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ふぁむ・ふぁたる

 じきに休憩が終わるという頃、初めて訪れたロケ地の散策に出た担当俳優を探し歩くマネージャーは、森を通る小径のはたにしゃがみこんでいる大きな後ろ姿を発見した。
 「蓮?何してるんだ、そんな所で」
 呼びかけると蓮は、木の根方に屈んだ姿勢のまま振り返る。し、と口元に指を当てて。
 「静かにして下さい、怯えちゃうでしょう」
 「は?」
 不得要領な顔の社がそれでも何となく忍び足になって近付くと、蓮は視線を戻して何かに頷きかけるような動作をした。
 「よしよし、大丈夫だよ。こわい人じゃないからね」
 「…???」
 社の頭上でクエスチョンマークが肥大化の一途を辿る。できるだけ足音を忍ばせて担当俳優のすぐ背後に行き、身を屈めて手元を覗き込む。
 そこには、
 ちまっ。
 と、
 くりっ。
 とした小動物がいた。オレンジっぽい茶色の、やわらかそうな毛皮。体より大きいくらいの、ふさふさの尻尾。
 「へえ、リスだ。かわいいなあ。まだ子供…」
 思わず笑顔になって蓮を見返れば、そこには彼さえ見たこともないほどの甘やかな微笑が静かに深く輝いている。
 「……」
 「社さん?」
 赤面絶句してしまったマネージャーに、俳優は仔リスに手を伸ばしたまま視線だけ向けた。
 「あ、いや…えっと…お前、そんなに動物好きだっけ」
 こほん、と社が咳払う。蓮はまた小動物に目を落としながら苦笑した。
 「まあ、確かに好きですけど。でも何だか、この仔には特別惹かれるものがあると言うか」
 言いながら彼は、手近に落ちていたドングリの実をリスに手渡した。しかしそれが固すぎるらしく、いかにも苦労してがじがじと齧りつく仔リスの前歯はドングリの表面を引っかくばかりだ。
 「ああ、ちょっと貸して」
 蓮は小さく微笑むと、指先で仔リスの鼻先を掻いてからドングリを取り上げた。それをぱちんと握りつぶし、改めて与える。
 ぱあっと、リスが笑うものならば確かにその仔リスは笑ったと思われた。ちいさな両の前足をいっぱいに伸ばして木の実を受け取ると、大事そうに胸に抱えて蓮を見上げる。ありがとう、と人間なら言っただろう。
 「どういたしまして」
 声なき意思を受け取ったか、俳優はにっこり微笑んだ。
 リスはぺこんと頭を下げるような動作をして、早速おやつに取り掛かった。ひびの入った殻を仔細に眺め、割れ目の一番深い部分に前歯を入れる。こりこりこり…せわしないけれどかわいらしい音が響き出した。
 「かしこそうな仔だなあ」
 感嘆する社に、蓮がすかさず言った。
 「かしこいですよ。人を見る目もありますしね」
 「うん?」
 「見つけたのは俺じゃないんですよ。でも、他の人がいる間はずっと隠れてて、一人になってから俺がそっと呼んで見たらおずおず出て来たんです」
 「へえ…」
 自慢してるのか?と社は信じがたく思う。蓮が。あの敦賀蓮が、仔リスに自分だけ懐かれたんですよ、と。
 マネージャーの心中を知らず、長身の俳優は微笑のまま話を続けた。
 「変に騒ぐ人間は嫌ですよね、それは。とは言え、俺のことも最初はだいぶ警戒してましたけど。それで俺ばっかり見ながら歩くものだから、枝から落ちかけて。そこを助けたら、にっこり笑ってくれたんです。もう、可愛すぎて…!」
 「れ、蓮?」
 担当俳優がプライベートでそんなに熱を入れて話すところを見たことがない。マネージャーはほとんど奇異なものを見る目で隣にしゃがむ青年を見た。しかし蓮に気にした様子はない。ドングリを食べ終えて切なそうに殻を見る仔リスに手を伸ばし、さすさすと鼻先を撫で始めた。
 小動物はきょとんと彼を見上げ、小首を傾げる。これだけでも十分愛らしいのだが、ちょっと考えた末に彼女(としか思われない)は、すり、と大きな手のひらに頭をすり寄せた。
 ぴっしゃあああん。二人の青年を、何かが貫いた。
 「………社さん」
 「う、うん…?」
 「この仔、連れて帰っちゃ駄目でしょうか…」
 「あ…いや、どうだろう…?別に、誰かが飼ってるわけじゃないと思うけど」
 冷静に考えれば、必ずしも推奨される行為ではない。しかし。しかし、この仔リスの破壊力の前に、一体誰が抗えると言うのか。
 社の喉がこくりと鳴る。
 「じゃあ…賭けてみる、とか」
 「賭け、ですか?」
 「ああ。お前とこの仔の運命に、さ。
 「この仔が、今日のロケが終わった時にここにいるか、呼んで出てきたら連れて帰る。逆なら諦める」
 分の悪い賭けではある。ロケの終了まではまだ何時間もあるし、暗くなればこの子は巣に帰ってもう出て来ないことだろう。しかし蓮は、小さく頷いた。
 「わかりました、そうします」
 そして仔リスに向き直り、やさしく話しかけた。
 「ねえキョーコちゃん、君、俺と暮らさない?絶対不自由はさせない。全力で幸せにするから」
 リス相手にプロポーズまがいの言葉を吐く俳優を、社は複雑な顔で見守る。よく言うよ、とも思うし、気持ちはわかる、とも思うのだろう。
 「ね。あとで迎えに来るから、俺が呼んだらきっとここに来て」
 とどめとばかりにきらびやかに微笑み、蓮は仔リスの頭を撫でる。気持ちよさそうに目を細めたリスがじっと彼を見上げるさまは、社でさえも『きっとよ?』などという幻聴を聞くくらいに愛らしかった。
 「ところで、キョーコちゃんって…もう名前つけてるのか」
 「社さんが言ったんじゃないですか。この仔が俺の運命の相手なら、そういう名前に決まってるんです」
 「?」



 その日、ロケ終了が告げられるや否やトップ俳優は猛スピードで森に駆け込んだ。彼の運命がいかなる色を紡ぎ出したのかは余人の知るところではないが、ただ…
 その日の帰り、彼は非常に上機嫌であったと言う証言があった。



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 続き妄想カテゴリで合ってるのかどうか…
 ACT153の扉絵のリスキョコが妙に気になってて前から温めてたのですが、某サイト様(未リンク。検索避けしてなくてもリンクさせて戴けるか伺おうと思ってるところです)にて最強に愛らしい猫キョコちゃんの話を読ませて戴いて、しんぼーたまらんくなって書いてしまいました。
 ペットがキョーコなら、絶対蓮は親馬鹿全開になりますよね。

 でもこれ、蓮は下手したら『トイレがガマンできなかった?』疑惑とかかけられてそうです(笑)。
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