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たいせつでたいせつで(75)

 「じゃ、またな」
 と手を振ったあとで、マカナンは返しかけた身をくるりと戻した。
 「忘れてた。あのな、嬢ちゃん。CFん時、エキストラやってくれる友達とかいたら連れて来てくれ。できれば日本人の女の子がいいが、お前さんが自然に笑える相手なら誰でもいいや」
 「え、あ、はい。わかりました…聞いてみます」
 「よっしく~。じゃ、ほんとにまたな」
 「はい、失礼します。ありがとうございました!」
 映画監督は手を振りながらブラブラとスタジオの中に戻っていく。その背中にぺこりと頭を下げ、キョーコは促すクオンに従って駅への道に立った。
 「ちょっと遅くなっちゃったね。父さんたちはまだ帰ってないだろうけど」
 街灯の下で腕時計を確かめ、クオンが呟く。
 「あ、でもだるまやさんには連絡入れてあるから。ちゃんと俺が送りますって」
 「ありがとうクオン。でも、私ひとりで帰れ…」
 「絶対ダメ」
 渋面を向けられて少女はきゅっと身を縮めた。
 「はあい…えと、お願いします」
 素直に言うと、クオンは一転嬉しそうに笑う。
 「勿論承ります」
 キョーコがドギマギと視線を揺らして話を変えた。
 「あ、ありがとう。えっと、そ、それにしても…あの、クーパパもジュリママも、いつも遅くまで大変ねえ…早く帰れる日があるかしら?」
 「まあでも、いつものことだし…好きな仕事をしてるんだしね。もしかしてキョーコちゃん、マカナン監督の言ったこと本気にしてるの?父さんにおねだりしてくれって」
 「えっと…だって、私、クーパパもいてくれると嬉しいから」
 クオンの笑顔が若干パワーダウンした。キョーコは敏感にそれに気付くが、原因が自分にあることにまでは思い至らない。
 「クオン?」
 「あ、いや…そうだね、父さんはCMもたくさん出てるから慣れてて、頼りになるよ」
 顔を覗き込まれて少年は急いで言うが、少女の顔が晴れない。
 「キョーコちゃん?」
 何か記憶を辿るように眉を寄せているのを見て、クオンは少しばかりうろたえた。
 「…ねえ、クオン。もしかして、クオン…は、いやだった?あの、クーパパと一緒のお仕事…」
 「え」
 「あの…まえに、お父さんの手から抜け出せない、って…クーパパは俳優で、クオンもそうで…」
 少年が凍りついた。何と聡いのだろう、この少女は。5年以上も昔の自分の発言を今に繋げて、限りなく正解に近付いてみせる。
 クオンは否定しようと唇を開いた。しかし途中で思い返す。彼女に、嘘をついてはいけないと思った。
 「そう思ってたのは、本当だよ。いや…今でも、引きずってる。マカナン監督にもそう言われた。だから目を向け変えろって。きっと、それも本当なんだと思う。まだ力が足りないのはわかってるけど、立ち向かう気持ちは蓄えて行くべきなんだ…
 「君と一緒なら、きっとそうできる」
 キョーコが大きな目を瞠った。
 「クオン」
 呼びかけに含羞むように笑い返し、少年はひとつ頷いた。
 「君が信じてくれれば、もっとできる」
 少女の顔がだんだん紅潮し、同時に笑顔がのぼって来る。
 「…うん!」
 力強い肯定と共に、キョーコはぶんと首を縦に振った。
 「私、クオンのこと信じてる!」
 「         
 金髪碧眼の少年が息を吸いかけたまま固まる。それからその顔には、ゆっくりと朝陽にも似た輝きがのぼって行った。
 「ありがとう…キョーコちゃん。さ、帰ろう」
 「え、あ、うん」
 地下鉄駅の入り口で彼は振り返り、連れの少女に手を差し出す。
 「はい、お手をどうぞ。ここの階段、急だからね」
 「あ、ありがとう…なんか、さっき写真撮ってもらった時みたい…」
 「言ってなかったけど」
 すこし頬を染めるキョーコに、彼は他の誰にも見せない笑顔を向けた。
 「俺が自分の意思でエスコートするのは、キョーコちゃんだけだよ」




 「じゃ、ここで…」
 キョーコを自宅に送り届け、金の髪の少年は玄関先で辞意を告げた。少女がにっこりと微笑む。
 「送ってくれてありがとう。クオンも気をつけて帰ってね」
 「うん…大丈夫だよ、もうこの辺も危ない場所じゃなくなったし」
 わずかに複雑な色を浮かべる瞳は玄関灯の陰になっていたが、声の調子に滲んでいたかキョーコはちらと首を傾げた。
 「そうなの?」
 尋ねられてクオンは気を取り直したように笑っう
 「そう。だから心配いらないよ」
 するとキョーコが、破壊力抜群の弾丸を撃ち込んだ。
 「心配してるんじゃないの、大事にしてるの」
 「っ…!!」
 「だから、ほんとに気をつけてね?」
 「…うん」
 ごく短い返事だけを零し、クオンはくるりと身を翻した。両手は、やけに強く体の横に引きつけられていた。




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 ちびキョコちゃんは写真撮影の間の空気に感化されているようですね~。クオンが報われる日が近付いているのか!?
 いや、まだもちょっとかかりますけどね(笑)。←ってオイ。
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