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あした世界がおわるとしても(5)

 細い声が聞こえた。
 倒壊したビルの残骸に、懐中電灯を持った何人かの人影がとりついている。いや、よく見ればその中心には地面に寝かされている小さな影と、それに抱き縋って身も世もなく泣きむせぶ女性の姿があった。
 「みれい…深令以ちゃんっ…目を開けて、お願いっ……」
 子供を亡くしたのか、といたましく思った時、周囲を取り囲む人垣の中から溜め息が洩れる。
 「恭子さん、とにかく遺体を綺麗にしてあげて」
 母親のものだろう名を聞いた途端、蓮の心臓が跳ねた。きょうこ。
 「遺体なんて言わないで!!」
 「恭子」
 彼が求めて已まない少女と同じ名を持つ女性はうわずった声で叫び、傍らに屈む夫らしき人物の手を振り払って激しくかぶりを振る。
 「信じない。こんなこと、信じない…!!」
 「恭子、落ち着け…深令以はもう」
 「あなたまでそんなこと!?これは何かの間違いよ、こんなことあっていいはずないもの。みれいはもうすぐ目を覚まします!!
 「覚ますん…だからっ…あああああ!!」
 泣き崩れる姿を見ていられず、蓮はそっと視線を外した。人垣の中から胡乱げに振り返る者もあり、止まってしまっていた足を再び動かし始める。
 それでも、どこか気持ちの一部を残してしまったような感覚を覚えた。
 もしも、と考えずにはいられない。
 もしもキョーコと結婚し、彼女が彼の子供を産んで。…くれたら。
 もしもその子が、こんな風に不慮の事故で命を落としたなら。
 自分は、そして彼女は…?
 「…!」
 蓮はひとつ深呼吸して、その不吉な想念を追い払った。今は影もない未来よりも、キョーコのことだ。キョーコがあんな風に、泥まみれ…で…
 冗談じゃない!!
 気が急いた。もう彼女によほど近づいたはずだと思えば更に。
 自分の、余人よりも大きな歩幅さえ足りないばかりでもどかしい。
 なのにそれすらも、闇と瓦礫に邪魔されて思うままに運べないのが腹立たしい。
 その上…
 彼女のマンションへの目印になる建物の影がうまく見取れない。いまだに電気が復旧しないことは仕方ないとしても、せめて雲間の月明かりくらいは与えてもらいたいと思った。
 (もう、近くまで来たはずだけど…距離感がつかみにくいから、それも自信はないな)
 苛立ちと共に暗い空を見上げた蓮は、額に浮く汗を手の甲で拭いながら顔をしかめる。
 (とにかく、一本入ってみるか)
 考えて視線を地上へ戻した時、
 「…っ!」
 息を呑む気配がして、彼はさっとそちらに目を向けた。




 
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 最近はヤンキーかオタクかってくらい子供の名前に凝るようなので、それに倣ってみました。
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