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氏より気持ち

 『何しに来たんだよ、バカ兄貴!』
 『何って、ずいぶんな挨拶だな。自分の家に帰って来ちゃいけないのか?』
 『ここはもうアンタの家じゃねえよ』
 睨み付ける弟の姿に、長身の兄は大仰に嘆息する。
 『変わったなあ、お前。昔は俺のあとばかりついて回ってたのに。あの可愛い弘はどこに行っちゃったんだ?そりゃ、今でも見た目は可愛いけど』
 『可愛い言うな!くっそ、この巨人。店もみども俺が守るんだかんな、アンタはとっとと帰って二度と来んなってんだ!!』



 (…ふうん)
 小気味いいテンポでスパンと切られる啖呵に、先に出番を終えた兄役の蓮はセットを降りながら内心で感嘆を覚えた。弟役は子役とは言えキャリアは充分、小学生ながらヒロインの少女を巡って兄とやりあうませた子供を不足なく演じ切っている。
 上杉飛鷹、12歳。中学に上がったばかりだがそれにしては体が小さく、いまだに小学生の役ばかり貰っているようだ。
 名前は、以前から蓮も知っていた。著名な祖父・父・母を持つ芸能界のサラブレッドとして。眩い七光りを一心に浴びて…
 という触れ込みは誰に聞かされたのだったか。
 二世と言い、三世と言う。
 功成り名を遂げた親や係累に続いて同じ職業を選んだ者について回る呼称。それをどう受け止めるかは当人の問題だが、余人が思うよりも不都合が大きいことも確かだと蓮は思う。
 現に自分自身…
 「敦賀さんっ」
 過去へ向かいかけた心を引き戻され、蓮はやや虚を衝かれた格好で視線を移した。少し低い位置にぴょこりと現れたのは同じ事務所に所属する後輩の顔。
 「おはようございます、今日もよろしくお願いします!」
 ヒロイン・翠役の京子が笑顔できっちり一礼するのへ、蓮は苦笑気味の笑顔を向ける。
 「やあ最上さん、こちらこそ。…助かったよ」
 「はい?」
 「何でもない」
 ぽつりと追加された一言に小首を傾げるのをそっとごまかした。ともかく、彼は自力で頑張っている。自分がどうこう考えるのはむしろ失礼と言うものだ。
 「でも早い入りだね、今日は午後からじゃなかった?」
 「あ、はい。そうなんですけど。前の仕事が早く終わったので…敦賀さんにお会いしたくて」
 「え」
 跳ねる俳優の心を知らず、少女は人差し指をぴぴぴと振った。
 「お昼に間に合えば、ちゃんと召し上がるかどうか見ていられますからね!」
 「おっ、心強い味方が現れたなあ」
 ゴム手袋を外しながらメガネのマネージャーが現れ、キョーコはそちらにもぺこりと頭を下げる。
 「おはようございます、社さん。お電話でした?」
 「うん、事務所からね。
 「蓮、俺ちょっと事務所行かないといけなくなった。ここが終わる前には戻れると思うけど」
 「そうなんですか、わかりました」
 「キョーコちゃんが見張っててくれればちゃんと昼も食べるだろうし、心置きなく行って来れるな!助かったよ、キョーコちゃん。監視よろしくね」
 「はいっお任せ下さい!」
 少女がぴっと敬礼し、蓮は苦笑した。それじゃと言って去って行く社を目で見送った蓮が、セットから引き上げて来る子役の姿に気付く。
 と思えば、飛鷹はずんずん自分たちに歩み寄って来るではないか。
 「おい」
 横柄な声をキョーコに向けるので、蓮は軽く眉を顰めた。
 しかし本人に気にした様子はなく、くるりと振り返って笑顔を見せる。
 「あ、おはよう飛鷹くん。お疲れ様」
 「何くん呼びしてんだよ、この黒魔女。俺はお前の大先輩だぞ?」
 少年はどこまでも居丈高だ。
 想う少女をぞんざいに扱われてトップ俳優はやや不快を覚えたが、先にキョーコが反撃に出た。
 「ああ~ら、そんな態度取っていいのかしら?」
 「ああ?」
 しゃらん、と指を振る姿に少年が口を歪めるが、彼女は平気な顔で肩にかけたバッグから何かの紙片をぴらりと取り出し相手に突きつけて見せる。
 「これが欲しくない?」
 「何だよ…って!」
 「そうよ、プ・リ・ク・ラ」
 その単語に反応したのは飛鷹だけではなかった。先程から自分を置き去りにしまくった遠慮なくテンポのいいやりとりに疎外感を抱えていた蓮もまた、恋しい少女の写真シールなら俺も欲しい、いや待て飛鷹が欲しがるというのはどういうことだとぐるぐるする内心を抑えて質問を…いや確認を放つ。目線はついつい、ヒロインを争う弟役に向けてしまったが。
 「最上さん、プリクラ撮ったの?」
 返って来たのは、破壊力抜群の全開笑顔。
 「はい、昨日モー子さんと!!」
 それはほぼ予想通りの答えだったが、俳優は同時に少年が今キョーコの口から出た名前に明らかな反応を示すのを目敏く見咎めた。なんだ、そうかと思う。ドラマとは筋書きが違うようだ。
 「もう、照れ屋なモー子さんにお願いしてお願いしてお願いして、やっと撮ってもらったんです~」
 幸せです~、とキャッキャカ踊り回る姿を、俳優はそんなもの俺がいつでもと言いたいのを堪えてやさしく見守る。
 ふと、下からの視線を感じた。目を移せば飛鷹がぽつりと
 「物好きだな、あんた」
 などと呟いた。
 「大変なのはお互い様みたいだけど」
 「ふん」
 そらっとぼけた男同士のやりとりを知るべくもなく、キョーコは改めてシールを印籠の如く掲げて見せた。
 「さて飛鷹君、これが欲しいなら」
 「な、んだよ」
 意地を張りつつも張り切れず目が泳ぐ少年に、彼女はキッパリと宣言する。
 「お昼ごはんを、好き嫌いなく完食すること!!」
 「はああ!?」
 目を剥く飛鷹の横で、蓮は何となく遠い目をした。身につまされた、というやつだ。しかしキョーコは気付かない。
 「敦賀さん、飛鷹君も一緒にお昼いいですか?」
 「え、ああ。もちろん」
 「ありがとうございます!」
 と言い合っているところへ、ちょうど昼休憩の号令がかかった。
 「あ、いいタイミング。さあほら、行くわよ!」
 「ちょっ待てこら、俺はまだ行くって言ってな…」
 「あら、コレ要らないの?」
 ぴらりと振られるシールの前に、少年は無念を飲み込んだ。
 ずるずると引きずられていくのを見送り、蓮は思う。サラブレッドだろうができる子役だろうが、思う少女とキョーコの前には無力であるようだ。
 そんなことを考えて佇んだままでいると、キョーコがひょいと振り返った。
 「どうしたんですか?敦賀さん。食堂行きましょう?」
 「ああ、今行くよ」
 反射的に出る笑顔と共に答えながら、彼は心の内につぶやいた。
 自分たちは、すこし似ているかもしれない。しかし、まあ。
 "相手"がかぶらなかったのは、お互いにとって幸いだったと言うものだ。




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 K.S.様の250000打リク「蓮とクー、もしくは蓮と飛鷹の演技対決」
 ……じゃないですねコレ…あーうー…すいませぬ;

 そ言えば飛鷹くん初書きです。

 あと、劇中劇はオフ作品「よそ見なんか許さない」用に設定した「ガストロノミア」を流用しました(どうでもいい情報)。
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