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たいせつでたいせつで(74)

 「…綺麗…」
 呟く声がほわほわと宙を漂う。
 つんのめりそうなほど前に身を乗り出すキョーコを、画面からの明りだけでも相好を崩しているのが丸わかりのマカナンが見ている。
 「いーねー、この素直な反応」
 ししし、と笑うので、クオンは少し嫌な顔をした。
 しかし何も言わず連れの少女に目を戻すと、彼女はすっかり画面に集中していて、しきりに口の中で凄いの危ないの素敵のと呟いている。
 いまなら頬にキスくらいしたって気付かないかも、とクオンは思った。マカナンさえいなければ、いやこの際いても…
 「何考えてやがる、チビズリ」
 ひとの悪い映画監督のニヤニヤ声が飛んで来た。
 「別に…」
 「お前もちったあ画面見ろよ、嬢ちゃんばっかじゃなく。まあ、気持ちはわからんでもないけどな」
 何がわかるって言うんだ。考えていると、また読まれたらしい。マカナンは
 「くるくる表情変わって、可愛いよな~」
 やっぱりニヤニヤ言う。
 「…見ないで下さい」
 ぶっすり言うクオンを綺麗に無視して、中年男は少女の頭をくりくり撫でた。それでもキョーコは気付かない。
 「すげえ集中力。こりゃ大物になるぞ」
 面白がっているので、少年は伸び上がって分厚い手をぺんとはたき落とした。
 「触るのはもっとダメです」
 厳しく申し渡すがそれにも反応せず、映画監督は叩かれた手をブラブラ振ってふ~わふ~わ頷いている。
 「やっぱ面白えな、うん。いちいち。
 「素朴でシンプルかと思や、ドレス一つで化けるし、第一、表情がこう、庇護欲をそそるっての?小動物系な。前にお前にちゅーされた時のカオなんか悩殺モンってか、俺だって抱きしめてやりたくなったしな」
 つるつると流れ出てくる言葉に、クオンは頭を抱えたくなった。少し頬に苛立ちの色を上し、少年は言う。
 「それ、キョーコちゃんには言わないで下さいよ…」
 当の本人の隣で。



 「そんじゃあ、詳しいことはまた連絡するからな。今んとこの予定としちゃ、撮影は8月のアタマだな。俺のスケジュール的にも。お前らも夏休みでちょうどいいだろ」
 「そうですね…2ヶ月半先ですか」
 クオンは小さく頷き、横にいる少女に視線を移した。
 試写は10分も前に終わっているが、キョーコはまだ半分夢の国にいる様子で、ほわ~と上気した頬に両手を当てて突っ立っている。
 「素敵だった~…」
 ぽとりと落とす声にマカナンが笑う。
 「キョーコちゃん、聞いてる?」
 クオンが苦笑と共に呼びかけると、目の前で泡が弾けたような顔をした。
 「えっ!?」
 「CFの撮影、8月の初めだって。大丈夫?」
 笑いながら問われてますます赤くなる。
 「あの、うん。だ、大丈夫。その頃ならキャンプも終わってるし」
 「え」
 キョーコの口から初めて聞く単語にクオンが引っ掛かるが、先に尋ねたのはマカナンだった。
 「へえ嬢ちゃん、夏休みはキャンプに参加すんのか。何の?」
 「えっと、アカデミックキャンプです。クレジットコースに」
 「教科単位取得コースか。頭もいいんだな、お前さん」
 「え、いえ、そんな。いつも夏休みはそういう習慣で…」
 そうやって跳び級して来たのかとクオンは納得するが、なぜそんな習慣になっているかについては不快の念を持たずにいられなかった。母に強制されていたに決まっている。
 「そんなのやめようよ、キョーコちゃん」
 思わず口に出していた。少女が目を瞬く。
 「おい、チビズリ?」
 マカナンも不審げな視線を寄越すが、発言を取り下げる気はしなかった。とは言え、キョーコに実の母のことを思い出させたくもない。やむなく不明瞭な論旨になった。
 「君はただでさえスキップしてるのに、そんなに勉強することないだろう?夏休みは、俺と色々遊びに行こう」
 「おいおいチビズリ、何言ってんだお前…嬢ちゃんの向学心を邪魔すんなよ」
 とは言うがマカナンは、ちらと眉を顰めた。クオンの瞳の底に蟠る必死さに気付いたようだ。
 そしてそれは、少女も同じことだった。
 「クオン…?」
 覗き上げて来る大きな瞳には、彼を気遣う色。
 なぜこの子はこんなにも差し出してばかりなのかと胸が痛み、差し出させた自分をクオンは腹の底で罵った。おもてに出しては、ゆっくりとかぶりを振る。
 「ごめん…変なこと言った。でも、俺は本当にそうしたいって思ってるから、もし気が変わったら言って」
 「え、う、うん…」
 キョーコは戸惑いながら頷き、マカナンと顔を見合わせた。





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 アカデミックキャンプは各種団体によって夏休みに開催される勉強キャンプで、クレジットコースは大学同様に単位を取れば修了となるアメリカの中・高の教科単位を取得するためのものです。
 クレジットを取得して学校に報告し、認められると秋の新学期(新学年)から一段階上のクラスを修められる…
 ということらしいです。ザッパですが、そんな設定というように思っておいて下さい~。
 
 てゆか、アメリカの学制で行くと、クオンはもう中学を卒業してるトシのようです。あいた~。調べるのが遅すぎました。参ったなー。
 まあでも、日本の感覚なら「15歳で中学卒業」の方が馴染み易いと思いますし、敢えて直さないことにします。け、けして「この先のネタにも触れてしまうので面倒くさい」からじゃ…ないとは言いませんがそれだけじゃない、ということで!いやすいません。


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