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つかまえるよ、君を。

 君にすきだと告げた。
 他に人のいないラブミー部々室。わざと鍵はかけなかった。いつ誰が入ってくるとも知れないから、君は早く答えを出さなくちゃならない。ロッカーにおしつけて、腕で囲って。頭のてっぺんのひどく可愛らしい渦を見下ろしながら。
 このつむじに唇をつけて、それで『かわいいよ』『だいすきだよ』と囁く権利が欲しいと望む。ああ、欲しい。どうしても欲しい。
 なのにどうして、俺の権利の発生如何は一にかかって君の心の方向性にあるんだろうね?こんなにこんなに好きなんだから、少しくらい俺にコントロールさせてくれたっていいのに。
 そうじゃないか?
 今日だって、さっきだって、出会った瞬間にぱあっと咲き綻ぶ笑顔。俺のものにならないのにあんな風に笑うのは、ずるいと思う。
 「ず、ずるいとか言われましても」
 ダラダラ汗の最上さんがもちょもちょと言った。自分の頭のてっぺんを両手で押さえて瞳だけで見上げてくるのへ、俺はにこりと微笑んで見せる。
 「ああ、全部聞こえた?」
 耳がいいね、君は。ほとんど吐息くらいの音量で呟いてただけなのに。
 「お、おかげさま…で?」
 律儀にお礼なんて言うから、軽く噴き出すところだった。駄目だよ、まだ空気の色を変えてなんてあげない。君から答えをもらうまでは。
 俺の望む、ように解釈できる答えを貰うまでは。
 「で?」
 ずいと一歩足を踏み出す。
 「え、あの。お、お蔭様で、聴覚は優れているの、かもしれませ、ん」
 つるがさんほどじゃありませんけど。
 やっぱり吐息で言うのが聞こえて、俺はもっとにっこりする。
 「そっちじゃなくて。と言うか、ご謙遜だね?」
 「やっぱり地獄耳じゃないですか~!」
 「うん、地獄でも天国でもいいけど。頑張っても話は逸らさないから」
 「~っ」
 「で、君の返事は?」
 すこし屈む。顎の先にやわらかな髪が触れて、一瞬気が遠くなる感じがした。
 「つ、るがさん、誰か来たら。こんなところ」
 「見られたって、俺は少しも構わないよ」
 それだけの覚悟はとっくにしてる。違うな、覚悟って言うかもう期待だ。いっそ噂になればいい。周囲から固めてしまえればいい。ドン引きされるに決まってるから、全部は君に言わないけど。
 「私が構います~!つっ敦賀大先輩様の初スキャンダルの相手が私ごときトリガラでは世間様に申し開きができませ」
 涙目の抗議を遮り、両頬をつぶすように包んだ。強引に視線を合わせさせる。
 「突っ込みどころ満載なんだけど、とりあえず一つだけ」
 「ふぁ、ふぁい?あの」
 「俺は、君がいい」
 唇の上で囁くと、最上さんからすいと色が抜けた。真っ白になる、という表現が物理的にそうなるものだとは知らなかった。君はいつも意外性の塊で、次々に新しい発見をくれる。迂闊にも俺は、今度こそ笑ってしまった。
 「…りです」
 最上さんが何か言った。笑ってた分注意力が散漫になっていて聞き逃し、俺は目で問い返す。
 「むり、です」
 もう少しだけ声を励まして、恋しい少女が拒絶の言葉を吐いた。俺は内心の動揺を押し隠し、ぽつんと尋ねる。
 「何が?」
 「っ…だって、ありえないじゃないですか!!」
 「ありえない。それが君の答え?」
 「そっ、そうです…っ!」
 「何がありえないの?」
 え、と小さな唇が半開きのまま止まる。吸い付きたくなるからやめてくれないかな。
 「何って、な、何もかもです!敦賀さんが私を好きになるとか、こんなところでセクハラ紛いの告白をするとか、人目も憚らないとか!!」
 「なるほど」
 俺は小さく苦笑する。途端に勢いを得て何か言おうとする機先を制し、早口に言った。
 「でもね、ひとつの想いが他のすべてを凌駕するってことが有り得るって、俺は君に教えてもらったよ」
 「へ!?あの、」
 「君はいつも一生懸命で必死で、純粋に一途に思い込み行動することで自分の道ばかりか他人の心まで開いて来た。椹さん、マリアちゃん、琴南さん、社長も、俺も。
 「だから今度は俺が、すべてを凌駕する勢いで君を想う。そうすれば、有り得ないこそが有り得ないんだ」
 かくん、と。最上さんの膝が崩れた。ロッカーの扉を擦りながらずるずる沈もうとする背中を慌てて支えれば、耳もとに小さな小さな呟きが届く。
 そそそそんなばかなうそでしょうそですだってそんなのありえないありえないがありえないとかにんげんにいえることばじゃないんじゃ…
 「だから」
 めげないって決めてるから、溜め息は噛み殺して君の顔を覗き込んだ。
 ありえないありえないありえない
 繰り返す真っ赤っ赤な顔を。耳まで染めて、
 俺を見上げる潤んだ瞳…を……
 「え…」
 有り得、ない?一瞬そんな言葉が過ってしまった俺は、もしかしたら可哀相な男なんじゃ…
 いや、そうじゃなくて!!って言うか、この反応!?
 「最上、さん」
 どうしてそんなに真っ赤なの君は俺を意識してるの、有り得ないって、期待しないって自分に言い聞かせるのは期待してるから?
 尋ねようと、思って。息を継いだ時、
 最上さんは華奢な体を思い切りよじって俺の腕を逃れ、子リスみたいにすばしっこくドアへと走る。
 「待っ」
 伸ばした手をすり抜け、彼女は一瞬だけ、半分だけ振り返った。
 そこに浮かんだ…揺らぎが俺の足を止める。息を呑んだ瞬間、ドアが開いてまた閉じた。
 「……あー…」
 俺は少しよろけてロッカーに背をつけ、そのままずるずるへたり込んだ。どうして君は、そう反則ばっかり…
 だけど。
 と強く思う。
 有り得ない、だけが君の理由なら。
 本当のことだって信じさせてみせる。可能性は、いま君が見せてくれた。
 右の掌をぎゅっと握った。祈るようにそこに唇をつける。
 「有り得なくなんかない。無理なんかじゃない」


 この手に、君を。


 

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 いちお、50万打御礼フリー作品でございます…だ、誰もいらんかな(>_<)
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