにします。
 予定とちょっと違って来たんですが、予定の筋書きの方に無理があったので仕方ないですね~。ともかくがんばろ。
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