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たいせつでたいせつで(67)

 「こっちだよ、キョーコちゃん」
 クオンは先に立ってキョーコに手を差し伸べた。地下鉄の駅を出れば、マカナンに指定されたスタジオまではほど近い。キョーコは素直に手を預け、彼女には少し段差の大きい階段を一生懸命に上る。
 「はー、やっと着いた…」
 はふー。やっと地上に出たところで息をつき、少女はきょろりと周囲を見回した。繋いだままの手には気付いていない様子をいいことに、少年はそのままにこにこ歩き出す。
 「さっき電話入れたら、守衛には言っておくから第3スタジオに直接来いって。監督は何か作業でもしてるのかな」
 「え、じゃお忙しいんじゃ」
 「大丈夫だってば」
 子供らしくなく気を遣うキョーコに、クオンは急いで言った。
 「およそ、気が向かないようなことを自分から申し出るような人じゃないんだ。迷惑とかだったら始めから誘って来たりしないよ」
 「そうなの?」
 「うん」
 少女の不安を払拭すべくにっこり頷き、彼はゲートを守る守衛に近付く。エングリンの頃に彼を見知っていた男だったことも手伝い、すぐに通された。
 「ひろいのねえ…」
 日本の少女は高い天井を見上げてぽかんと口を開ける。
 「キョーコちゃん、下見て歩かないと躓くよ」
 クスクス笑いのクオンに彼女は赤い顔ではあいと返事をし、そこでやっとまだ手を繋いでいることに気付いた。
 しゅぽ、と掌から抜け出る小さな手を少年は惜しげに見送り、頭上にいただく金糸を揺らして立ち止まる。
 ノックすると、中から気軽かつ粗雑な声が飛んで来た。
 「おう、入れ」



 「あの、一体…」
 クオンは当惑のままにマカナンを見遣る。
 指定された部屋に踏み込んだ瞬間にキョーコと二人ながら捕獲され、引き離された。彼の方はヘアメイクの手に渡され着替えさせられてから別の部屋、と言うかスタジオに連れて来られたのだが、似たような目に遭っていると思われるキョーコがなかなか現れない。
 (例の、妖精の衣装っていうのを着せられてるんだと思うけど…)
 彼まで着替えさせられたのが解せないが、それよりもキョーコだ。
 大丈夫だろうかと心配になって映画監督に抗議の視線を送ったところで、背後で空気が動くのを感じた。両開きのスイングドアが揺れて吹き込んで来た風に振り返ると、そこに、
 妖精が立っていた。
 愛らしく、
 華奢で、
 純粋で、
 儚くて。
 透明な、大気に溶けて消えてしまいそうな虹色の羽を背に負い、キョーコははにかんだ笑顔で彼を見る。それからふんわり膨らむ真珠色のスカートの裾に躍る花々を見下ろし、こそりと尋ねた。
 「えっと、へ、変じゃない…?」
 クオンはジャケットの裾を靡かせ、大股に少女に歩み寄る。三歩前で立ち止まると、じっと彼女の姿に見入ってから残りの距離を詰めた。キョーコの両手を取って拡げさせる。手に伝わる体温に、安心したような吐息を洩らした。
 「すごく…かわいい」
 花を編みこんだ髪に触れるか触れないかの位置でそっと囁くと、キョーコの白い肌が一気に真っピンクに染まる。
 「も、もうクオンは…」
 「ほんとに。人間じゃないんじゃないかって心配しちゃったくらい素敵だよ、キョーコちゃん」
 「……~~~」
 絶句するキョーコと甘やかに微笑むクオンの間にほわほわした空気が生まれる。
 「チービーズーリー」
 呼びかけるマカナンの声からは、呆れと照れがぼたぼた滴っていた。



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 わしが泣きそうです。
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