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もうだめなんて気のせいだって!(1)

 日も落ち、夕食の支度を始めようと椅子から立ち上がった時だった。
 「"京子"だな」
 いきなり背後から羽交い絞めにされた上に口を塞がれ、キョーコは大きな眼を一杯に見開いた。身を捩ろうとすると、首筋にひやりと金属の冷たさが触れる。瞳だけを下げた先に灯火を弾く短剣の切っ先を確認し、呼吸を乱した。
 「静かにしろ」
 男の声に低く命じられて動作を止める。すると背後の男は、
 「振り返ったり大声を出したら、即殺す」
 念を押してからそろそろと手を離した。ゆるりと空気が動き、室内を見回している気配が伝わる。
 「ふん…"痩身の魔女"か。薬臭い家だな」
 自宅の梁や壁際に下がる様々な薬材の放つ、嗅ぎなれた香りに励まされてキョーコは震えそうな声をどうにか平静に保った。
 「どなたですか。私に何の用?」
 「殺し屋に誰何されても困る。名乗るわけには行かない」
 「こ…」
 「アンタが邪魔だと言う人間の依頼を受けた。見た目は若いが、魔女というのは本当か?」
 硬い指先に、つと背筋を撫で上げられる。キョーコは声を噛んで身を固くした。
 「わ…私は調薬を生業にしてるだけで、魔女なんて呼ばれてるのは単なる誤解です。長生きしてるわけでも魔法を使えるわけでもありません!それに、若い魔女だっているんじゃ…」
 喚きかける口が急に閉じる。頬にひたりと銀色の刃が当てられていた。
 「静かにしろと言った。しかし…そうか、つまらんな」
 は、と短い息を落とし、男はのろくさ彼女に身を寄せる。
 「いや…」
 叫んだ瞬間、キョーコを取り巻く空気が変わった。細い体から"何か"が放出され、部屋中を荒れ狂い始める。乾燥した薬草がばさばさと鳴り散った。
 「これは…」
 余人ならば奇妙な、重い風の塊だったと言うかもしれない。目には見えなかったと。しかし男の瞳は明確にその軌跡を捉えて動いている。動き回る風の一つ一つが、人の顔でも具えているかのように。
 「…面白い」
 硬直しているキョーコの首筋に、妙に冷たい手が触れる。
 「気が変わった。お前は俺が…」
 「だから、いつも言ってるのに」
 愉悦を含み、なお暗く冷えた声の尻を引きちぎり、別の男の声が割り込んだ。
 「…!?」
 殺し屋と名乗った男が瞬時に後ろへ跳び下がる。突き飛ばされた勢いを返してぱっと振り返ったキョーコは、そこに銀の髪に紫の瞳をした若い男を見た。
 その、両手がこじ開けられるようにじりじりと左右に開いて行く。手首は黒い手袋を嵌めた大きな手につかまれていた。
 こつん。
 火灯りの届かない隅の暗がりから、やはり黒い靴の爪先が現れる。
 「あ…」
 男の向こうに見えた長身の影に、キョーコは安堵の声を洩らした。しかし新たに現れた男の目を見るや、慌てて叫ぶ。
 「だっ駄目です、殺しちゃ駄目…」
 長身の男が殺し屋を拘束したまま、じろりと暗い視線をよこした。
 「お願いですから」
 キョーコはなおも言い募る。身を乗り出した拍子に小卓にぶつかり、そこから小さな光がこぼれ落ちた。
 「あ、コーン!」
 木の床を滑る青い石を追う姿に、男の瞳が揺らいだ。その隙を見逃さず、銀髪の殺し屋は思い切り身を反転させて拘束を振り払う。距離を取って対峙するのへ、男が静かな声音で命じた。
 「二度と彼女に近付くな」
 「…っ」
 ぎり、と唇を噛み、殺し屋はロングコートの裾を翻してドアへと走った。
 「蓮、さん」
 かすれた声で呼びかけるキョーコを、背の高い男がゆっくりと振り返る。青い瞳からは剣呑な光が消えていないが、少しだけ緩んだように見えた。
 「…石、まだ持っててくれるんだね」
 「これは、お守りですから」
 「あいつは?」
 「こ…殺し屋だって…」
 おずおずと差し出された答えに、男の瞳の光がまた強くなった。
 「君は相変わらずバカだね。そんなのを見逃してやったの?」
 かつ、と床を鳴らし、蓮は拾い上げた石を握りしめて立ち尽くす娘に歩み寄る。
 「怖かったクセに」
 こまかく震える体にそっと手を伸ばし、
 「俺は、君のそういうところも好きだけど。でも、あんな男にまで発揮するのはどうかと思うよ。それでなくても世の中は色々と物騒なんだから、もっと危機感を持つべきだ」
 華奢な肩を強く抱きしめた。
 「でなかったら…
 「家出なんてやめて、俺のところに戻っておいで。そうしたら、俺がずっと守ってあげられる」
 キョーコが、今しも広い肩に触れようとしていた指を止めた。そろりと握られた拳が後退し、男の胸を押す。
 「貴方のところには戻らないって、何度も言ったじゃないですか」
 怒気の混じる声に、蓮は腕を緩めて顔を覗き込んだ。
 「どうしてそんなに頑ななんだ?」
 キョーコは答えない。
 「結婚式の真っ最中に、過去につきあった女性が乗り込んで来たから?」
 まるい頬に朱が差した。
 「しかも3人!
 「…でも、そんなことじゃありません」
 「初夜の晩に11回もしたことなら、仕方ないだろう?ずっとお預けくらってて、俺は爆発しそうになってたんだから。そりゃ、君に負担かけたことは謝るけど」
 「そっそれでもなくて!!」
 ジタバタ暴れ出すキョーコの肩を、蓮はしっかりつかんだまま離さない。小首を傾げ、それならと言い出した。
 「新婚5日目に、2週間の出張に出ちゃったから?あれは、俺だって辛かったんだよ」
 「あれはっ…むしろ休めて助かりました!」
 「ひどいな、俺は2週間君のことばっかり考えてたのに」
 「帰って来てからたっぷり取り戻してくれたじゃないですか~!!」
 キョーコは真っ赤な顔で拳を振りたてる。蓮はその背を宥めるように撫で、しかし不満そうな口ぶりで言った。
 「でもあの時、俺はまだ足りなかったのに君が失神しちゃったから」
 「~そういうところも嫌ですけど!!」
 夜も割れよという大音声。近所を憚って自分の口を塞ぐ女は、涙目でフルフルと男を睨み上げる。
 「他には何が?」
  平気な顔で尋ねられ、ぎりりと奥歯を噛み締めた。
 「何、が、問題、って…その、出張の、内容、ですっ」
 一語一語ぶちぶちと零し出すと、彼女はきびしく男に指を突きつけた。
 「あなたの職業!
 「あなたはっ…」




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 北斗様の50万打リクにて。
 イケイケ蓮→キョのコメディ、職業設定アリって感じだったんですが、もひとつコメディになりきらないかも…とりあえず今後コメディ要素は入って来るはずですが、どこまで笑って戴けるかはナゾ~。
 いや申し訳ないm(__)m
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