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あした世界がおわるとしても(6)

 「敦賀、さんっ!?」
 「!!」
 この数時間というもの聞きたくて聞きたくてひたすら足を運んで来た声を聞き、蓮はむしろ疑うようにわずか肩を引いた。
 「キョー、コ?」
 闇を透かすようにしても、到底顔は見て取れない。しかしちょうど彼の腕にすっぽり収まりそうな華奢なシルエットが、他の誰のものだと言うのか。
 「キョーコ!」
 蓮は走り出した。肩からするりとバッグの肩紐が落ちる。
 どさりという音を聞いた時には、半日というもの求め続けていたぬくもりを抱き締めていた。
 「よかった、無事で…っ」
 胸のあたりから聞こえた震え声に、それは自分の台詞だと思う。
 「君こそ…」
 やっとそれだけ言うと、俳優はいっそう強く恋人を抱き締めた。信じていた、無事だと信じていたけれど。それが、胸にすり寄るやわらかな頬の感触ほど確かなはずがない。
 「…でも」
 腕のなかで、ふふ、と小さな笑い声がした。
 「何?」
 「いえ、もしかしたらって思ってたけど、ほんとに帰って来てくれたので。交通機関も何も止まってたでしょう。ずっと、歩いて来たんですか?危ないことして」
 すこし困ったようにキョーコが言う。
 「ほんの30kmそこそこだよ。何もなかったし」
 「ほんの、って距離じゃないと思いますけど…」
 「君と隔てられた距離だと思えば、そうだね」
 蓮は低く囁き、少し身を離す。顔を上げたキョーコの唇あたりに見当をつけ、短く口づけた。
 「こんな路上で君にキスできるなんて、暗闇も悪くないな」
 「な、何言って…もうっ、いいから、早く私の部屋に行きましょう。念の為、敦賀さんの荷物作って持って来てますから」
 「ああ、やっぱり。君ならそうしてくれると思った。ありがとう」
 ぱっと離れて歩き出すキョーコにバッグを拾い上げてから従いながら、蓮は不意に小さな息を洩らした。微笑をひっこめ、照れ隠しのように大きく振られる手をつかまえて引き寄せる。
 「ひゃ!?な、何」
 「キョーコ!君こそどうしてこんな時分に真っ暗な外を歩いてたりしたんだ!?」
 問いは性急だった。再会の喜びに惑わされていたが、由々しき問題であるはずだ。なのに詰め寄る蓮に、キョーコは声さえキョトンと答えを返すではないか。
 「あ、敦賀さんのお宅に、様子を見に行こうかなって。もしかしたら戻って来てるかもしれな…」
 「やめてくれ!」
 蓮の声は悲鳴に近かった。
 「危ないだろう!?こんな真っ暗な中、何kmも歩くつもりだったのか!」
 「え、それこそほんの5、6kmですよ」
 自転車が使えると良かったんですけどねー、真っ暗な上に路上障害物が多すぎて危ないですし。そんなことを言うキョーコの声を聞きながら、蓮はほとんど怯える気分になった。知っていたけれど、自分の恋人はまるで鉄砲玉だ。一番に心配すべきは、そこだった。恐ろしい。
 「キョーコ、頼むから…」
 俳優は呻くように言った。
 「離れ離れになった時は、俺が君のところに行くから。どこにいても、絶対、探し出すから。君は安全なところで待っててくれ…」
 「……」
 キョーコは返事をしなかった。さっさと先に立つ後ろ姿の輪郭からは、彼女の感情を窺い知ることができない。
 「キョーコ?」
 「…絶対なんて、どうして言い切れるんですか」
 怒っているのかと思ったけれどそれよりは寂しがっているようで、俳優は胸にいたみを覚えた。キョーコは、いまだにどこかで恐れているのかもしれない。
 失うことを。だから、じっとしていられない。
 「言い切れるよ」
 蓮はやわらかく、しかしきっぱりと言った。
 「俺と君は、何度だって出会う。絶対。時を隔てても、場所を隔てても」
 自分の目をそっと押さえる。
 幼い日に出会った時は、二人とも傷ついていた。ゆえにこそ彼は、二人の未来を見ようとはせずに別れ…
 やがて彼は傷つけた。彼女は傷つけられた。その果てに出会い、寄り添い合う今。それが、絶対であるために。
 永遠で、あるために。
 「つるが、さん…?」
 細い影が足を止め、振り返った。蓮は一歩進んで距離を詰め、慣れた頬の位置へ手を伸ばす。
 「君に、話があるんだ」




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 やっと会えました…
 で、やっぱりキョーコはキョーコです(笑)。
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